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認知症の方が直面する相続トラブル|相続する方・される方ができる事前対策

認知症かなと思う夫婦

この記事のサマリ
  • 認知症の方は相続などの法律行為が行えない
  • 相続人・被相続人が認知症だったときには相続トラブルになる可能性がある
  • 相続トラブル防止のために「認知症になる前」「認知症になった後」の対策が必要

認知症と診断された方、あるいは認知症の症状が第三者から見ても明らかになった方は、相続などの法律上の行為が行えなくなります。

認知症の方が財産を受け取る側でも特定の方に遺す側でも、相続が行えないためにさまざまな相続トラブルが勃発しています。

関係者に認知症の方がいたことによる相続トラブルは、認知症になった本人にも、関係する家族にも不幸な出来事です。

今回は認知症が関係する相続トラブルについて解説します。認知症の方に起こり得るトラブルの可能性をあらかじめ知り、事前の回避に努めましょう。

認知症の方は法律行為が行えない

契約書と実印

認知症の方には、進行に応じて以下のような中核症状(脳の変化)が現れます。

記憶障害 自分や人の経験や過去の記憶が欠落する症状
実行機能障害 ものごとの計画や実行ができなくなる症状
見当識障害 自分の状況を把握する力が弱まる症状
失語 自分の考えを言葉として口に出せなくなる言語障害
失認 モノの認知や空間把握などができなくなる症状
失行 食事や排泄、入浴などの日常行為が行えなくなる症状

上記の中でも「実行機能障害」「見当識障害」が見られる認知症の方は、適切な法律行為をすることが難しいと判断されます。

そのため認知症になった方は法律上で自らの意思決定能力が認められず、法律行為が行えません。

「相続」とは故人の財産を第三者に譲渡する法律行為です。意思能力のない認知症の方が行った法律行為はすべて無効となります。

認知症高齢者に起こり得る相続トラブル

旅館で頭を抱える男性

上記で説明したように認知症の方は法律行為が行えないため、相続に際してもトラブルを誘発しやすくなります。

認知症の相続トラブルは大きくわけて2つに分かれます。

  • 相続人(相続される人)が認知症の場合の相続トラブル
  • 被相続人(亡くなって財産を相続する人)が認知症の場合の相続トラブル

どちらも当人が認知症だったときには相続トラブルになる可能性がありますが、そのトラブルの内容は大きく異なります。

以下からはそれぞれの場合の相続トラブルについて詳しく見ていきましょう。

相続人が認知症の場合の相続トラブル

お手玉と和紙の菓子皿

認知症になった方の配偶者や子、あるいは兄弟や親などが死去し、認知症の方が相続人として指定されたときには、以下のような相続トラブルが発生する可能性があります。

遺産分割協議に参加できない

法定相続(民法によりあらかじめ相続ルールが決められている相続)ではなく、話し合いで遺産の分け方を決めたいときには、相続人全員が遺産分割協議を行います。

遺産分割協議も法律行為のひとつと見なされますので、認知症になった方は遺産分割協議に参加できません。

しかし認知症になっているからといって、他の相続人が認知症の方を遺産分割協議から外すこともできません。なぜなら認知症になっていたとしても、その方が相続人である事実には変わりないからです。

そのため認知症の方が関連する相続では法律にのっとった法定相続を選択するしかなくなりますが、遺産分割協議であれば利用できる税優遇制度などがほとんど活用できなくなるため、相続税が高くなりがちです。

また一時相続で遺産分割協議が行えないと、その後の二次相続のときにも相続税が高くなる可能性があります。一時相続・二次相続に関する説明と、二次相続への影響について知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

nijisouzoku 二次相続って何?一次相続時から考えたい有効対策3つを紹介

マイナス遺産の相続放棄ができない

借金などのいわゆる「マイナス遺産」は、相続人に指定された方が相続しない旨を家庭裁判所に申述することにより相続せずにすみます。これを相続放棄と呼びます。

遺産分割協議と同じく、相続放棄も法律行為です。そのため認知症になった方が相続放棄できずにマイナス遺産を相続しなければならなくなるかもしれません。

成年後見人が代理で相続放棄手続きは行われますが、相続放棄できる期間はたった3ヶ月間です。成年後見人の設定手続きに時間がかかった場合、相続放棄の期限に間に合わなくなる可能性があります。

相続放棄の手続き方法は以下の記事で詳しく解説しています。

相続放棄する人 相続放棄の方法をわかりやすく解説|期間や費用・申述手続きの流れ

被相続人が認知症だった場合の相続トラブル

仏壇の前のお供え物と花

相続人が認知症だった場合の相続トラブルを確認した後は、今度は被相続人(亡くなった人)が認知症だった場合の相続トラブルを確認しましょう。

遺言書の有効性が疑問視される

自分が死去した後に財産をどう処分して欲しいかをあらかじめ書き残しておく文書が遺言書です。

遺言書の作成も法律行為になるため、認知症の方が書いた遺言書は正式な遺言として認められません。

民法第963条
遺言者は、遺言をする時においてその能力を有しなければならない。

引用:e-Gov法令検索|民法

ただし死去する前には認知症だった方でも、遺言書を作成した時点ではまだ認知症にかかっていなかった可能性があります。

被相続人が遺言書を書いた時期が認知症になる前か後かを争点とし、相続トラブルで裁判になるケースも決して少なくはありません。

また遺言書は正しく作成しないと、たとえ認知症になっていない方が書いた遺言書だとしても正式な遺言とは認められません。遺言書の正しい書き方は以下の記事を参考にしてください。

遺言書を書く人 遺産相続の遺言書を作成する方法|無効にしないためのポイントを解説

生前相続が問題視される可能性がある

自分が生きているうちに配偶者や子などに財産を譲り渡しておく生前相続は、相続税の節税対策として有効な手段です。

しかし生前相続をする際の贈与契約なども法律行為になるため、認知症になっている方は行えません。

こちらも遺言書の作成と同じように生前相続の時期が認知症になる前か後かが争点となりますが、他の相続人から「認知症の人間から財産を騙して取った」など追及される可能性もあり、深刻な相続トラブルを招きがちです。

3世代家族 上手な生前相続のやり方4選|節税しながら好きな相手に確実な財産譲渡を

相続人の行方がわからない可能性がある

認知症の方が被相続人になる前(亡くなる前)に起こり得るトラブルの可能性としては、生前に相続準備をしようと思っても、他の相続人の行方がわからない可能性がある点です。

親族などが代理で戸籍謄本を取り寄せれば法定相続人の確認はできますが、その相続人がいまどこで何をしているのか、認知症の方に聞いてもわからないケースがほとんどです。

そのうちに認知症の方がなくなり相続が発生すると、相続人の中に行方不明者が存在するという、非常に厄介な相続手続きに直面する事態となります。

認知症高齢者の相続トラブルを防ぐ対策

白い背景の前でOKのポーズをする若い女性

認知症になった方にはさまざまな相続トラブルが降りかかる可能性がありますが、事前に対策をすればある程度のリスクは軽減できます。

以下からは認知症高齢者の相続トラブルを防ぐために今からできる対策を紹介します。

遺言書・生前相続の前に診断書を取得する

遺言書や生前相続が正式な法律行為として認められるかは、「法律行為をしたときが認知症になる前かが争点になる」と上記でご説明したとおりです。

つまり遺言書作成や生前相続契約をするときに認知症になっていなかったことが明らかであれば、その法律行為は有効になります。

生前にできる相続対策として遺言書の作成や生前相続を行いたいと考えている方は、事前に医師から「意思能力に問題は見受けられない」との診断書を取得しておきましょう。

認知症の診断は精神科・脳神経内科・老年科・もの忘れ外来などで受けられます。かかりつけ医からも適切な診療科を紹介してもらえますので、まずはかかりつけ医に相談しましょう。

成年後見人を設定する

成年後見人とは、認知症などにより意思決定能力が低下した方の代わりに財産管理や法律行為の支援をする人です。

参考 Q1:成年後見制度とは,どんな制度ですか?法務省

事前に成年後見人を設定しておけば、認知症になった方が相続人に指定された場合でも、その方の不利益にならないように成年後見人が適切な対処をしてくれます。

成年後見人は相続人に指定される・されないに関わらず、認知症の方の生活や財産を守るために必要な存在です。

成年後見人の手続きは以下の記事で詳しく説明しています。親や配偶者が認知症になったと診断された後は、大切な家族の権利を守るために、すみやかに成年後見制度を活用しましょう。

認知症イメージ 認知症だと相続できない?回避策を解説|成年後見人・任意後見契約・遺言書

認知症の予防が相続トラブル防止にもつながる

公園でジョギングする老夫婦

認知症が関連する相続トラブルの一番の防止策は「認知症を予防する」ことです。

しかし残念ながら、2022年現在では認知症を完全に予防できる方法はまだ見つかっていません。

ですが一定の効果が期待できる認知症の予防法は存在しています。以下は現時点で認知症予防の一定の効果が期待できるとされている対策です。

  • 栄養バランスの良い食生活を心がける
  • 無理のない範囲で有酸素運動を行う
  • 脳トレで脳内の血流を促す
  • 質の良い睡眠をとる
  • 社会活動に参加する・コミュニケーションを活発にする
  • 生活習慣病・歯周病・加齢性難聴の治療や対策をする

将来的な相続トラブルを避けるためにも、認知症の完全な予防法や治療法が確立されるまでの間は上記の対策を続け、できるだけ認知症リスクを下げるようにしましょう。

まとめ

今回は認知症高齢者が直面する可能性がある相続トラブルについて解説しました。

相続は、すべての方が何らかの形で経験することになる法律行為です。そして認知症は、今ではすべての高齢者がかかる可能性がある脳の機能低下です。

「認知症」と「相続」の組み合わせが深刻な相続トラブルに発展しないよう、今からできる対策を考えておきましょう。

ライター紹介 | 杉田 Sugita
認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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