- 医療費の自己負担(1~3割)は入金や治療の内容次第で高額になる
- 高額療養費は一時的に限度額以上の自己負担を支払ってから払い戻しを受ける
- 限度額適用認定証があれば最初から自己負担限度額までの支払いにできる
日本は国民皆保険制度があるため、誰でも医療費の自己負担を3割以下に抑えられます。ただ、3割以下に抑えられるとはいえ、入院が長期化したり高額な治療を受けたりすれば、無視できない金額になってしまうこともあります。
そんな時のために、あらかじめ済ませておきたい手続きが「限度額適用認定証」です。窓口での医療費支払いを自己負担限度額までにできるため、家計への負担を最小限に抑えられます。
今回は限度額適用認定証の概要や受け取り方、関連する高額療養費制度について紹介します。
目次
限度額適用認定証とは
限度額適用認定証は、窓口での支払が高額になる場合に、自己負担額を所得に応じた限度額にするために医療機関に提出する書類のことです。
医療費が高額になる場合、限度額適用認定証を医療機関の窓口に提示することで、支払いが自己負担限度額までに抑えられます。
高額療養費は一時的に大きな負担になることがある
医療機関で健康保険証を提示すると、自己負担が1~3割になるのは誰もが知っているところです。ただ、1~3割負担だとしても、入院期間や治療の内容次第では高額な自己負担が発生することも考えられます。
高額療養費制度は、ひと月の医療費の自己負担を定めている制度です。例えば標準報酬月額が30万円の方に100万円の医療費が発生した場合、自己負担額を約9万円に抑えられます。
画像引用:高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)|厚生労働省保険局
ただ、高額療養費制度は一度医療費を支払ったあとに高額療養費申請書を提出し、あとから払い戻しを受ける制度です。医療費が100万円かかった場合、一時的とはいえ10~30万円を支払わないといけません。
限度額適用認定証があれば負担が自己負担限度額までで収まる
高額療養費制度では対象に該当する都度の申請が必要です。払い戻しになるとはいえ、一時的に大きな出費がかかります。診療月から払い戻しまでに、通常は3~4ヶ月の時間が必要です。
限度額適用認定証なら健康保険証と併せて窓口に提示するだけで、1ヶ月(1日から月末まで)の支払いが自己負担限度額までになります。
「高額療養費制度の申請が不要」「限度額以上の自己負担について支払う必要がなくなる」「高額療養費が払い戻されるまで待つ時間が不要」と3つもメリットが得られます。
ただし、食事代や差額ベッド代などは自己負担となり、高額療養費とは別途で支払いが必要です。
限度額適用認定証の有効期限
限度額適用認定証の有効期限は「申請書受付月の1日から最長で1年」です。また、申請書受付月より前の月には利用できません。
限度額適用認定証の取得方法
限度額適用認定証の入手方法は、加入している保険が健康保険(健康保険組合、協会けんぽ)か国民健康保険かによって異なります。ここでは協会けんぽと国民健康保険に分けて、入手までのプロセスを紹介します。
必要書類
限度額適用認定証を入手するために必要な書類は、以下のようなものです。
- 国民健康保険証
- 印鑑
- マイナンバーカードまたは通知カードなど、個人番号が分かる書類
- 本人確認書類
国民健康保険の場合は自治体によって必要なものが変わる可能性があるため、事前に市役所の担当部署に確認しましょう。
窓口か郵送で申請書を提出する
交付手続きは、国民健康保険と協会けんぽで以下のように異なります。
- 国民健康保険:住んでいる市区町村の国民健康保険の窓口へ申請(即日交付可能)
- 協会けんぽ:協会の各都道府県支部に申請
会社勤めの方は健康保険証を確認してみてください。「全国健康保険協会(協会けんぽ)」と書かれていれば協会の都道府県支部に申請を行います。
ただし、協会けんぽの場合、支部によっては「原則として郵送手続きのみ」と定められている場合もあります。郵送では1週間程度かかるため、早めに申請しましょう。
マイナンバーカードの健康保険証なら限度額適用認定証の手続きが不要に!
これまでの健康保険証の場合、医療機関や薬局の窓口で支払うお金を自己負担限度額までにとどめるために、事前に申請限度額適用認定証を準備する必要がありました。
今後はマイナンバーカードを健康保険証として利用することで、限度額適用認定証がなくても、限度額を超える支払いが免除されます。
参考 限度額適用認定証の準備が不要になりました!厚生労働省マイナンバーを健康保険証として利用するやり方は、マイナポータル公式サイトで確認できるので参考にしてみて下さい。
参考 マイナンバーカードが健康保険証として利用できますマイナポータルすでにマイナンバーをお持ちの方は健康保険証として使えるように手続きしておくと、今後の高額療養費制度の利用が楽になるでしょう。
高額療養費制度の自己負担限度額の区分
最後に参考として、高額療養費制度の自己負担限度額について紹介します。
70歳未満
所得区分
|
自己負担限度額
|
---|---|
① 区分ア (標準報酬月額83万円以上の方) |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
|
② 区分イ (標準報酬月額53万〜79万円の方) |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
|
③ 区分ウ (標準報酬月額28万〜50万円の方) |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
|
④ 区分エ (標準報酬月額26万円以下の方) |
57,600円
|
⑤ 区分オ(低所得者) (被保険者が市区町村民税の非課税者等) |
35,400円
|
70歳以上75歳未満
被保険者の所得区分
|
自己負担限度額
|
||
---|---|---|---|
外来(個人ごと)
|
外来・入院(世帯)
|
||
① 現役並み所得者 |
現役並みⅢ (標準報酬月額83万円以上で高齢受給 |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% | |
現役並みⅡ (標準報酬月額53万〜79万円で高齢受 |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% | ||
現役並みⅠ (標準報酬月額28万〜50万円で高齢受 |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
[多数該当:44,400円] |
||
② 一般所得者 (①および③以外の方) |
18,000円(年間上限14.4万円)
|
57,600円 | |
③ 低所得者 |
Ⅱ(被保険者が市区町村民税の非課税者等である場合) Ⅰ(被保険者とその扶養家族全ての方の収入から必要経費・控除額を除いた後の所得がない場合) |
8,000円
|
24,600円 15,000円 |
以下の記事では高額療養費・限度額適用認定証以外の公的制度をまとめて紹介しています。医療費を安く抑えたい方はぜひ参考にしてください。
老後の医療費はいくら必要?備える対策と安心の公的制度を紹介まとめ
今回は限度額適用認定証と高額療養費の仕組みについて紹介しました。
限度額適用認定証があれば払い戻しの手続きをせず、医療機関窓口での支払い額を自己負担限度額までに抑えられます。手続きを簡単にするために、できるだけ早く手続きを進めておきましょう。
ちなみに、医療費とは別に、入院時は病院に入院保証金を支払わないといけないこともあります。入院前に慌てないように、こちらの記事も併せて読み進めておくことをおすすめします。
入院保証金とは|入院前に必要な保証金を支払えない場合の対処法1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)。老後に安心して暮らすための知識とノウハウを紹介いたします。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!