- 事実婚とは婚姻届を出さずに実質的な夫婦関係になること
- 事実婚を第三者に認めてもらうための方法がある
- 事実婚を選択するとメリットとデメリットがある
- シニア世代が結婚するときは事実婚・法律婚どちらにするか十分な話し合いが必要
結婚している男女の中には、一定の割合で「事実婚」を選択している人がいます。また、事実婚は異性だけでなく同姓との間でも成立します。
はたして事実婚とは何でしょうか。法的な婚姻ではなく事実婚を選択した人たちにはどのようなメリット・デメリットが生まれるのでしょうか。
今回は事実婚とは何かについて解説します。
目次
事実婚とは
事実婚とは、婚姻届を提出せずに実質的な夫婦として共同生活を送っている状態のことです。
内閣府は事実婚を「法律上の要件(届出)を欠くが、事実上夫婦としての実態を有する関係」と定義しています。
内閣府男女平等参画局の調査によれば、2022年時点で法的に結婚している人の割合は59.5%、事実婚を選択している人の割合は2.3%です。
画像引用:男女共同参画局|事実婚の実態について
割合としては法的な婚姻関係を選択している人よりもかなり少ないですが、2023年現在の日本ではすでに事実婚が選択肢としてあり得る状態になっています。
法律婚とは
法律婚とは、役所に婚姻届けを提出して同じ戸籍に入る婚姻関係のことです。
法律婚と事実婚との違いは、婚姻届の提出の有無です。
事実婚と内縁・同棲との違い
事実婚は「内縁関係」とも称されることがあります。
事実婚と内縁との違いはほとんどありません。
一般的にはニュアンスの違いとして、夫婦が主体的な意思で婚姻届を提出しなかったときには「事実婚」、家族や第三者との兼ね合いにより婚姻届が提出できない事情があるときには「内縁」と呼び交わされるようです。
また事実婚と「同棲」はどちらも恋愛関係にある2人が一緒に暮らしている状態を指しますが、当人同士に婚姻の意思があるか否かにより呼び方が違います。婚姻の意思がある場合は事実婚、婚姻の意思が一方もしくは双方にない場合は同棲と呼ばれます。
事実婚(内縁)が認められる要件
法的に結婚していないカップルが事実婚もしくは内縁関係にあると第三者から認められるためには、以下3つの要件をいずれも満たす必要があります。
お互いに婚姻の意思がある
事実婚は単なる恋愛関係とは違うため、カップルの双方ともが相手を生涯のパートナーとして認識し、法的な届出は出さなくても婚姻の意思を持っている必要があります。
片方だけに婚姻の意思があったとしても、もう片方が同じ考えでなければ事実婚とは認められません。
同居している
同じ家で夫婦として暮らしているかどうかも、事実婚が認められるためのポイントのひとつです。
単身赴任や入院、介護施設への入居など例外はありますが、特に事情がなければ別居しているカップルは事実婚ではなく単に恋人同士の関係だと見なされる場合が多いです。
生計を同一にしている
基本的に夫婦関係にある人たちは生計を同一としているため、事実婚の場合でも生計が同一でなければ夫婦として認められません。
生計の同一とは、家計を夫婦のどちらかが、もしくは共同で負担していることを指します。共働き世帯で家計の支払を項目別に分けている場合でも、どちらか一方の支払が停止されたら家計が成り立たなくなる状態であれば生計が同一であると見なされます。
事実婚を証明する方法
それでは、事実婚を当人同士だけでなく対外的にも認めてもらうためには、どのように事実婚関係を証明すれば良いのでしょうか。
以下からは事実婚を第三者に証明するための方法をいくつかご紹介します。
住民票に記載
住民票を同一し、住民登録者2名の関係を「夫(未届)」と「妻(未届)」にすることで、お互いが事実婚関係にあると証明ができます。
単に同居しているだけでしたら住民票は別々でも構いませんし、夫あるいは妻ではなく「同居人」と記すこともできますが、できれば公的書類として未届の夫あるいは妻としておくことがおすすめです。
社会保険第3号被保険者の登録
法律上の配偶者でなくても、片方の収入によって生活している生計同一者であれば社会保険上の扶養に入れます。
扶養されている人(被扶養者)が扶養する人(被保険者)の社会保険に第3号被保険者として加入すれば、事実婚の証明になるだけでなく保険料の支払も不要になります。
また社会保険第3号被保険者になった人は、もし事実婚が解消されても「元夫婦」として将来的な年金分割が可能です。年金分割については以下の記事をご覧ください。
年金分割は熟年離婚する専業主婦(夫)を守る制度|種類・計算方法など解説事実婚契約書の作成
法的な婚姻届を出す代わりに、事実婚を始めるときに事実婚契約書を取り交わしておくこともおすすめの事実婚証明方法です。
事実婚契約書を作成することで、お互いに婚姻の意思がある事実がはっきりします。
事実婚契約書には特定の様式はなく、2人の間で取り交わすだけでも成立します。しかし対外的にも証明ができるようにするためには公正証書にしておけば、より確実です。
パートナーシップ制度の利用
同性婚カップルに法律上の夫婦と同等の権利を認めるため、自治体によっては独自のパートナーシップ制度を設けているところもあります。
パートナーシップ制度は2015年に東京都渋谷区および世田谷区で始まり、2023年4月時点でパートナーシップ制度を設けている自治体の数は278です。
参考 日本全国 パートナーシップ制度一覧みんなのパートナーシップ制度事実婚のメリット
上記のように事実婚関係が第三者に認められると、事実婚カップルには限定的な「夫婦としての権利」が発生します。
ですが事実婚によって発生する権利は、当然のことながら法律婚カップルも享受できます。
事実婚カップルはなぜ法律婚ではなく事実婚を選択したのでしょうか。
以下は事実婚を選択した場合に考えられるメリットです。
夫婦別姓が選択できる
法律婚をすると夫婦のどちらか一方は、相手の苗字に改姓しなければいけません。2021年の統計では、法律婚をした夫婦のうち95%は女性側が夫の苗字に改姓しています。
画像引用:男女共同参画局|夫婦の姓(名字・氏)に関するデータ
自分の苗字に思い入れがある、仕事の関係で改姓が難しいなどの理由がある人は、事実婚を選択すれば夫婦それぞれの苗字のままで生活ができます。
義家族や親戚と距離を置ける
法律上の婚姻関係を結ぶと、互いの親族とも姻族関係になります。
義家族と交流したくない、将来的な義実家の介護要員としてカウントされたくないとの希望がある場合には、法律婚をしないことで相手の家族や親族と距離を置けます。
なお法律婚をしても、配偶者の死後であれば義家族との姻族関係は解消が可能です。姻族関係の終了のさせ方は以下の記事をご覧ください。
婚姻関係終了届(姻族関係終了届)のメリットとデメリットを解説別れてもバツイチにならない
事実婚は法律婚と違い戸籍には婚姻の事実が載らないため、事実婚を解消しても戸籍に履歴が残らず、いわゆるバツイチにはなりません。
事実婚のデメリット
事実婚のメリットを確認したあとは、事実婚が法律婚と比べて不利な点、事実婚のデメリットについても確認しましょう。
子供が非嫡出子になる
事実婚夫婦の間に産まれた子供は、非嫡出子として母親の戸籍に入ります。
父親は認知をすることで法律上の親子関係にはなれますが、子の親権者は母親単独のままです。共同で親権を持つためには法律婚をして「婚姻準正(非嫡出子を嫡出子に変更すること)」をする必要があります。
税制上の優遇措置がない
事実婚の配偶者には税制上の配偶者控除や配偶者特別控除が適用されません。法律婚をした人に比べ納税額が高くなる可能性があります。
配偶者がいる人への税制優遇は、年金受給者の場合でも同様です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
配偶者がいる年金受給者を支援する公的制度|配偶者控除・加給年金の活用法病気等の際に家族として扱われない可能性
突然の病気やケガにより入院・手術等が必要になったときには、症状の説明を受けたり同意書へのサインをするのは本人かその家族です。
本人が重体で意識がない、あるいは認知症で判断力が低下している場合には家族が本人の代わりに同意書などにサインしますが、事実婚パートナーはそのようなときに家族として扱ってもらえない可能性があります。
家族以外面会禁止の病室に立ち入りができない、また万が一のときに遺体の引き取りができないなど、制限がかかる可能性が高いです。
事実婚パートナーにも相続は可能
事実婚カップルは法律上の配偶者ではないため、どちらかが亡くなったとしても法定相続人には指定されません。
しかし、事実婚のパートナーにも自分の財産を死後に譲ることはできます。
事実婚パートナーに相続させる(遺産を譲る)方法はいろいろとあります。以下の記事を参考にして、自分の死後にも大切なパートナーが経済的に困窮しないよう策を講じてください。
内縁の妻でも相続できる|事実婚の相手とその子どもが遺産を受け取る方法確実に遺産を譲れる方法は遺言書
事実婚パートナーに遺産を譲る方法はいろいろあると上記では申し上げましたが、中でも一番確実な方法は遺言書を作成して「遺贈」する方法です。
しかし遺言書には細かな決まりがあり、亡くなった人の状況によっては他の法定相続人から遺留分を請求される可能性があります。
遺言書の作成を考えている人は以下の記事でしっかりした遺言書の作成方法を学んでください。
遺言書の書き方と文例|特定の人だけに財産を渡す方法も解説熟年再婚は法律婚・事実婚の選択は慎重に
かつて法律婚をしていた人が死別・離別によりおひとりさまとなり、その後の新たなパートナーとめぐりあって再び結婚しようと考えることがあるかもしれません。
しかしシニアの熟年再婚では、互いの子供との関係や介護・お墓・相続などのトラブルの可能性を考え、法律婚を選択するか事実婚を選択するかは慎重に決定する必要があります。
以下の記事や、今回ご説明した事実婚のメリット・デメリットを考えながら、どのような形での夫婦になるかを2人でよく話し合ってください。
熟年再婚のメリット・デメリット|幸せになるためのチェック項目まとめ
今回は事実婚について解説しました。
事実婚も法律婚は法的な違いはありますが、愛し合う2人が「夫婦」になろうという気持ちは同じです。
事実婚の正しい知識を得て、後悔のない選択をしましょう。
終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!