- 墓じまいとはお墓を解体・撤去し更地に戻すこと
- 遺骨を他の場所に移動させるため改葬とも呼ばれる
- 墓じまいにかかる費用は「魂抜き」「解体工事」「離断料」に分けられる
遠い昔にご先祖様が建てた立派なお墓も、長い年月が経つと維持が難しくなってくる場合があります。
お墓の承継者がいない、または遺骨を別の墓所に移すなどのさまざまな理由により、所有していたお墓を処分することを「墓じまい」と言います。
いったい墓じまいとはどのように行い、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
今回は墓じまいについて、気になる費用面を中心に解説していきます。
目次
墓じまいとは
墓じまいとは、墓地に建立されている先祖代々のお墓や個人墓を解体・撤去して更地に戻し、墓所を土地の管理者に返還することです。
墓じまいではなく「改葬」と呼ぶ方もいます。この2つはほぼ同じ意味です。
ただ厳密にいうと、改葬とは遺骨をある一定の場所から他の場所に移すことを意味しますので、多少意味は異なります。
しかし、墓じまいをした後には取り出した遺骨をどこかに移動して供養(改葬)しなければいけませんので、墓じまいと改葬はひとくくりにして考えても差し障りないでしょう。
〈墓じまい以外の改葬の例〉
・納骨されていた遺骨の一部を海洋散骨した
・手元供養していた遺骨を樹木墓に収めた
増えている墓じまい
墓じまい(改葬)は、この20年近くで急激に増加しています。
厚生労働省の平成29年度衛生行政報告例によると、1999年には年間6.7万件だった改葬件数は2017年には年間10万件以上も実施されるようになり、墓じまいをするのが珍しくない風潮となってきました。
画像引用:永代供養墓普及協会|改葬とはなにか
墓じまいが増えた理由
近年になって墓じまいが増えてきた理由は、大きく分けて2つあります。
1.終活を実践する人が増えたことによる影響
東京市町村自治調査会が行った調査によれば、お墓を所有している人のうち16%は将来的な墓の承継者が存在しないと答えています。また承継者がいると答えた84%でも、うち 17.3%はそのお墓を子どもに継承させたくないという回答結果が得られました。
先祖供養やお墓の維持管理で子供に面倒をかけないように、自分たちの世代で墓じまいをしておこうと考えている人が多いことが伺えます。
参考 墓地と市町村との関わりに関する調査研究報告書公益社団法人東京市町村自治調査会2.東京一極集中化による影響
進学や就職等で地元を離れて生活拠点を東京に移した人は、お墓参りのための帰省が負担となることが多いです。
自宅近くの墓所に改葬し、地元のお墓は墓じまいするというケースも増えています。
墓じまいにかかる費用
それでは、墓じまいにはいったいどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
これは、現在あるお墓が寺院にあるか公共霊園にあるか、新たな遺骨を納める改葬場所がどこになるかなど、状況により大きく変わってきます。
総額での平均相場を挙げるのは非常に困難なため、墓じまいではどのようなことを行うのか、流れに沿ってひとつずつ費用を確認していきましょう。
魂抜き(閉眼供養)
墓じまいをする前には、遺骨を取り出してお墓を解体する前に「魂抜き」の法要を行い、読経をあげてくれた僧侶にお布施を包みます。
仏教のほとんどの宗派では魂抜きの法要を「閉眼供養」もしくは「閉眼法要」と呼びますが、浄土真宗では「遷仏法要」と呼ばれます。
なおキリスト教ではお墓に死者の魂が入っているとは考えられてないため、キリスト教の墓所で墓じまいを行う際にも魂抜きはしません。
閉眼供養をあげる際の費用は3~10万円が相場で、一般的な法要とほぼ同じです。寺院併設の墓地ではなく霊園等に僧侶を呼んで読経をしてもらう際には、別途お車代として1万円程度をお渡しします。
墓石解体工事費
墓じまいにより不要となった墓所は、墓石を解体・撤去して更地にします。
墓石解体工事費の相場は、一般的なサイズのお墓でおおむね20万~30万円程度です。これは墓石の処分費用も含みます。
工事費用については宗派による費用の差はほとんどありませんが、地域相場や石材によって価格が前後します。
離檀料
離檀料は仏教の寺院内に墓地がある場合にかかる費用です。
寺院にお墓が建っているということは、お墓を所有する家がその寺院の檀家であることを指します。墓じまいをするのはほとんどの場合で檀家をやめることにあたりますので、寺院にはこれまでの感謝の意を込めたお布施を渡す慣習があります。
離檀料を支払わないと墓じまいを認めず、後ほど説明する埋葬証明書を発行してもらえないトラブルが生じる可能性があります。
離檀料の相場は3~20万円程度です。中には法外な離檀料を請求する寺院もあります。それぞれの寺院によって差が大きいため、事前に檀家総代や寺院近隣の石材店などに相談することをおすすめします。交渉には第三者の士業の方に依頼するという方法もあります。
遺骨の改葬費用
墓じまいをした後には、お墓の中で眠っていた遺骨が墓所有者の手元に戻ります。その遺骨は新たな供養場所をどこかに設けなければいけません。
遺骨の移動(改葬)費用は、どこに遺骨を納めるかによって大きく異なります。以下は改葬先として想定される供養場所の費用例です。
新たにお墓を建立 | 100万円~ |
永代供養墓(納骨堂型) | 30~100万円 |
永代供養墓(合祀型) | 20~50万円 |
樹木墓(霊園型) | 40~50万円 |
散骨 | 3~30万円 |
手元供養 | 0円~ |
遺骨を自宅で保管する手元供養を除けば、海や山などに遺灰を撒く散骨が一番安価な改葬方法です。
散骨にはいくつかの種類がありますので、詳しく知りたい方は以下記事も参考にしてください。
各申請書の取得費用
改葬をする際にはさまざまな書類が必要となりますので、その書類取得費用もかかります。
埋葬証明書 | 改葬元の墓地管理者が発行 | 500~1,500円 |
受入証明書 | 改葬先の墓地管理者が発行 | 1,000~5,000円 |
改葬許可証 | 改葬元の地域を管轄する自治体が発行 | 0~300円 |
墓じまい費用を負担する人
上記で説明した墓じまいの費用は、基本的にはお墓の所有者が負担します。
民法ではお墓の維持管理や先祖の供養をすべき人について以下のように規定しています。
(祭祀に関する権利の承継)
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
先祖代々のお墓の場合、上記の「祭祀を主宰すべき者」がお墓の所有者となります。
兄弟姉妹がいる方はお墓の継承時に話し合いが必要
親が亡くなった後、兄弟姉妹の誰もお墓を継がない場合には、兄弟姉妹で費用を按分に負担するケースもあります。
ここで注意すべきなのが、祭祀財産は相続の対象となる点です。
祭祀財産(墓)の維持管理を期待して遺産分割がなされている可能性もあり、兄弟など他の相続人が墓じまいの費用負担を嫌がるかもしれません。
兄弟姉妹がいる方は、相続のときにも墓じまいのときにも十分に話し合いをして、トラブルのないように努めましょう。
墓じまい費用を払えないとどうなる?
お墓の維持管理費用が払えず、かといって墓じまいするお金もないときには、そのお墓はどうなってしまうのでしょうか。
供養も墓じまいもされない墓所の処遇については墓地、埋葬等に関する法律施行規則で定められているとおり、遺骨はお墓から出されて無縁塚に行くことになります。
お墓を管理している場所によって異なりますが、例えば東京都の都立霊園の場合、年間管理料が5年以上滞納されているお墓に対して、まずは契約者の家族など関係者がいないか調査した上で、敷地内の立札と官報掲載により1年間公告します。
画像引用:公益社団法人東京市町村自治調査会|墓地と市町村との関わりに関する調査研究報告書
墓じまいをしなくても遺骨が捨てられてしまう心配はないとは言えますが、無縁塚という寂しい響きもあり、可能であれば関係者がきちんと墓じまいの費用を負担して遺骨を適切に供養することが望ましいでしょう。
まとめ
今回は「墓じまい」について解説しました。
終活が一般的になるに従い、いつか自分が入ることになるお墓についても検討する人が増えてきています。
いつか供養してくれる人がいなくなってしまう可能性のあるお墓をどうするか考えるのも、その一環です。
旧来からあるお墓を処分する墓じまいをしても、先祖を敬う気持ちがなくなってしまったわけではありません。
この先もずっと祖先が安らかに眠れるために、そしていつか自分自身も安心して眠れるために、前向きに墓じまいを検討しましょう。
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