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避難生活が高齢者に与えるダメージとは|トラブルを避けるポイントと対策

この記事のサマリ
  • 高齢者は若い人よりも早いタイミングで避難が必要
  • 高齢者の避難先は自治体の指定避難所だけではない
  • 避難生活は高齢者に大きな精神的・肉体的ダメージを与える
  • 充分な備えと対策をしてできる限り負担の少ない避難生活を

2024年8月に発生した日向灘を震源とする地震の影響で、南海トラフ地震のリスクが高まっています。

南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の呼びかけは一週間後に終了したものの、大きな地震が発生するリスクは解消されたわけではありません。

震災が起こったら、たとえ高齢者などの弱者であっても自分の身は自分で守る必要があります。またどこかに緊急避難する必要があったときには、避難生活をしのぐだけの備えもしておかなければいけません。

今回は、災害発生時の避難について説明します。南海トラフ地震の災害想定区域に暮らす人も、それ以外の地域に住む人も、あり得るかもしれない避難生活に対する心構えをしておきましょう。

高齢者は警戒レベル3ですぐ避難が必要

台風の接近や地震の可能性が高まったときなどは、災害想定区域に対して避難指示が発令されます。

災害の警戒レベルは5段階にわかれ、一般の人は警戒レベル4(災害のおそれ高い)で避難指示が出されます。

しかし高齢者や障がい者等は避難に時間がかかることから、一段階レベルが低い警戒レベル3(災害のおそれあり)で避難指示が出ます。

警戒レベルと避難指示の表

画像引用:政府広報オンライン|「警戒レベル4」で危険な場所から全員避難!5段階の「警戒レベル」を確認しましょう

高齢者は防災情報をきちんとチェックし、周囲の人がまだ避難を開始していなくても、自らの判断で避難所等に向かわなければいけません。

災害発生時に高齢者が避難できる場所

指定避難所の看板

自分の住む地域で災害のリスクが高まったときには、どこに避難すれば良いのでしょうか。

避難先は、自治体が指定する避難所だけではありません。災害想定区域の中でも自分が住んでいる場所、自分の状況、避難をサポートしてくれる人の有無など、その人・そのときごとに適切な避難先は異なります。

日頃から自分の状況を見極め、いざ災害が起こったときに避難できる場所をできれば複数案考えておきましょう。

自治体指定の避難所

すべての自治体は、災害が発生したときに避難生活ができる場所を指定しています。

指定避難所 通常の避難生活が送れる場所(小学校・公民館など)
指定福祉避難所 一定の配慮が必要な人を対象とした避難所(小学校・公民館・高齢者施設・障がい者施設・保育園など)

各自治体の避難所は防災マップで確認できます。インターネットで見られる防災マップの中には、各避難所の開設状況や混雑状況がリアルタイムでわかるサービスもあります。自分の住む地域の防災マップをあらかじめ確認しておきましょう。

参考 避難所・水害時緊急避難場所マップ大田区防災ポータル

家族・親戚・知人宅

災害想定区域以外に家族や親戚、友人や知人が住んでいる場合は、その家に立ち退き避難させてもらうことも一案です。

自治体の避難所に比べてプライバシーを保ちやすく、見知った人の家で安心して過ごせます。

ただし相手先の受け入れ態勢が確認できないまま「押しかけ避難」してしまうと、避難先でいさかいが生じてその後の関係性にも影響をおよぼす恐れがあります。

個人宅に身を寄せることを想定している場合は、災害が起きる前から避難についてしっかりと話し合い、避難先一家の承諾を得ておくことが肝心です。

ホテル・旅館など宿泊施設

災害時には民間の宿泊施設が罹災者向けに部屋を提供する場合があります。

もともと宿泊施設なので、避難生活とはいえ学校や公民館などの自治体の避難所よりも比較的快適です。

ですが状況によっては平時のようなサービスが提供できない可能性があるので、いつもの旅行のような快適さを求めるとがっかりしてしまうかもしれません。

また災害想定区域以外の地域にある宿泊施設は、宿泊する際には平時と同じ宿泊費用がかかるのが一般的です。避難生活が長期間におよぶ場合には金銭面についても考慮する必要があります。

自宅内の安全な場所

自宅に倒壊等の恐れがなく、避難所にいるよりも安全だと判断されたときには、自宅内の安全な場所で避難生活を送る方法もあります。これを「屋内安全確保」と言います。

浸水や津波の危険がある場合には自宅の2階やビル最上階、また土砂崩れが想定されたときには山側から離れた部屋など、自宅内でより安全な場所を探してそこで生活するようにしましょう。

屋内安全確保を検討するときには、以下の条件を確認してください。

《屋内安全確保できる条件》
・自宅が家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていない
・浸水深より居室が高い
・非常食や飲料水などの物資が充分にある

避難生活は長期化する可能性がある

青空にはためく白い旗に避難所にいます文字

台風が接近する予報なので念のため避難しておこう、といった避難の種類であれば、危険が去ればすぐに住み慣れた自宅に戻れるかもしれません。

しかし大地震で地域全体に大きな被害が出たり、台風による土砂崩れなどが自宅付近で起こった場合には、避難生活が長引く可能性があります。

災害発生直後には何よりもまず自分の生命を守るための対策が必要になりますが、災害発生後にも自宅に戻れないときには長期的な避難生活を覚悟しておかなければいけません。

避難所で高齢者に起こり得るトラブル

和室に非常持出袋

長期の避難生活は、どんな人でも心身に負担がかかるものです。

特に高齢者は避難生活による心身のダメージを受けやすいと考えられるため、より一層の配慮が必要です。

高齢者の避難生活で起こり得るトラブルを以下で確認しましょう。

エコノミークラス症候群

エコノミークラス症候群とは、狭い場所で長時間同じ姿勢でいることで肺動脈に血栓(血のかたまり)ができる病気です。飛行機のエコノミークラスで長時間フライトをする人に発症しやすいことから名づけられましたが、正式名称は「肺血栓塞栓症」です。

避難所生活においても車中泊や狭い個人スペースで同じ姿勢を続けていると発症の恐れがあるため、以下の予防策を実施して発症リスクを下げることが大切です。

《エコノミークラス症候群の予防法》
・こまめに水分を摂取する
・こまめに体操やストレッチ運動をする
・ゆったりとした服装をして身体を締め付けないようにする
・ふくらはぎのマッサージをする
・足を上げた状態で眠る

息切れや胸の痛み、動悸、呼吸困難などの症状が出た際には早急に医師の診察を受けてください。

感染症

避難所では多人数が一箇所で生活するため、風邪やインフルエンザ、新型コロナウィルス感染症などの感染症にかかりやすくなります。

また災害時にトイレが故障し排泄物の処理が滞ることで、大腸菌やノロウィルスなどの感染症リスクも増大します。

細菌やウィルスに対する抵抗力が低下している高齢者は、以下を実施して感染症予防を行いましょう。

《感染症の予防法》
・正しい手洗い
・正しいマスクの着用
・咳エチケット
・換気

生活不活発病

避難所生活では他者への遠慮から必要以上に動き回らず、大人しく座っていようとする高齢者が多いです。

これまで行っていた掃除や料理などの家事もする機会が激減するため、日常生活で動く機会が減ってしまいがちです。

生活不活発病とは、動かない状態が続くことにより心身の機能が低下して「動けなくなる」状態を指します。避難生活が続いていても積極的に活動の機会を増やし、生活不活発病にならないよう注意しなければいけません。

《生活不活発病を防ぐポイント》
・横になったままではなく起きているときは座る
・散歩するなど活発に動く機会を増やす
・できることは自分でする(ボランティアにまかせっきりにしない)

精神的なダメージ

災害が起きたショックに加え、避難を余儀なくされていることによる精神的ダメージは計り知れません。

住み慣れた場所で生活するストレスが心身におよぼす不調を「リロケーションダメージ」と呼びます。リロケーションダメージはどの年代の人でも起こりますが、特に高齢者はリロケーションダメージが強くなりやすいと言われています。

避難生活を続ける上でリロケーションダメージはどうしても避けられませんが、以下のような対策を講じて少しでもリロケーションダメージを軽減させましょう。

《リロケーションダメージを低減するポイント》
・なじみ深い・愛着のあるモノを避難所に持って行く
・家族や顔見知りと一緒に避難する
・避難所内で活発にコミュニケーションする

認知機能の低下・認知症の悪化

認知症の人は環境の変化に対応が難しいとされています。

しかし、災害発生時には環境が激変します。災害による不安や避難生活のストレスは認知症の人に大きな不安や混乱を与え、認知症が進んで抑うつや暴言・暴力などの周辺症状が発生しやすくなります。

認知症は早く気づけば治療が可能|認知症の症状を初期・進行後に分けて解説

過去の災害では認知症の人の避難生活は約7割が限界を迎えたとのデータもあり、高齢者の中でも認知症の人は避難先にも充分な配慮をする必要があります。

参考 認知症の人と家族のための避難所での支援ガイド日本認知症ケア学会

認知症の家族と一緒に避難する可能性がある人は、事前に福祉避難所の情報を得ておきましょう。

避難所内での犯罪にも注意

災害時の混乱や避難所での集団生活に乗じた犯罪にも注意が必要です。

過去の災害では、避難所内で毛布など支援物資の強奪や手荷物の盗難などの犯罪が多発しています。また高齢者とはいえ、性犯罪被害に遭う恐れも決してないとは言えません。

災害で身も心も弱っているところに、犯罪被害にまで遭ったときのストレスやショックはかなり大きくなることが予想されます。単独で行動しない・貴重品は肌身離さず持つなど、悲しい被害に遭わないようしっかり自衛しましょう。

高齢者が平時から備えておきたい防災対策

今回は主に避難所での避難生活について解説しましたが、高齢者の生命と安全を守るためには、避難所に避難する前からの防災対策が重要なカギになります。

以下の記事では災害発生時に高齢者を守るための防災対策を「自宅編」「緊急避難編」「避難生活編」「在宅生活編」にわけてわかりやすく解説しています。本記事とあわせ参考にしてください。

高齢者の生命と生活を守る防災対策とは|自宅・避難所・在宅避難

まとめ

防災グッズの見直しする家族の人形

今回は災害発生時における高齢者の避難生活について解説しました。

災害はいつ起きるかわかりません。今のうちから万全の備えをして、いざ避難の必要が起きても適切に対処できるようにしましょう。

ライター紹介 | 杉田 Sugita
終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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