「老後2,000万円問題」などのニュースで老後資金の不足がフォーカスされた昨今。60歳を迎えてものんびり生活できず、「まだまだ働いて稼がないと!」と考えている方も多いのではないでしょうか。
現在は定年が65歳まで延長したこともあり、60歳以降も引き続き働く方が増えています。再雇用のほか、いったん退職して再就職することも可能です。
本記事では60歳以降の方が仕事を探す際に利用できる方法と、シニア向けに募集されている求人について解説します。
目次
60歳以上の男女が働く割合
内閣府が発表した令和3年版の高齢社会白書によれば、60歳以上で働いている男女の割合は以下のとおりです。
【男性の就業状況】
- 60~64歳:82.6%
- 65~69歳:60.0%
- 70~74歳:41.3%
- 75歳以上:4.9%
【女性の就業状況】
- 60~64歳:59.7%
- 65~69歳:39.9%
- 70~74歳:24.7%
- 75歳以上:2.7%
60~64歳の男性は82.6%、女性は59.7%以上と、半数以上の方が老後も働いていることが分かります。令和2年の高齢社会白書の就業状況は60~64歳の男性が82.3%、女性が58.6%ですから、少しずつシニア労働者が増えていることがわかります。
参考 令和2年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)内閣府シニアが働く時間と日数に関しては、大和ネクスト銀行の調査が参考になります。「働くシニアの仕事と生活に関する実態調査2017」によれば、シニア世代は1週間でおよそ「4.3日」、1日あたり「6.3時間」働いているという結果が出ました。
参考 働くシニアの仕事と生活に関する実態調査2017大和ネクスト銀行実際に60歳になってから働く場合、上記の数字を参考に働き方を考えてみても良いでしょう。
再雇用では給料が下がるのが一般的
60歳で定年退職した方が65歳まで再雇用される場合、給料が定年前よりも大きく下がることがあります。
下落幅は企業によって設定が異なりますが、定年退職時の50~70%程度に設定されることが一般的です。
ただし、下げられた賃金によっては「高年齢雇用継続給付」が支給されます。
雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者について、賃金額が60歳到達時の75%未満となった場合に、最高で賃金の15%に相当する額を支給する制度です。
賃金低下率が61%より大きく75%未満の場合
60歳以降の毎月の賃金×一定の割合(15%〜0%)
賃金低下率が61%以下の場合
60歳以降の毎月の賃金×15%
給付金を受け取ることで、会社の負担を心配せずに定年退職前に近い水準の給与が得られます。
60歳以上の方を歓迎してくれる仕事の特徴
近年は労働者不足が叫ばれて久しく、企業としても経験豊富なシニア世代の採用に力を入れています。
国としても企業が70歳まで働ける就業機会の確保を努力義務とするなど法整備を続けており、今後はシニアにとってますます働きやすくなることが期待できます。
なかでもシニアと相性の良い仕事の種類について紹介します。
時間に融通が利くメリットを活かせる仕事
60歳以上は現役世代と比較して体力が落ちてくるため、フルタイムで働くことが難しいこともあります。週3~4日のパートタイムの仕事の方が向いていることが多いでしょう。
一方、シニアは子育てが終了しており、土日祝日でも時間に融通が利くケースが多いです。若い世代が休みを希望しがちな土日祝日に働けるシニアなら、未経験でも歓迎される可能性があります。
深夜や早朝で勤務があるコンビニや清掃員などは、シニアと働き方とマッチしているでしょう。
人生経験が生きる仕事
シニア世代は体力面では若い世代に負けるものの、人生経験が豊富だったり専門の資格を持っていたりする強みがあります。
たとえば製造業で自分しか対応できないような難しい業務を後進に伝えることで会社に貢献できます。介護・福祉の現場で人生経験を活かした思いやりのある発言で入居者に接することもできれば、新しい現場で即戦力として活躍することも可能でしょう。
コミュニケーション能力が求められる仕事
シニア世代は長い社会人生活のなかで、さまざまな方と触れ合っています。個人ごとの特徴によって接し方を柔軟に変える術を身に着けている方は、再就職でも重要な戦力になれます。
接客やコミュニケーションが必要になるコンビニやスーパーマーケットで仕事が見つけやすいでしょう。連携して業務を行う警備員でも重宝されます。
60歳の仕事の探し方
60歳を迎えた方が仕事を探す際は、以下のような方法を利用できます。
再雇用
定年前と同じ会社で働きたい方は、会社から再雇用を受ける方法があります。「慣れ親しんだ職場で今までと同じ部門で働き直せる」「求職活動をする手間がない」といったメリットがあるだけでなく、新しい職場に慣れる必要もありません。
長年正社員として働いた方には有力な選択肢といえるでしょう。
ただし、再雇用に伴って給与が今までの50~70%以下に下がることもあります。再雇用を機に部門異動が発生し、希望する働き方が実現できない可能性もある点に注意が必要です。
ハローワーク
ハローワークは公共職業安定所とも呼ばれ、全国に500か所以上ある厚生労働省が管轄している機関です。
募集要件のなかに年齢要件を問わない仕事もあるので、正社員やパートタイムから自分に合った仕事を探せます。
全国300か所のハローワークではシニア世代向けの就職相談窓口「生涯現役支援窓口」を開設しており、これを利用できるのもメリットです。
シニア世代の採用を進めている企業の情報を発信しているだけでなく、シニア世代向けに履歴書・職務経歴書の書き方サポートも実施しています。
シニア向け求人サイト
求人サイトなら、自宅にいながら自分にあった条件の仕事を絞り込めます。
全年齢が対象の求人サイトで60歳以上の求人に絞り込んで探すこともできますが、ほかにシニア専門の求人サイトも見つかります。
たとえば「グランジョブ」や、「マイナビミドルシニア」は60代を対象にした求人が豊富です。
シルバー人材センター
シルバー人材センターは公益社団法人が運営する組織です。
請負・委任という形でシルバー人材センターが仕事を受注し、適任者として選んだシニア会員に業務を斡旋します。仕事に就業できる日数や時間には制限が設けられており、1会員あたりの月額平均は3〜5万円ほどと、あまり多くの収入を見込めません。
時給や月給ではなく分配金として働いた分だけ収入を受け取るほか、会員登録と年会費の支払いも必要です。高い収入を得たい方よりも、社会に貢献したい方や仕事を探す手間を省きたい方に向いた組織です。
60歳からの働き方に合っている仕事
60歳以降のシニアでも働ける会社は数多くありますが、なかでもシニアの働き方とマッチした仕事の例を紹介します。
- コンビニ・スーパーの店員
- 介護施設職員
- マンション管理人
- 清掃員
- 家事代行
コンビニ・スーパーの仕事は力仕事のイメージがありますが、効率よく品出しできるツールが多く、シニアでも作業できます。
お客様とのコミュニケーションが苦にならない方はどの時間帯でも重宝されますし、早朝の品出しや夜勤の仕事を選べば最小限の接客で仕事に集中できます。
介護施設は自分と年齢の比較的近い世代の方のお世話をするため、若い世代より話が合うことが期待できます。長年培ったコミュニケーション能力を活用できますし、資格を取得することで年齢に関係なく長く働くことも可能です。
女性は清掃員や家事代行という選択肢があります。特別なスキルが不要で、主婦の経験で培った家事の能力をそのまま仕事に活かせるので効率的です。
いずれの仕事も時間に融通が利くので、体力が落ちているシニアでも無理なく働けます。
以下の記事では老後の仕事として人気が高いものをランキング形式で紹介しています。仕事を探す際は、こちらも参考にしてみてください。
老後に人気が高い仕事ランキング|シニアが仕事を続けるメリットは3つ60歳以上が働くときに知っておきたい注意点
60歳を機に新しく仕事を探そうとする場合、以下のような注意点があることも知っておくと良いでしょう。
- 定年前から準備を始める
- 年金の受け取り方を事前に考えておく
定年前から準備を始める
定年退職したあとに慌てて仕事を探しても見つけるまでに時間がかかり、収入が得られない期間が延びてしまいます。
再就職を見越して、関係する経験を事前に積んでおくとスピーディな再就職に繋がります。どの道に進むかで必要な準備は異なるので、50代後半から準費を始めても早過ぎることはありません。
新しい仕事に就くなら資格の取得も重要です。以下の記事では、取得しやすくシニア向けの資格を紹介しています。新しい仕事にチャレンジしたいシニアの方はぜひご覧ください。
老後に働くための資格7選|取得しやすく働きやすいシニア向け資格の取り方年金の受け取り方を事前に考えておく
60歳以上65歳未満の方が厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受け取る場合、「在職老齢年金」の仕組みによって年金額が一部支給停止されますので、ご注意ください。
賃金と年金額の合計額が47万円を超える場合、47万円を超えた金額の半分が年金額より支給停止されます。
参考 在職老齢年金の支給停止の仕組み日本年金機構まとめ
60歳以降のシニアの仕事はハローワークや求人サイト、シルバー人材センター等で見つけることができます。豊富な人生経験や資格を期待して積極的にシニア採用を進めている企業もあり、実際に探してみればさまざまな仕事が見つかるでしょう。
報酬額によっては在職老齢年金で年金が支給停止になることもあるため、公的年金についても考えたうえで再就職先と働き方を決めると良いでしょう。
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