- 原則として慶弔金には課税されない
- 課税対象となる慶弔金は「社会通念上相当とされる」額を超える場合など
- 弔慰金と違い死亡退職金は課税対象となる
会社に勤めている方が結婚したり子供が誕生すると、会社から慶弔金が支給されることがあります。
また嬉しいことばかりではなく、家族の他界など悲しいことがあったときにも慶弔金は支給されます。
しかし、はたして慶弔金には税金がかかるのでしょうか。
今回は慶弔金の課税ルールについて解説します。
目次
基本的な慶弔金の課税ルールを確認
まずは基本的な慶弔金の課税ルールについて確認しましょう。
原則として、会社が社員に支給する慶弔金には税金はかかりません。
ただし慶弔金の金額や状況によっては課税されるケースがありますので、すべての慶弔金が非課税となるわけではありません。
以下からは一般的に個人が支払う義務のある税金の種類を説明しながら、ひとつひとつ課税ルールについて説明します。
まず先に慶弔金の詳細について知りたいという人は以下の記事をご参照ください。
慶弔金とは何か|6種類の慶弔金の相場と非課税限度額・申請の仕方所得税
所得税とは会社から毎月もらっている給与や、個人事業主が商売をして稼いだ利益に対してかかる国税です。
慶弔金の支給は給与として扱われますが、冠婚葬祭などに際してかかる給与等は「社会通念上相当とされる」額を超えない限り、所得として含まなくても良いとされています。
(雇用契約等に基づいて支給される結婚祝金品等)
28-5 使用者から役員又は使用人に対し雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品は、給与等とする。ただし、その金額が支給を受ける者の地位等に照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しなくて差し支えない。
そのため慶弔金は所得税の対象外となり、課税はされません。
住民税
住民税は所得税と似ていますが、こちらは年間所得に応じて翌年に課税される地方税です。
所得税の項で説明したように「社会通念上相当とされる」額を超えない慶弔金は課税しなくて差し支えない決まりになっていますので、所得税と同じく住民税も発生しません。
相続税
相続税とは、遺産を相続したときに相続人に対して課税される税金です。
社員本人や社員の家族が亡くなった際に支給される弔慰金は「社会通念上相当とされる額」を超えない限り、相続財産の対象には含まれません。
贈与税
贈与税とは個人が第三者から財産を贈与された際にかかる税金です。具体的には年間110万円以上の財産を贈与されると課税されます。
受け取った慶弔金が110万円以内であれば、贈与税が発生することはありません。
消費税
消費税とは、日本国内において商品を購入したりサービスを受けたりするときに消費者が平等に負担する税金です。消費税が発生する取引を課税取引と呼びます。
慶弔金を金銭で支給された場合には、特に商品やサービスの提供を受けているわけではないため、課税取引とは判断されません。そのため消費税も課税対象外となります。
課税対象になる慶弔金とは
それでは、課税対象になる慶弔金とはいったいどのような種類の慶弔金なのでしょうか。
課税される可能性がある慶弔金を確認してみましょう。
「社会通念上相当とされる」額を超える慶弔金
上記までの説明で、繰り返し「社会通念上相当とされる」という言葉が出てきました。
慶弔金の支払額には一般的な相場が存在します。相場を超えない範囲の慶弔金であれば「社会通念上相当とされる額」と判断されますが、相場をあまりにも逸脱した慶弔金の額は受け取った人の賞与と見なされ、所得税および住民税の課税対象となります。
なお慶弔金の支給額が110万円を超えていても、贈与税が課税されることはありません。これは所得税との二重課税を防ぐためです。
一般的な慶弔金の相場は以下の記事を参考にしてください。
慶弔金の相場をケースごとに解説|統計からわかる支給割合と平均額社内規定に定められていない慶弔金
会社の就業規則に慶弔金に関する規定の記述がなかったとしても、常識的な範囲内の慶弔金であればすべてが課税対象になるわけではありません。
社内規定がない・もしくは適当でない社内規定のために課税される可能性があるのは、例えば以下のようなケースです。
- 一部社員に対してのみ慶弔金が支給されている
- 慶弔金の支給対象範囲が広すぎる(親戚の結婚祝金など)
同族会社など小規模企業の場合には慶弔金規定もあいまいになりがちです。あらかじめきちんと就業規則で慶弔金規定を明確にしておく必要があります。
記念品として物品を贈答する慶弔金
結婚祝金や出産祝金などを金銭ではなく記念品として贈答している会社は、記念品を購入する際に消費税を支払っています。
記念品を受け取った社員本人には消費税はかかりません。
なお記念品が図書カードなど商品券の場合には消費税の課税対象外となるため、会社も消費税を負担する必要はありません。
死亡退職金は課税対象になる
社員本人が亡くなったときには、慶弔金とは別に死亡退職金を支給する会社もあります。死亡退職金とは社員がもともと退職時に受け取るはずだった退職金を、遺族が代わりに受け取るものです。
死亡退職金は本来であれば亡くなった社員の財産となるべき金銭だったため、代わりに受け取った遺族は「みなし相続財産」を相続したものとして、相続税の課税対象になります。
相続税を支払わなければいけない財産の計算方法や、相続税が発生したときに必要な申告手続き等については以下の記事を参考にしてください。
相続税・所得税の確定申告は必要か|要不要のケースと申告方法について解説死亡退職金の支給日による課税種別
死亡退職金に課税される税金は、社員が亡くなった日から死亡退職金が支給されるまでにどのくらい期間が経ったかによって税金の種別が変わります。
社員死亡後3年以内に支給が確定した死亡退職金 | 相続税 |
社員死亡後3年経過後に支給が確定した死亡退職金 | 所得税 |
慶弔金と死亡退職金の両方を受け取った場合
社員本人が亡くなり弔慰金と死亡退職金が同時に会社から支給された場合には、弔慰金と死亡退職金を分けて計算します。
弔慰金 | 社会通念上相当とされる額を超えない範囲は課税されない |
死亡退職金 | 相続税もしくは所得税が課税される |
相続税の計算は死亡退職金だけでなくすべての財産が相続税の課税対象になるため、死亡退職金をもらっても直ちに課税されるわけではありません。
しかし故人の総財産額によっては納税支払額が上がってしまうため、すべてを一緒に計算せず、きちんと振り分けましょう。
まとめ
今回は慶弔金の課税ルールについて解説しました。
お祝いごとでも、例えお悔やみごとであっても、勤めている会社から慶弔金を頂くと嬉しくもありがたいものです。
税金についてもきちんと理解しておき、ありがたく会社のご好意を受け取りましょう。
慶弔金は人生の節目の折に、働いている方がもらえる大変ありがたい制度です。この機会に自分の勤めている会社の慶弔金規定を確認し、福利厚生のありがたみを理解しましょう。
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