- 生前贈与(生前相続)とは自分が生きているうちに財産を無償であげる行為
- 年間110万円以内の贈与は非課税(暦年贈与)
- 暦年贈与のやり方と注意点を解説
生前贈与は、自分の死後にできるだけ多くの財産を家族に譲り渡すために有効な相続対策のひとつです。
しかしやり方を間違えると、せっかくの生前贈与も無意味な行動になってしまう可能性があります。
今回は上手な生前贈与のやり方を解説します。適切な生前贈与のやり方をしっかり学んで、自分の死後に「こんな筈じゃなかった」と後悔しないように対策しましょう。
目次
生前贈与(生前相続)とは

生前贈与とは、自分が生きているうちに自分の財産を第三者に無償で譲り渡す行為です。相続対策の一環になるため、生前相続とも呼ばれています。
贈与先は家族や親族に限らず、親しい友人や知人、あるいは法人や団体でも生前贈与が可能です。
自分が好きな相手に、好きなタイミングで贈与できる点が生前贈与の特徴です。単に相続税を節約するためだけでなく、特定の誰かに自分の財産をあげたい、または法定相続人となる予定の家族に財産を渡したくないといった場合にも有効な手段です。
生前贈与については以下の記事でも解説していますので、本記事とあわせて参考にしてください。
贈与された側は原則的に申告が必要
日本の法律では、贈与により財産を得た人は国に申告し、贈与額に応じた税金(贈与税)を納付しなければいけない決まりになっています。これは富の集中を防ぎ、社会の公平性を保つためです。
申告と納税は、贈与された翌年の確定申告で行います。仕事をしておらず収入がない年金受給者であっても、一定額以上の贈与を受けたら確定申告をしなければいけません。
最近ではスマホで簡単に確定申告ができるようになりました。以下の記事は医療費控除の申告のやり方について解説していますが、スマホで確定申告をするやり方についても説明していますので是非参考にしてください。
生前贈与は年間110万円まで非課税になる

贈与を受けた側は確定申告が必要とは言っても、ちょっとしたお小遣い程度の金額をもらっただけで確定申告をしなければならなくなったら社会が混乱します。
そのため贈与税には年間110万円の基礎控除が設けられており、基礎控除の範囲内の贈与であれば非課税としています。
これを暦年贈与と言います。暦年贈与を上手に活用すれば、申告や納税の負担なしに生前贈与ができます。
110万円は贈与者でなく受贈者に関係する
よく勘違いされがちですが、贈与税は贈与者(あげる人)ではなく受贈者(もらう人)が支払う税金です。年間110万円の基礎控除額も受贈者がもらった金額に関係します。
逆に言えば、贈与者(あげる人)はいくら生前贈与しても問題ないということです。たとえば配偶者と子ども3人にそれぞれ110万円ずつ、年間440万円を生前贈与しても税金はいっさいかかりません。
生前贈与(暦年贈与)のやり方

生前贈与は非常に有効な相続対策ですが、それだけに税務署が目を光らせるポイントでもあります。
贈与額が年間110万円以内に収められているか、相続税逃れのために生前贈与したフリをしていないかが細かくチェックされ、不適切なやり方で行われた贈与は暦年贈与の対象から除外されてしまうのです。
そこで、以下からは適切な生前贈与(暦年贈与)のやり方を説明します。生前贈与を検討する人は以下3つを怠らず、適切な生前贈与をしてください。
1.贈与契約書を作成する
贈与するときには贈与者と受贈者が「贈与契約書」を取り交わしてください。贈与契約書がなくても贈与自体は成立しますが、後年の税務調査の際に年間110万円以内の範囲で贈与が行われた事実を証明する書類になります。
贈与契約書の書き方については後述します。
2.銀行振込により送金する
生前贈与するお金は手渡しではなく、銀行振込の方が適切です。手渡しによる贈与だと贈与額の証明ができないため、年間110万円以内の金額を生前贈与した客観的な証拠を残しておいた方が良いでしょう。
3.受贈者が口座を管理する
贈与者がお金を振込する先は、受贈者名義の預金口座です。なおかつその預金口座は、受贈者自身が通帳や印鑑を管理し、受贈者が必要に応じて自由に預金を引き出せる口座にする必要があります。
よく親や祖父母が子・孫の名義で預金通帳を作り、子または孫に内緒で貯金しているケースが見受けられますが、この場合は名義が誰であっても口座管理者の「名義預金」と見なされます。
《名義預金とは》
銀行口座の名義と、その口座の資金源が異なる預金のこと
名義預金は相続財産の一部に含まれるため、生前贈与の意味がなくなります。
贈与契約書の書き方(サンプル)

贈与契約書に記載する内容は以下のとおりです。
- 贈与者(誰が贈与するか)
- 受贈者(誰に贈与するか)
- 贈与額(いくら贈与するか)
- 贈与日(いつ贈与するか)
- 贈与手段(どうやって贈与するか)
- 契約締結日
以下は贈与契約書のサンプルです。文章をコピー&ペーストすればパソコンで贈与契約書が作成できますが、署名欄は空欄のままとし手書きで署名捺印してください。
贈 与 契 約 書
贈与者○○(以下「甲」という)と受贈者○○(以下「乙」という)は次のとおり贈与契約を締結した。
第1条
甲は乙に対し金○○○円を贈与し、乙は受領を承諾した。
第2条
甲は第1条で定めた金額を○月○日までに以下の銀行口座へ振り込むものとする。
○○銀行 ○○支店(普) 口座番号○○○○○ 名義人○○ ○○
本契約締結の証として本書2通を作成し、甲乙署名捺印のうえ各1通を保管する。
令和○○年○○月○○日
甲 住所
氏名 印
乙 住所
氏名 印
生前贈与(暦年贈与)の注意点

上手に生前贈与をするためには、上記で説明した以外にも注意すべきポイントがいくつかあります。
以下からは生前贈与を行うときの注意点を4つ説明します。
1.毎年同じ日に贈与しない
毎年の贈与日をお正月や誕生日などの記念日に決めてはいけません。なぜなら毎年同じ日に贈与すると、税務署から「定期贈与」と見なされるリスクがあるからです。
定期贈与とは、あらかじめ贈与額と期間を定めて分割して支払う贈与のことです。たとえば10年かけて総額1,000万円を贈与する約束を交わし、10年かけて100万ずつ渡した場合には総額1,000万円の贈与として判断されます。
定期贈与と見なされないよう、贈与する日や月をずらして不定期な贈与契約を結びましょう。
2.毎年同じ金額を贈与しない
上記で説明した贈与日と同じく、贈与額も毎年少しずつ変更しましょう。変更の理由はやはり定期贈与と見なされるリスクを避けるためです。
3.贈与額が計110万円を超えたら申告する
前に説明したとおり、贈与税は受贈者が支払う税金です。そのため気を付けなければいけない点は、複数名から贈与を受けたことにより年間の合計金額が110万円以上になってしまう可能性があることです。
親から暦年贈与で100万円贈与された
+ 結婚祝いとして父方の祖父母から10万円贈与された
+ 結婚祝いとして母方の祖父母から10万円贈与された
=合計120万円となり贈与税が発生!
このような場合は下手に隠し立てせず、正直に120万円の贈与を受けたと申告してください。基礎控除分の110万円を差し引けば贈与税がかかる分は10万円なので、最低税率10%で計算した1万円だけ納税すればすみます。
少額の納税を惜しんだために暦年贈与まで認められなくなっては本末転倒です。申告・納税の必要があるときにはきちんと手続きしましょう。
4.死去7年以内の贈与は相続財産に加算
2024年の税制改正により、生前相続加算(相続の持ち戻し期間)が3年から7年に延長されました。
生前相続加算とは、被相続人(亡くなった人)が死去直前に行った生前贈与は相続財産に含まれるという制度です。法定相続人が暦年贈与により年間110万円をもらっていたとしても、7年分の合計770万円は贈与ではなく相続によって得たと判断され、相続税の対象になります。
2026年現在は移行措置として4~7年分の贈与に100万円の控除が認められていますが、段階的に控除額は減り、2031年以降の相続からは一切の控除はありません。
生前贈与を考えている人はできるだけ早めの検討をおすすめします。
まとめ

今回は年間110万円まで非課税になる生前贈与(暦年贈与)のやり方について解説しました。
納税は国民の義務ですが、誰しも無駄な税金は払いたくありません。暦年贈与を上手に活用し、自分の大切な財産を大切な相手に、少しでも多く渡してあげましょう。
ライター紹介 | 杉田 Sugita終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。
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