- 遺族年金とは故人の代わりに遺族が受け取れる公的年金
- 遺族年金には基礎年金と厚生年金の2種類がある
- 遺族年金の受給期限は年金種類と故人との関係性により変わる
- 遺族年金申請の手続きや注意点を解説
一家の大黒柱が亡くなったときには、配偶者や子など故人の収入が生活資金の頼りだった遺族には国から遺族年金が支給されます。
家計の担い手がいなくなっても生活の保障が受けられるありがたい制度ですので、活用している方も多いでしょう。
しかしその遺族年金は、支給開始後いったいいつまでもらえるのでしょうか。
今回は遺族年金がいつまでもらえるのかの受給期限や手続き方法、遺族年金をもらうときの注意点について解説します。
目次
遺族年金とは
まずは遺族年金そのものについて改めて理解しましょう。
遺族年金とは、国民年金や厚生年金の被保険者が死亡した後に遺族が受け取れる公的年金のことです。
遺族年金は、すべての遺族がもらえるわけではありません。受給対象になる遺族は、年金保険加入者の収入によって生活を維持していた配偶者および扶養親族です。
また故人と遺族のいずれに対しても、保険加入年月や年齢により支給要件・受給要件があります。
遺族年金については以下の記事でも詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
遺族年金とは|万が一の際はいくらもらえるかを解説遺族年金の種類とは
遺族年金の種類は、故人がどの年金保険に加入していたかにより2つに分けられます。
遺族年金がいつまでもらえるかは年金保険の種類により変わってくるため、いつまでもらえるかを確認する前に知っておきましょう。
遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金保険に加入していた方の遺族がもらえる遺族年金です。
自営業者や、社会保険に加入せずに働いていた会社員などの遺族が申請できます。
遺族厚生年金
遺族厚生年金とは、厚生年金保険に加入していた方の遺族がもらえる遺族年金です。
遺族厚生年金は遺族基礎年金にプラスして支給されます。遺族厚生年金を単体で受給することはありません。
遺族年金はいつまでもらえるか
それでは、いま遺族年金をもらっている方は、いつまで年金をもらい続けることができるのでしょうか。
遺族年金の受給期限は年金保険の種類だけでなく、故人との関係性によっても異なります。
以下からは故人との関係ごとに、遺族年金の受給期限を説明します。
妻がもらえる遺族年金の受給期限
故人とパートナー関係を結んでいた女性、つまり妻がもらえる遺族年金の受給期限は以下のとおりです。
なお、ここで指す「妻」とは、法律上の配偶者だけでなく事実婚のパートナーも含めます。
事実婚パートナーは遺族年金の受給以外に遺産相続も可能です。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
内縁の妻でも相続できる|事実婚の相手とその子どもが遺産を受け取る方法遺族基礎年金
遺族基礎年金を妻がもらう場合には、18歳以下の未婚の子供がいることが条件となります。
その場合でも受給対象者は妻か子のどちらかになりますので、実質的には妻だけがもらえる遺族年金はありません。
遺族厚生年金
妻がもらう遺族年金が遺族厚生年金である場合には、妻の年齢や期間に関係なく、受給要件を満たす限りいつまででももらい続けられます。
夫がもらえる遺族年金の受給期限
近年では男性よりも女性の収入の方が高い世帯もめずらしくはありませんが、年金制度ではまだ「夫が大黒柱」の認識が残っているため、遺族年金についても男女差が見受けられます。
遺族基礎年金
遺族基礎年金に関しては妻と夫の違いはありません。子供の有無と年齢により支給が決定します。
遺族厚生年金
妻が亡くなった場合に夫が遺族厚生年金を受け取れる条件は、妻の死亡時に夫が55歳以上であることです。夫の年齢が54歳以下の場合は遺族厚生年金がもらえません。
妻の死亡時に夫が55歳以上であっても、実際に遺族厚生年金を受け取れるのは夫が60歳になってからです。受給が開始した後は妻と同様、いつまででも受け取れます。
子がもらえる遺族年金の受給期限
子供がもらえる遺族年金の受給期限は以下のとおりです。
なお、子供が配偶者の連れ子であるなど、故人の実子でない場合には故人と生前に養子縁組をしていたことが条件となります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は子供が18歳になるまで受給でき、18歳の誕生日を迎えた後の年度末(3月)で支給が停止します。
子供に2級以上の障害がある場合には、支給は20歳まで延長されます。
遺族厚生年金
受給期限は遺族基礎年金と同じく18歳の誕生日を迎えた年度末です。
遺族年金はいつからもらえるか
遺族年金が「いつまで」もらえるかは上記のとおり故人との関係性によりますが、「いつから」もらえるかについてはすべての受給者が共通です。
遺族年金の受取開始月は、年金保険加入者の死後の翌月です。申請手続きに時間がかかる関係上、実際の初回振込は申請後おおむね3~4ヶ月後になります。
遺族年金の計算式
では、遺族年金の受給対象者は毎月いくら年金がもらえるのでしょうか。
まず遺族基礎年金については、一律で受給額が決まっています。受給額は都度改訂されますので、以下 日本年金機構のWebサイトより最新の受給額を確認してください。
参考 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)日本年金機構遺族厚生年金の受給額は、故人が生前に得ていた給与等(標準報酬月額)と年金保険の加入月により、以下2つの計算式をあてはめて計算します。
- (平均標準報酬月額×7.125/1000×平成15年3月までの加入月数)+(平均標準報酬額×5.481/1000×平成15年4月以降の加入月数)=故人の年金受給額
- 故人の年金受給額×3/4=遺族年金受給額
遺族年金受給額シミュレーション
もしかしたら自分がもらうことになるかもしれない遺族年金額が気になった方も、上記の計算式を見て面倒になり、計算をあきらめてしまったかもしれません。
ざっくりとした自分の遺族年金額を知りたい方のために、簡単な遺族年金額のシミュレーションができるWebサイトをご紹介します。
保険代理業などを行う株式会社フィットンが、項目選択だけでおおまかな遺族年金額がわかる簡易的なシミュレーションを提供しています。
参考 遺族年金受給額シミュレーション株式会社フィットン上記サイトによるシミュレーション結果を参考に、詳細かつ最新の遺族年金額を知りたい人は先ほどの計算式でお確かめください。
働きながらでも遺族年金はもらえる
遺族年金には年齢以外にも受給要件があり、一定額以上の収入を得ている遺族は遺族年金がもらえませんが、一度支給決定された後に遺族の収入が増えても支給が停止されることはありません。
遺族年金だけでは経済的に不安な方は、支給開始後も働いて収入を増やすことをおすすめします。
資格等があると50代以降でも仕事が見つけやすくなります。50代の女性におすすめの資格については以下の記事を参考にしてください。
50代女性におすすめの資格7選|定年のない仕事ならいつまでも輝ける遺族年金をもらうための手続き
遺族年金を申請する方は、年金請求書と必要書類を持参して以下窓口で申請します。
申請する遺族年金 | 申請先 |
遺族基礎年金 | 故人の住所を管轄する市区町村役場 |
遺族基礎年金+遺族厚生年金 | 年金事務所もしくは年金相談センター |
申請後2ヶ月程度(目安50日)で遺族年金の年金証書が自宅に郵送されます。
年金証書を受け取った1~2ヶ月後に初回の振込が行われ、その後は2ケ月ごとに遺族年金が受給できます。
必要書類
遺族年金を申請する際に必要となる書類は以下のとおりです。
状況によって年金証書や扶養確認書類などを別途求められる場合があります。
- 年金請求書
- 年金手帳
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票の写し
- 死亡者の住民票の除票
- 申請者の収入が確認できる書類
- 子の収入が確認できる書類
- 死亡届の記載事項証明書
遺族年金をもらうときの注意点
遺族年金を申請する方やすでに支給が開始している方は、遺族年金をもらうときは以下の点にご注意ください。
遺族基礎年金と自分の年金は同時にもらえない
原則として、ひとりがもらえる年金は1種類です。
遺族基礎年金を受給している方は、自分が受給対象者になっても自分自身の老齢基礎年金はもらえません。
ただし遺族厚生年金と基礎年金は別物として扱われるため、遺族厚生年金に関しては自分の基礎年金と同時に受給できます。その場合の基礎年金は、遺族基礎年金と老齢基礎年金のどちらかを選択することになります。
権利発生後5年以内に申請しないと失効する
遺族年金をもらえる権利は、発生から5年を経過すると失効します。
つまり故人の死後5年以内に申請手続きが必要です。遺産で生活に余裕があり、遺族年金は資産が不足してからで良いと思っている方は、その間に権利が失効してしまうかもしれませんので気を付けましょう。
なお、やむを得ない事情により5年以内に遺族年金の申請ができなかった場合には、書面で理由を申し立てれば失効を防げる可能性があります。遺族年金の申請先で相談してください。
再婚した妻・夫は遺族年金の受給資格が終了
故人とパートナー関係にあった妻もしくは夫は、いったん受給が認められればいつまでも遺族年金を受け取ることができますが、遺族の妻もしくは夫が再婚したときには遺族年金の受給資格がなくなります。
この場合の「再婚」は内縁関係も含みます。また、再婚相手の収入もいっさい関係しません。
また未婚の子供がもらっている遺族年金も、子が結婚すると終了します。
結婚はおめでたいことではありますが、遺族年金が大きな生活の糧となっている方は再婚または結婚を慎重にご検討ください。
その他、パートナーと死別後に熟年再婚をする方のメリット・デメリットについては以下の記事も参考になります。
熟年再婚のメリット・デメリット|幸せになるためのチェック項目まとめ
今回は遺族年金がいつまでもらえるか、受給期限や受給額を中心に解説しました。
パートナーや家族の死は、悲しいだけでなく経済的にも大きな打撃を与える可能性があります。遺族年金をもらえる日が1日でも遅くなることを願いながら、いつか来るかもしれない事態に備えましょう。
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