- 家族じまいとは家族と絶縁して交流を終了させること
- 家族じまいの理由は親子・兄弟姉妹・夫婦関係のこじれ
- 法的な家族じまいはできない
- 家族じまいをした方を守る法律はある
- 家族じまいの後の相続や家族の面倒も考慮しておくこと
桜木紫乃さんが2020年に出版した小説「家族じまい」がベストセラーとなり、2021年にはNHKオーディオドラマにもなりました。
小説を読んだ読者からは、登場人物への共感とともに、自分も家族じまいがしたいとの声が多く挙がっています。
はたして家族じまいとは何でしょうか。家族と縁を切る「家族じまい」はどうしたらできるのでしょうか。
今回は家族じまいについて解説します。
目次
家族じまいとは
本記事では「家族じまい」を、家族と絶縁して交流を終了させることと定義します。
小説「家族じまい」ではタイトルに“絶縁”ではなく“片付ける(しまう)”との意味を込めたと作者の桜木紫乃さんは語っていますが、そもそも家族じまいを考えたい方は、家族と何らかのトラブルや不仲の原因が発生している方だと考えられます。
毒親やモラハラ・DV配偶者などから逃げて安心できる生活を送りたい方の意向も含めて、本記事では「家族じまい」を完全な絶縁と見なすことをご了承ください。
家族解散とも呼ばれる
「家族じまい」は「家族解散」とも呼ばれています。
お笑い芸人の麒麟 田村裕さんが執筆した「ホームレス中学生」では、会社をリストラされた父親が以下のセリフで家族の解散を言い渡しました。
「厳しいとは思いますが、これからは各々頑張って生きてください。…………解散!」
引用:田村裕|ホームレス中学生
大人の都合で子供に苦労を強いることは絶対に避けなければいけませんが、ときと場合によっては家族じまいや家族解散を選択しなければいけないケースも存在します。
家族じまいを選択する理由
家族じまいをしたいと思う理由や、実際に家族じまいを選択する理由は人によりさまざまです。
例を挙げれば以下のような状況のときに、家族じまいが行われると考えられます。
親子関係のこじれ
幼少期から虐待を受けていた方の場合、成人してから長い時間が経った後になってから、昔に受けた仕打ちを思い出して絶縁しようと考え始める方がいます。
その多くは親の介護問題がきっかけになる方が多いようです。かつて自分に十分な愛情をそそいでくれなかった親が、年をとってから子供に介護の労力や費用を要求してきたときに、過去の恨みが再熱して「家族じまい」を検討するのです。
兄弟姉妹関係のこじれ
兄弟姉妹の間で起こり得るトラブルは、例えば以下のようなものが挙げられます。
- 幼少期からの兄弟姉妹ごとの格差
- 兄弟姉妹に貸した(借りた)お金のトラブル
- 兄弟姉妹の配偶者が関係するトラブル
- 親の介護問題
- 親の遺産相続
兄弟姉妹間の遺産相続のトラブルについては、以下の記事でも詳しく説明しています。
遺産相続は兄弟間で揉めやすい!分割方法の決め方&トラブル事例と解決方法夫婦関係のこじれ
夫婦の気持ちが離れて結婚生活を解消しようとする理由は、どちらかの浮気、義家族との不仲、金銭トラブルなどのいろいろな理由が思いつくでしょう。
結婚しているご夫婦が婚姻関係を解消するには離婚という選択肢がとれますが、夫婦の間に子供や孫がいるときには、単に離婚届を提出するだけでは家族じまいとまではなりません。
配偶者とともに子供との縁まで断ち切る決断をしなければいけなくなる可能性もあります。
また、配偶者が死去したとしても法律上は夫婦のままです。亡くなった配偶者親族親族との縁を解消して義理の家族関係をおしまいにしたい方ができる策については後述します。
家族じまいの方法
「家族じまい」は造語・俗称であり、法的に家族じまいをする方法はありません。つまり家族じまいをしたと相手や周囲に宣言したとしても、その宣言は法律上の効力がいっさい認められないことになります。
ですが、家族じまいの決断をした方が行える対策の中には、その方を法的に守ってくれる制度も存在しています。家族じまいによるトラブルを避けるため、また自分の気持ちをすっきりさせるために必要と思われるそれぞれの対策を実行してください。
絶縁状
絶縁状は関係を絶ちたい相手に対して、その意思を伝えるための書状です。
法的な効力はいっさいありませんが、家族じまいをする相手にはっきりと自分の意思を伝えることができるため、精神的な安らぎが得られるというメリットがあります。
絶縁状に関する詳しい解説や、具体的な絶縁状の書き方については以下の記事をご覧ください。
絶縁状には法的な効力がない!家族・親族との縁を切るための方法 絶縁状の書き方|親子間・友人間・男女間に分けて解説電話・SNSブロック
家族じまいの後に家族から連絡がこないようにするためには、電話やメール・SNSなどの連絡先をブロックしてしまえば相手からの連絡に悩まされる心配はなくなります。
しかし、すべての連絡先を遮断してしまうと、かえって相手を刺激して攻撃的な行動に走られる危険性もあるため注意しましょう。
緊急用としてメールアドレスだけを伝えておくやりかたも良い手段です。無料で作れるメールアドレスをひとつ用意しておけば、相手からのメールはメインのアドレス以外で受信できるため、必要がなければメールを放置しておくことができます。
引っ越し
家族じまいをした相手と近くに住んでいる場合には、家族じまいの後でばったり出会ってしまい気まずい思いをする可能性があります。また家族じまいをする理由によっては、再会がトラブルの種になるかもしれません。
仕事上や地域コミュニティの支障がなければ、遠方に引っ越して物理的な距離を取る方法もおすすめできます。
しかし、転居先を調べてさらに家族がつきまとってくる可能性も考えられます。本来、住民票は本人もしくは同世帯の家族しか取得できませんが、委任状を偽造された場合にはなす術がありません。
住民票の閲覧制限をかければ新しい住所が知られる恐れはありませんが、住民票の閲覧制限は自治体により判断基準や手続き方法が異なります。まずは役所の窓口で「家族に危害が与えられる恐れがあるため住民票を見られなくしたい」と相談しましょう。
接近禁止命令など
配偶者からの暴力などにより家族じまいを検討している方に対しては、裁判所が保護命令を出して被害を受けた方を守る対策が打ち出されます。
参考 保護命令内閣府 男女共同参画局保護命令の内容は以下のとおりです。
- 被害者への接近禁止命令
- 被害者の子又は親族等への接近禁止命令
- 電話等禁止命令
- 退去命令
ただし、裁判所の保護命令を受けるには配偶者暴力相談支援センターや警察への相談が原則として必要になり、各命令の期間も2ヶ月あるいは6ヶ月に限定されています。
他の家族じまいの方法も検討しながら、それでも自分の身に危険が迫ったときにはためらわず行動してください。
死後離婚
配偶者の死後、義両親などの義家族と不仲だった方は、死後離婚という形で義家族との間の家族じまいが可能です。
死後離婚は姻族関係終了届という届を役所に提出して行います。姻族関係終了届を提出しても亡くなった配偶者の遺族年金や相続などには一切影響せず、それでいて義家族と完全に縁が切れるため、義家族から配偶者の死後もつきまとわれている方におすすめの方法です。
死後離婚に関する詳しい説明や、姻族関係終了届の出し方については以下の記事を参考にしてください。
死後離婚で相続はどうなる?|姻族関係終了届の出し方と提出後の影響を確認家族じまいによる相続トラブルを避けるには
家族じまいにはいっさいの法的効力がない点については、上記でお伝えしたとおりです。
家族じまいをしても法律上の関係は絶ち切れないため、家族が亡くなった後の遺産相続についても被相続人と相続人の関係がおしまいにはなりません。
しかし家族じまいをした後には相手の生活状況がわからなくなるため、相続に際してトラブルが発生するケースも考えられます。
家族じまいをした相手がその後に経済的に困窮していた場合、マイナス遺産が自分に相続されてしまうかもしれません。
「家族じまいをしたから関係ない」と突っぱねるわけにはいきませんから、マイナス遺産を相続させられる可能性が出てきた際には一刻も早く相続放棄の手続きをしましょう。
相続放棄に関する詳しい説明と相続放棄申述書の書き方は以下の記事をご覧ください。
相続放棄の方法をわかりやすく解説|期間や費用・申述手続きの流れ 相続放棄で必要な書類とは|申述書の作成ポイントと添付書類の用意の仕方家族じまいをした後の家族の面倒
家族じまいをした相手が亡くなる前でも、相手の状況により家族の面倒を引き続き見なければならない事態も起こり得ます。
相手に医療や介護が必要になったときに、施設入居や財産管理などを行うキーパーソンとしての役割を求められるかもしれません。
こちらは相続とは違い拒否することは可能ですが、いらぬトラブルを避けるためにはあらかじめ対策をとっておいた方が良いでしょう。
生活サポートや医療・介護の申請手続き、葬儀や遺品整理などを家族の代わりに請け負ってくれる団体があります。家族じまいをした後に施設入居や葬儀などの家族の面倒をみたくない方は、事前にそのような団体と契約しておくこともおすすめです。
参考 トップページ一般社団法人LMNまとめ
今回は「家族じまい」について解説しました。
家族との関係を解消する「家族じまい」は、家族と仲の良い方からすれば不幸な事態なのかもしれません。
しかし、さまざまな事情により折り合えなくなってしまった家族と交流を続けていかなくてはいけない事態は、それもまた不幸です。
家族じまいをよく検討した上で、自分にはどうしても家族じまいが必要だとの結論に至った方は、自分の幸福を追求するために必要な手段をとりましょう。
認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!