- 2019年時点では年金生活者支援給付金の推定対象者数は約970万人
- 2021年現在では年金生活者支援給付金の推定対象者数は約982万人
- 年金生活者支援給付金には支給要件がある
- 給付対象者になれる人となれない人がいる
2019年から開始された年金生活者支援給付金制度が、2021年現在で2年を経過しました。
いま日本全国で、いったい何人くらいの高齢者が年金生活者支援給付金の支給対象者になっているのでしょうか。
そして、どんな高齢者が年金生活者支援給付金を受け取る対象者になれるのでしょうか。
今回は年金生活者支援給付金の対象者について、制度の決まりと最新の統計をもとに解説します。
目次
2021年度の推定対象者数
2019年に年金生活者支援給付金制度が開始した時点では、対象者数を約970万人と見込んで平成31年度予算が組まれていました。
参考 年金生活者支援給付金の施行に向けた対応日本年金機構内訳としては老齢年金生活者支援給付金の対象者が約610万人、補足的老齢年金生活者支援給付金の対象者が約160万人、障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金の対象者が約200万人とされています。
2019年時点の高齢者人口は3,589万人でしたから、日本の高齢者のうちおよそ27%が年金生活者支援給付金の対象者になり得ると考えられていたようです。
2021年現在の実対象者数は非公開ですが、総務省の推定による2021年9月時点での高齢者人口が3,640万人と考えると、約982万人が年金生活者支援給付金の対象者になっている可能性があります。
参考 高齢者の人口総務省統計局対象者でないと給付金はもらえない
年金生活者支援給付金の対象者が全高齢者のおよそ27%だということは、つまり残りの73%は年金生活者支援給付金をもらえないということです。
年金生活者支援給付金の対象者になるには、制度が定めている支給要件を満たす必要があります。
今回は年金生活者支援給付金の支給要件について詳しく解説しますが、年金生活者支援給付金制度そのものについて概要を知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
年金受給者が受け取れる「年金生活者支援給付金」をわかりやすく解説年金生活者支援給付金の支給要件
年金生活者支援給付金の支給要件は、対象者となり得る高齢者がどの年金をもらっているかによって異なります。
- 老齢基礎年金をもらっている方
- 障害基礎年金をもらっている方
- 遺族基礎年金をもらっている方
以下からはそれぞれの支給要件を説明していきます。
参考 年金生活者支援給付金請求手続きのご案内(令和3年10月版)日本年金機構老齢基礎年金をもらっている方
老齢基礎年金をもらっている方の支給要件は以下の3つです。
- 65歳以上の老齢基礎年金の受給者である
- 同一世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得との合計額が781,200円以下である
障害基礎年金をもらっている方
障害基礎年金をもらっている方の支給要件は以下の2つです。
- 障害基礎年金の受給者である
- 前年の所得が4,721,000円以下である
障害年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の支給要件2である所得には含まれません。
遺族基礎年金をもらっている方
遺族基礎年金をもらっている方の支給要件は以下の2つです。
- 遺族基礎年金の受給者である
- 前年の所得が4,721,000円以下である
障害基礎年金の受給者と同様、遺族年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の支給要件2である所得には含まれません。
対象者の所得額算定方法
上記で説明した各年金受給者の年間所得額など、年金生活者支援給付金の支給要件を満たしているかどうかは誰がどのように算定するのでしょうか。
日本年金機構は市町村から提供を受ける所得情報により、年金生活者支援給付金の支給要件を満たしているかどうかを判定します。そのため年金受給者が年金振込通知書や課税証明書などをもって所得額等を証明する必要はありません。
なお各市区町村が所得情報を確認できない場合には、例外的に所得証明書類の提出を依頼されるケースがあります。
対象者と非対象者の逆転現象を防ぐ仕組み
年金生活者支援給付金は、支給要件である年間所得基準額を1円でも超えると対象者にはなれません。
そのため、基準額をほんの少しだけ超えている方よりも、年金生活者支援給付金の対象者の方が結果として年間所得額が増えるという逆転現象が起こります。
この逆転現象を防ぐために、年金生活者支援給付金には「補足的老齢年金生活者支援給付金」という仕組みが設けられています。
前年の公的年金等の収入とその他の所得との合計額が781,200円を超え、881,200円以下である方は補足的老齢年金生活者支援給付金の対象者となり、老齢基礎年金受給者の給付額に一定の割合を乗じた額が支給されます。
補足的老齢年金生活者支援給付金の計算方法は以下のとおりです。
給付対象者になれる人・なれない人
支給要件などを確認しても、実際に自分が年金生活者支援給付金の対象者になるのかどうかピンとこない方も多いでしょう。
以下からは年金生活者支援給付金の対象者になれる人と、対象者になれない人の例を分かりやすく説明します。
厚生年金受給者のほとんどは非対象者
老齢基礎年金は、加入している年金が国民年金でも厚生年金でも含まれている年金です。
そのため年金生活者支援給付金は、国民年金の加入者だけでなく厚生年金の加入者であっても対象者になり得ます。
しかし実際には、国民年金加入者の平均受給月額と厚生年金加入者の平均受給月額には、およそ88,000円もの差が存在します。
国民年金加入者の平均受給月額 | 56,000円 |
厚生年金加入者の平均受給月額 | 144,000円 |
平均的な厚生年金加入者は月額144,000円、つまり年間に170万円程度の年金をもらっていると考えられます。
よって老齢基礎年金受給者の年金生活者支援給付金支給要件である年間所得881,200円以下との支給要件を満たせず、ほとんどの厚生年金加入者は対象から除外されると考えられます。
生活保護受給者は対象者になれる
年間所得額が他の高齢者よりも一層低く、生活保護を受けている方でも年金生活者支援給付金は受給できます。
ただし年金生活者支援給付金を受け取ると、給付額に該当する分の生活保護費は減額されます。
年金生活者が生活保護をもらう方法については、以下の記事も参考にしてください。
年金受給者でも生活保護はもらえる|申請の流れと計算・生活の決まりを解説無年金の方は対象者になれない
どんなに年間所得が低い方であっても、無年金の場合には年金生活者支援給付金の対象者にはなれません。
それぞれの年金生活者支援給付金の支給要件にもあるとおり、年金生活者支援給付金は「年金をもらっている人」のための給付金制度です。
年金に加入してこなかった無年金の方は、当然のことながら年金生活者支援給付金の対象から除外されます。
無年金の方には、年金生活者支援給付金が受給できない以外にもさまざまなリスクがあります。無年金だったときにどのようなリスクが考えられるかについては以下の記事も参考にしてください。
無年金の老後は厳しい|将来のために今から知っておくべき年金知識まとめ
今回は年金生活者支援給付金の対象者について、支給要件や2021年の統計をもとに解説しました。
今後ますます高齢者が増加する現代において、年金生活者支援給付金の対象者も増えていくことが見込まれます。
いま65歳以下の方も、いつか高齢者になったときに安心して暮らせるよう、年金生活者支援給付金の対象者の範囲をしっかり理解しておきましょう。
認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!