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年金受給者でも生活保護はもらえる|申請の流れと計算・生活の決まりを解説

助け合う人達の手

この記事のサマリ
  • 年金受給者が生活保護を受け取ることは可能
  • 生活保護の可否は年金を含む収入や生活状況を審査し判断される
  • 生活保護の受給額は地域や年齢・世帯構成を元に計算し決定する
  • 収入など生活に変化が生じたときには都度正しく申告する義務がある

国民のセーフティーネットである生活保護は、収入が「健康で文化的な最低限度の生活」に必要な額に満たないときに利用できます。

65歳以上の高齢者は年金が受給できますが、もし年金受給額が「健康で文化的な最低限度の生活」に足りないときには、年金と生活保護のダブル受給もできるのでしょうか。

今回は年金受給者が生活保護を受給するときの流れや保護費の計算方法などについて解説します。

年金受給者でも生活保護費は受給できる

トラブルが起きた人を守るイメージ

大前提として、年金受給者が生活保護費を受け取ることは可能です。

年金であっても、給与等の他の収入であっても、得られる金銭が少なければ「健康で文化的な最低限度の生活」を送ることはできません。

そのため年金やその他収入の合算額が一定の基準を満たさない場合は、生活保護の申請を行うことができます。

生活保護の概要

生活保護の申請方法や条件・受けられる扶助の種類は、年金受給者でも他の困窮者でも変わりません。

以下の記事では生活保護の受給要件や扶助の種類などについて説明しています。

本記事とあわせてお読み頂くと、より詳しく生活保護について知ることができます。

高齢者が受けられる生活保護は6種類|受給要件・申請方法・扶助内容を解説

年金受給者が生活保護を受けるには

石段を上がる男性の足元

年金受給者が生活保護を受け取るためには、どのような手続きを踏めば良いかを確認しましょう。

生活保護の申請は以下の流れに沿って行います。

STEP.1
福祉事務所に相談
住まいを管轄する福祉事務所に相談に行きます。福祉事務所は2020年4月1日現在で全国に1,250箇所あり、その多くは市区役所や町村役場内に設置されています。
STEP.2
生活保護申請書の提出
福祉事務所に生活保護申請書および必要書類を提出します。申請書の形式は各福祉事務所ごとに異なり、申請者ごとに必要な書類も違います。初回相談の際に確認しておきましょう。
STEP.3
調査
申請書を受領した福祉事務所の担当ケースワーカーが、申請者が生活保護費を本当に必要としている状況か、家庭訪問・面談・資産調査・扶養義務者への連絡などにより調査します。申請者が年金受給者の場合には、ここで年金受給額の照合も行われます。
STEP.4
審査
調査結果をもとに福祉事務所内で生活保護の必要性を審査します。可否決定までの期間は申請後14日以内(やむを得ない事情がある場合は30日以内)と法的に定められています。
STEP.5
受給決定
審査の結果、生活保護の必要性が認められると生活保護費の支給が決定し、申請者の自宅に「保護開始決定通知書」が郵送されます。
STEP.6
生活保護費の支給
生活保護の開始後は、申請日にさかのぼって保護費が支給され、その後は月ごとに保護費が支給されます。生活保護費は基本的に登録の銀行口座に振込されますが、医療扶助や介護扶助など、直接の金銭振込を伴わない扶助もあります。

生活保護受給開始後の生活

生活保護が開始した後には、担当ケースワーカーが定期的に受給者の自宅を訪問し、生活状況のチェックや指導・指示を行います。

ケースワーカーから指導・指示を受けたときには、生活保護受給者はそれに従わなければいけません。従わない場合には生活保護費が停止される可能性があります。

ケースワーカーの指導指示の例

画像引用:奈良市|生活保護のしおり(保護受給者用)

また申告外の収入を得たとき、世帯状況に変化があったとき、病院にかかったときや介護サービスを受けようとするときなど、申請者の生活に何らかの変化があったときには常に相談や報告をする義務があります。

生活保護費はいくらもらえるか

生活保護がいくらもらえるかは、自分が「健康で文化的な最低限度の生活」を営むためには、いくら必要なのかを割り出す必要があります。

世帯人数や住んでいる地域によって必要と考えわれる最低生活費を計算し、年金受給者の場合には算出された最低生活費から年金受給額を差し引いた金額が生活保護費として支給されます。

生活保護費の支給イメージ

画像引用:厚生労働省|生活保護制度

自分の年金受給予定額を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

pension 年金額の平均はいくら?厚生年金と国民年金、年金を増やす方法も解説

【最低生活費の計算方法(年金受給年者の例)】

(生活扶助基準第1類+第2類-逓減率)+住宅扶助基準+介護扶助基準+医療扶助基準

※生活扶助基準第1類:地域や年齢から推測される飲食費・被服費など

※生活扶助基準第2類:世帯から推測される光熱費・家具費など

※逓減率:同世帯の共有分清算

参考 生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和3年4月)厚生労働省

生活保護費の計算方法は大変複雑なため、簡単に調べたい方は地域と年齢・世帯構成を元に簡易的な生活保護費の計算ができる「生活保護の自動計算サイト」などを利用して目安金額を調べてみる方法もおすすめします。

生活保護受給中の年金受給者ができること

芝生の上で寄り添う外国人老夫婦

ここからは具体的に、年金受給者が生活保護を受けているときには何ができるのか、また逆に何ができなくなるのかをひとつひとつ確認していきましょう。

まず生活保護を受給中の年金受給者には、以下のようなことが認められています。

持ち家の維持(条件付)

生活保護を受ける前には保有資産の売却等処分をしなければいけませんが、住宅ローンを既に完済していて、資産価値がさほど高くない自宅不動産であれば維持が認められます。

なお住宅ローンを返済中の不動産は維持が認められません。生活保護を受ける前に処分して負債を清算する必要があります。

新聞の購読

生活保護を受けている方が新聞を定期購読して、社会情勢や世の中の動きを知ることには制限が設けられてはいませんので、大丈夫です。

パソコン・スマホの所有

ノートパソコンを眺める外国人男性

新聞購読と同じように、パソコンやスマートフォンを所有してインターネットを利用することも認められています。

また現代では、携帯やスマートフォンはぜいたく品ではなく、生活保護受給者が第三者と連絡を取り合うためにも必要なライフラインだと見なされています。

テレビの視聴

テレビを所有することも認められています。なお生活保護受給世帯はNHK受信料が全額免除になります。

参考 放送受信料の免除についてNHKオンライン

3親等内の葬儀の参列

生活保護の受給者と親しい関係にあった故人の葬儀への参列は、もちろん制限されていません。

それだけでなく、故人が生活保護受給者の3親等以内の親族だった場合には、葬祭扶助とは別に移動の交通費が支給されます。

また、3親等以内の親族が危篤状態のときに駆けつけるための交通費も支給されます。

生活保護受給中の年金受給者ができないこと

指差しチェックする女性

今度は、年金受給者が生活保護を受けるとどんなことができなくなるのかを見ていきましょう。

生活保護を受給中の年金受給者は、以下のような生活の仕方は認められていません。

自動車の所有

自動車の所有は原則として認められていません。

ただし生活保護受給者の住んでいる地域が公共交通機関の発達していない地域であり、日常生活を送るためには自動車の所有が必須と考えられる場合には、例外として認められるケースがあります。

過度な飲酒・喫煙

飲酒や喫煙が制限されているわけではありませんが、過度な飲酒や喫煙はケースワーカーからの指導が入る可能性があります。

福祉事務所の担当ケースワーカーは生活保護受給者の生活全般を指導する義務があるため、飲酒や喫煙による健康被害や、生活が乱れて就労の努力を怠る危険性はできるだけ排除しなければいけません。

クレジットカードの所有

クレジットカード

クレジットカードを持つためには契約者の「安定した収入」が必要になりますが、国の援助である生活保護費は安定した収入とは見なされません。

生活保護の申請以前に所有していたクレジットカードも、保護開始前に解約が求められます。

海外旅行および海外移住

冠婚葬祭など相応の理由がある場合を除き、海外旅行は「収入が余っているから」行ける旅行だと判断されます。そのため海外旅行費分が収入として見なされ、生活保護費が減額される可能性があります。

また生活保護制度は日本国内に居住している日本人および在留外国人が対象となるため、生活保護受給者が海外に移住したときには、生活保護は停止されます。

パチンコ等ギャンブル

パチンコ・競馬・競輪などのギャンブルを楽しむこと自体には制限は設けられていませんが、ギャンブルで儲けた利益は収入と見なしますので、得た利益分は生活保護費より差し引かれます。

またギャンブルで損をして月の生活費がなくなっても、もちろん追加支給はありません。結果として、生活保護受給者がギャンブルをしてもまったく益がないことになります。

生活保護の不正受給は違法

レッドカードを持ち「NO」と言う人の手

これから生活保護を受けようと考えている方に、あらためて申し上げます。

生活保護の不正受給は違法です。年金以外の収入や保有資産を申告しなかったり、本当は就労できるにもかかわらず、生活保護費を当てにして就労の努力をしなかった場合には、不正受給と見なされます。

また生活保護の開始後、世帯人員や収入状況などが変わって生活保護費が必要なくなったとしても受給を続けている場合にも不正受給となります。

不正受給が確認された場合には生活保護費の返還が求められ、必要に応じて指導もしくは生活保護の停廃止、特に悪質な不正受給に対しては告訴等の措置が行われます。

参考 生活保護の適正実施の推進について(不正受給事件の裁判判決)足立区

生活保護の申請時には必ず正しい申告を行い、受給開始後も状況の変化に応じた適切な申告をしましょう。

まとめ

今回は年金受給者が生活保護を受けるときの申請の流れや、生活保護受給中にできること・できないことについて解説しました。

生活保護の申請は国民の権利です。年金をもらっていても生活に困窮する場合には、ためらわずに福祉事務所に相談しましょう。

ライター紹介 | 杉田 Sugita
認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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