- 弔慰金は従業員やその家族が亡くなった場合に会社から支払うお金
- 業務内の死亡か業務外の死亡かで非課税限度額が変わる
- 導入することで人材採用にもメリットがある
- 導入に際しては規定を作成することが必要
会社の従業員やその家族が亡くなった場合に、遺族に支給する福利厚生制度が「弔慰金」です。弔慰金の支給は義務ではないため、中には導入していない企業もあるでしょう。
ただ、福利厚生としても有効な制度のため、人材確保の観点からも導入を検討したいところです。
今回は会社の視点で、弔慰金の相場や支給限度額について解説します。
目次
弔慰金とは
弔慰金は、会社員や公務員などが亡くなった場合に所属する組織や企業から遺族に対して渡されるお金のことです。
社員本人だけでなく、社員の家族が亡くなった場合にも弔慰金を支払う企業もあります。
弔慰金そのものの基本知識については以下の記事で詳しく紹介しているので、併せてお読みください。
遺族へ支給される「弔慰金」とは|税制や死亡退職金との違いを解説死亡退職金との違い
社員の死亡によって会社が支払うお金としては弔慰金のほかにも「死亡退職金」があります。
両者を比較した場合、まずお金の意味合いとして以下のような違いがあります。
- 弔慰金:個人の功労に対するお金
- 死亡退職金:遺族の生活保障
それ以上に大きな違いが、「非課税限度額」です。2つの制度では、以下のように非課税限度額が異なります。
- 弔慰金の非課税枠:非課税限度額を超えるまでは非課税
- 死亡退職金の非課税枠:500万円×法定相続人の数
弔慰金の非課税限度額については、後ほど詳しく紹介します。
会社の業務での死亡かどうかで弔慰金の非課税額が異なる
弔慰金の制度は、あくまで会社の判断によって導入されるものです。
会社ごとに支給される金額は異なるため、一概に「支給額は〇円」と決まった支給金額は存在しません。
ただし、相続税法で定められた非課税限度額を超えると課税対象になります。支給金額は、非課税の金額以下になるように配慮されることがほとんどです。
- 業務内での死亡:死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
- 業務外での死亡:死亡当時の普通給与の半年分に相当する額
会社が弔慰金を用意するメリット
弔慰金制度を導入することで従業員に大きなメリットがありますが、会社にとっても見逃せないメリットがあります。
弔慰金を導入するメリットとして、以下の2つを紹介します。
- 一定の慶弔金は非課税
- 人材採用に効果がある
一定の慶弔金は非課税
弔慰金をはじめとした「慶弔金」は一定の範囲内で福利厚生費として認められ、基本的に非課税の扱いになります。
支給額が社会通念上相当であると認められれば非課税、ということです。
上手に制度を導入することで企業の負担を節税で減らしつつ、従業員のやる気に直結させることができます。
人材採用に効果がある
人材難と言われている現代、有能な社員の確保は会社としても命題です。この際に重要になるのは福利厚生の充実度です。
慶弔見舞金など福利厚生の充実は企業のイメージの向上につながり、採用活動にも直結します。
福利厚生が充実するのが良い影響を与えるのは、社員を大切にしているというイメージができるためです。
新卒でも転職組でも、給与が同じであれば少しでも福利厚生が充実したところを狙います。充実した福利厚生によって数多くの希望者が集まることで、有能な人材を選択できる可能性が高まります。
弔慰金を用意するための準備
弔慰金の制度を導入するといっても、いきなり始めることはできません。
ここでは弔慰金を導入するための準備の内容を紹介します。
弔慰金に関する規定を用意する
弔慰金の制を作る際には、社内で弔慰金に関する規定を整備することが大切です。
企業として支払える限度額の目安はすでに紹介した通りですが、その金額を絶対に支払うということではありません。
自社の規定に見合う金額を間違いなく支払うことが大切です。
逆にもし規定がない場合、従業員とのあいだで行き違いが発生する可能性もあります。誤解を生まないためにも、条件が網羅された既定の作成は必須です。
内部規定の作成にあたっては、以下のような流れで進めましょう。
- 支給対象者を決める
- 弔慰金の金額を決める
- 手続きや必要書類を定める
金額に関しては非課税額を参考に、課税対象にならない金額を決定します。また、業務外と業務内で会社の責任が異なるため、金額に差をつけるパターンが一般的です。
ただし、勤続年数や役職で支給額に差を設けることは避けましょう。従業員のモチベーションダウンの原因になるのでおすすめはできません。
弔慰金を用意するための保険に加入する
弔慰金は支払金額が高額になるので、規定の内容に合った生命保険に加入するのが一般的です。保険金を活用することで、いざという時の現金を用意しておくことができます。
たとえば「総合福祉団体定期保険」です。
役員や従業員が死亡または所定の高度障害状態になった場合、企業が定める規定にもとづいて保険金が支払われます。
法人にとっては福利厚生制度の支給財源を効果的に準備でき、福利厚生の充実によって役員・従業員の勤労意欲の向上につながります。
弔慰金に関して会社が知っておくべきマナー
最後に慶弔金を渡すにあたって会社側が知っておきたいマナーについても、簡単に解説します。
葬儀の「後」に渡す
弔慰金を渡すタイミングは、香典と違い葬儀の「後」になります。
従業員が亡くなった場合は従業員の自宅に行き、遺族に弔慰金を渡します。
もし従業員の家族が亡くなった場合、社員が会社に出勤したときに弔慰金を渡します。
現金をそのまま渡す方法のほか、金額が多い場合は空の封筒に「目録」と記載して別途振込みの対応にすることも可能です。
お札の入れ方にもマナーがある
弔慰金を手渡しで渡す場合、お札の向きに注意しましょう。
まず、お札を裏向きの状態で入れることがマナーです。
お札の肖像側が伏せられた状態にすることで、個人へのお悔やみの気持ちを表しています。
さらに上下の向きにも気を配りましょう。お札の「壱萬円」と書かれた部分が上にくるようにすることが中袋を使う時のマナーです。
慶弔金とは何か|6種類の慶弔金の相場と非課税限度額・申請の仕方まとめ
今回は企業の視点で、弔慰金の相場や支給限度額について解説しました。
弔慰金は業務内の死亡か業務外の死亡かで非課税限度額が変わるため、非課税の範囲内で金額を設定することが一般的です。
そのほか、従業員のモチベーションダウンにつながらないよう、役職や勤続年数で金額に差をつけるのは避けましょう。
上手に制度を導入し、福利厚生を充実させれば人材確保にもつながります。
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