故人の財産は相続人が受け継ぐことになりますが、必ず受け継ぐとは限りません。
場合によっては「相続放棄」の手続きを経て相続から外れることができます。
相続放棄を実現するためには書類の提出が必要であり、ルールに沿った書き方で作成することが求められます。
手続きに失敗しないためにも、相続放棄に関する書類の書き方や手続きをしっかり把握しておきましょう。
目次
相続放棄申述書とは
相続放棄を実現するためには「相続開始を知ってから3カ月以内」に家庭裁判所に相続放棄申述書を提出する必要があります。
書類の提出を受けて家庭裁判所で行われる審査の結果、認められるという流れです。
書類がもらえる場所
相続放棄申述書は家庭裁判所が指定する様式を満たす必要があり、記入用の書類は裁判所のホームページからダウンロードできます。
以下のリンクから「家事審判の申立書」の「相続に関する審判の申立書」にアクセスしましょう。
参考 家事裁判の申立書裁判所必要書類
手続きの際は他の必要書類も同封して提出します。
全ての申述人に共通して必要になる書類は以下のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 申述人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍付票
- 収入印紙(800円)
- 相続放棄申述受理通知書返送用切手(400円から500円程度)※詳細な金額は各家庭裁判所にて確認要
申述人によって、上記の書類に加えて必要書類が追加される場合があります。
相続放棄を申述する場合は自分より上の順位の相続人の死亡を証明することが必須になり、相続順位が下がるごとに必要書類が増えていきます。
申述人 | 追加で必要になる書類 |
被相続人の配偶者 | 被相続人の死亡が記載された戸籍謄本 |
被相続人の孫 | ・被相続人の死亡が記載された戸籍謄本 ・被相続人の子(被代襲者)の死亡が記載された戸籍謄本 |
被相続人の父母・祖父母 | ・被相続人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本 ・被相続人の子・孫が死亡している場合は子・孫の出生から死亡までの全ての戸籍謄本 ・(祖父母の場合)被相続人の父母が死亡している場合は父母の死亡記載のある戸籍謄本 |
被相続人の兄弟姉妹・甥姪 | ・被相続人の出生~死亡までの全ての戸籍謄本 ・被相続人の父母または祖父母の死亡が記載された戸籍謄本 ・被相続人の子、孫またはひ孫が死亡している場合は子、孫またはひ孫の出生から死亡までの全ての戸籍謄本 ・(甥姪の場合)被相続人の兄弟姉妹の死亡が記載された戸籍謄本 |
相続放棄申述所の提出の流れ
相続放棄は、以下のような手順を経て実現します。
相続放棄申述書を提出する
相続放棄申述書を提出する際は、被相続人が最期に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所に提出します。
相続人であるご自身の住所を管轄する家庭裁判所に送らないように注意してください。
家庭裁判所からの照会書に回答
相続放棄を認めてもらうためには家庭裁判所から届く「相続放棄の照会書」を確認し、「回答書」を作成して送付し直すことが必要です。
回答書に記載する主な内容は以下のとおりです。
- 被相続人の死亡を知った日
- 放棄する意思は変わらないか?
- 把握している相続財産の内容
- 生前の被相続人とのかかわり
- 放棄することで相続権がなくなることを分かっているか?
- 放棄が自分の真意にもとづくかどうか など
特に気を付けるべきは「被相続人の死亡を知った日」です。
「死亡を知った日」が死亡日とずれている場合、「関係が濃くてすぐに気付ける状態にあったのになぜ気づけなかったのか」と疑問を持たれることもあります。死亡を知った日を正直に記載し、問い合わせを受けた際に答えられるような理由も確認しておきましょう。
照会書・回答書の様式は各裁判所によって異なるため、事前に知っておきたいのであれば弁護士に相談してみましょう。
相続放棄の受理書を受領
相続放棄が認められると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届きます。
この書類を受領すれば手続きは完了です。重要な書類のため、受け取った書類は大切に保管しましょう。
次の相続人に知らせる
前の順位の相続人が相続放棄すると、下の順位の相続人に相続権が移行します。
被相続人が借金を残していた場合は借金も次の順位の相続人が引き継ぐため、速やかに知らせることが重要です。
相続放棄のリレーはどこまで続くか|相続順位と範囲・最終的な行先を解説相続放棄申述書の書き方
相続放棄の申述書は必要な情報を記載していることが大前提です。
裁判所で公開されているサンプルを使い、実際の書き方を紹介します。
なお、成人と未成年者では書き方が異なりますが、今回は成人を例に書き方をみていきましょう。
1ページ目の書き方
1ページ目の書き方は以下の通りです。
画像引用:裁判所
日付
申立書を作成した日付です。
提出先の家庭裁判所の名前
提出先の裁判所名を記入し、申述人の署名・押印をします。
押印に使う印鑑は実印である必要はなく、認め印で問題ありません。
申述人の情報
自分の本籍地と住所のほか、氏名、生年月日、平日昼間に連絡がつく電話番号、被相続人との続柄を記載します。
申述人が未成年であれば法定代理人の情報
申述人が未成年の場合、法定代理人(親)が「法定代理人」の欄に記入することが必須です。
親の住所と電話番号、氏名を記載します。
被相続人の情報
被相続人の欄には本籍と最後の住所、氏名のほか、死亡年月日を書きます。
2ページ目の書き方
2ページ目の書き方は以下のとおりです。
画像引用:裁判所
相続の開始を知った日
「申述の理由」欄の中にある「相続の開始を知った日」を記載します。
同居の家族・親族なら死亡日と同一になることが一般的ですが、離れて居住していて数日後に知らされたのであれば死亡日と知った日が異なることもあります。
放棄の理由
放棄の理由は選択式になっているので、その中で近いものを選びましょう。
選択肢には以下の5つがあります。
- 生前贈与を受けている
- 生活が安定している
- 遺産が少ない
- 遺産を分散させたくない
- 債務超過
相続財産の概略
現在把握している相続財産の内容を書きます。
適当に書くのではなく、金融機関や証券会社に問い合わせた結果を記載しましょう。
押印するのは認印でも構いませんが、今後の手続きで同一の印鑑を求められる可能性もあります。どの印鑑を使用したかは覚えておきましょう。
相続放棄申述書の提出方法
相続放棄申述書の提出方法は「家庭裁判所への持ち込み」「郵送」の2種類です。
家庭裁判所に持ち込んで提出
被相続人の住所を管轄する家庭裁判所が家から近いのであれば、持ち込みがおすすめです。
担当者にチェックしてもらうことで記入漏れや書き間違いをその場で指摘してもらって修正でき、確実に受理してもらうことができます。
郵送で提出
被相続人が遠くに住んでいた場合は郵送がおすすめです。
ただし、記載に間違いがあると受理されない場合があります。
まとめ
相続放棄を実現するためには、被相続人の最後の住所を管轄する家庭裁判所に「相続放棄申述書」の提出が必要不可欠です。
書面は家庭裁判所が求める書式に従う必要があるため、今回紹介した書き方を参考に、正しく記載しましょう。
手続きが完了すると相続順位が下の人が相続権を得ることになるため、放棄した旨の連絡も間違いなく行いましょう。
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