- 法定相続人とは、遺産を相続する権利を持つ人
- 法定相続人になれる権利には優先順位がある
- 相続方法を決めるには、法定相続人全員の合意がなければならない
- 養子や内縁の妻の子は法定相続人になれるが、配偶者の連れ子はなれない
- 法定相続人には「遺留分」があり、最低限の取り分が認められる
相続について考え始める際に、まず最初に確認が必要なのが法定相続人です。法定相続人は、財産所有者の死亡時=相続開始とともに相続権を持つ親族のことです。
誰が法定相続人になるのか、それぞれがどのくらい相続するのかなど、気になる点があるかと思います。また、「法定相続とは違う方法で相続することは可能なのか」を知りたい方もいるのではないでしょうか。
そこで、今回は相続方法を決めるときの基準となる法定相続人と、さまざまなケースにおける相続人の決まり方についてご説明します。
目次
法定相続人とは
法定相続人とは、遺産を相続する権利を持つと民法で定められた親族を言います。法定相続人となる親族には順位が定められ、相続開始時に優先順位の高い人やその組み合わせが適用されます。
また、それぞれの法定相続人の相続額を定めたものが、法定相続分です。
ただし、故人の遺言があれば、基本的には遺言が法定相続より優先されます。
代襲相続
代襲相続とは、法定相続人がすでに他界している場合に、その子や孫が相続権を受け継ぐことができる制度です。相続権を確認する際には、代襲相続人の確認も必要になる場合があります。
法定相続人の優先順位と法定相続分
法定相続人の優先順位
法定相続人の優先順位は、以下のように定められています。(民法第900条、901条)
配偶者 | 必ず相続人になれる | |
---|---|---|
血族 | 配偶者に加えて、優先順位の高い人が相続人になれる | |
第1順位 | 子または代襲相続人(孫・ひ孫など直系卑属) | |
第2順位 | 両親または祖父母などの直系尊属 | |
第3順位 | 兄弟姉妹または代襲相続人(子のみ代襲可能) |
法定相続分の割合
法定相続分は、以下のパターンで決まります。
法定相続人の組み合わせ | 法定相続分の割合 |
---|---|
配偶者のみ | 全額 |
配偶者と直系卑属(第1順位) | 配偶者1/2 直系卑属1/2(人数で等分) |
直系卑属(第1順位)のみ | 全額を人数で等分 |
配偶者と直系尊属(第2順位) | 配偶者2/3 直系尊属1/3(人数で等分) |
直系尊属(第2順位)のみ | 全額を人数で等分 |
配偶者と兄弟姉妹またはその子(第3順位) | 配偶者3/4 兄弟姉妹など1/4(人数で等分) |
兄弟姉妹またはその子(第3順位)のみ | 全額を人数で等分 |
家系図で相続範囲を確認
以下の家系図をもとに、法定相続人を確認してみましょう。
この家系図のデータはダウンロードできますので、プリントアウトして名前を書き込むなどしてご利用ください。
「法定相続人を確認する家系図(PDFファイル)」のダウンロード
【ケース別】相続人の確定方法
相続人の確定方法は、ケースにより異なります。
遺言書がある場合
遺言書がある場合には、基本的に遺言内容に従います。その場合は、相続人による遺産分割協議は必須ではありません。ただし、相続財産に不動産が含まれる場合は、登記手続きの際に遺産分割協議書の提示を求められる可能性があります。
相続人全員が遺言内容に反対している場合は、全員で遺産分割協議をし、合意すれば変更できます。
ただし、遺言執行者が選任されている場合は、執行者に遺言内容を実行する権利・義務がありますので、執行者の了承を得た上で協議することになります。
遺言書がない場合
遺言書がなく、法定相続人が複数いる場合は、全員で遺産分割協議を行い、分割方法を決めます。
分割協議では、法定相続人全員の合意がなければ、決議することができません。1人でも反対する相続人がいれば、他の人は相続手続きをすることはできません。
どうしても当事者間で結論を出すことができない場合には、調停や審判により解決することになります。
法定相続分に従う場合
法定相続人全員が法定相続分に従うことに同意している場合でも、遺産分割協議は必要です。相続が発生した段階では、法定相続人が全ての財産を等分している状態です。不動産なども共同所有の状態ですので、どの財産を受け取るかを決めるため、協議が必要となります。
法定相続人に未成年者がいる場合
未成年者は遺産分割協議に参加できないため、法定相続人に未成年者がいる場合、家庭裁判所が特別代理人を選任します。通常、未成年者の法定代理人は親権者が担いますが、遺産分割においては親権者と未成年の子が共同相続人になる場合、利益相反になる可能性があるため、親権者や利害関係人が特別代理人の選任を申し立てます。
法定相続人に成年被後見人がいる場合
認知症や知的障害などで判断能力が不十分と認められる人には、本人の代わりに法律行為を行う成年後見人が選任されます。法定相続人に成年被後見人がいる場合にも、成年後見人が遺産分割協議に代理参加します。
ただし、成年後見人が相続人に含まれる場合には、利益相反となるため、特別代理人が選任されます。
法定相続人が相続放棄をする場合
遺産には全ての経済的価値のあるものが該当し、借金などのマイナス財産も含まれます。プラス財産との差額や相続税額を鑑みて損失がある場合には、相続人は相続を放棄することも可能です。
その場合、放棄した財産は同順位の相続人のものとなります。同順位の相続人がいない場合は、下位の法定相続人が相続します。
なお、放棄した人に子がいた場合でも、代襲相続は起こりません。放棄した者は、最初から相続人ではなかったとされるからです。
法定相続人全員が相続を放棄する場合、財産の差額がマイナスであれば連帯保証人が支払うことになります(連帯保証人がいる場合)。
マイナス財産を清算した後に、まだプラスの財産が残る場合は、国に引き取られます(国庫帰属)。
法定相続人の1人が行方不明の場合
相続は法定相続人全員の合意があって初めて有効となります。法定相続人の1人が行方不明の場合でも、その1人を除外して結論を出すことはできません。
しかし、行方不明者が発見されるのをいつまでも待つわけにはいきません。長期間(法律上は7年間)行方不明である場合には、家庭裁判所に請求して「失踪宣告」を行い、民法上死亡したものと扱うことで、相続手続きを進めることができます。
法定相続人がいない場合
故人に身寄りがなく、法定相続人がいない場合、家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、管理人が相続人を捜索します。
一定期間捜索後、該当する人が見つからなかった場合、遺産は国庫帰属となります。
故人に養子がいる場合
民法では、相続において養子も実子と同等の権利を持つとされています。ただし、法定相続人になれる養子の人数には制限があります。
他に実子がいない場合 | 2人まで |
---|---|
他に実子がいる場合 | 1人まで |
配偶者に連れ子がいる場合
被相続人の配偶者の連れ子は、実子ではないため養子縁組をしない限り法定相続人にはなれません。
内縁の妻(または夫)、その間に生まれた子がいる場合
事実上の結婚生活があっても、内縁の妻(または夫)は法定相続人にはなれません。ただし、故人が生前に内縁の妻(または夫)に遺産を残す旨の遺言書を残したり、死亡保険金の受取人として内縁の妻(または夫)を指定しておくことは可能です。
一方、内縁の妻(または夫)との間に生まれた子については被相続人から認知されていれば、他の子と同等に法定相続人になることができます。
相続欠格・相続人排除があった場合
相続欠格とは、相続権を得る資格がないと法的に認められる理由がある場合に、法定相続人の権利を当然に奪う制度です。
一方、相続人排除は、被相続人が虐待や重大な侮蔑を与えられたなどの理由で特定の人を法定相続人から廃除することです。
相続欠格・相続人排除があった場合、代襲相続が可能です。
法定相続人の権利「遺留分」とは
法定相続に関わらず、相続順位は基本的に遺言書の内容が優先されます。例えば、「愛人に全財産を遺贈する」という内容の遺言も可能です。
しかし、それでは法定相続人の親族としての権利が守られません。
そこで、民法では法定相続人に「遺留分」を認めています。遺留分とは、遺言に関わらず、法定相続人が最低限取得できる相続分のことです。
遺留分の割合
法定相続人の組み合わせ | 全遺産における遺留分の割合 |
---|---|
配偶者のみ | 1/2 |
配偶者と直系卑属 | 配偶者1/4 直系卑属1/4※ |
直系卑属のみ | 1/2※ |
配偶者と直系尊属 | 配偶者1/3 直系尊属1/6※ |
直系尊属(第2順位)のみ | 1/3※ |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者1/2 兄弟姉妹なし |
兄弟姉妹のみ | なし |
※人数で等分する
遺留分侵害額請求の方法
遺産を相続または受遺した人に対して、遺留分を請求することを、「遺留分侵害額請求」と言います。
遺留分侵害額請求の方法には、特に法的決まりはありません。相手と良好な関係であれば、口頭で伝えることもできます。
しかし、伝えにくい状況であれば、郵送などで請求書を送ることになります。
注意が必要な点は、遺留分侵害額請求には時効があることです。相続発生や遺留分の侵害を知ってから1年以内、または相続開始の時から10年以内に請求をしなければ、請求権は消滅します。
そのため、郵送する場合は、内容証明郵便を利用するといいでしょう。
相手が請求に応じない場合は、協議を申し出るか、調停を申し立てます。それでも決着しない場合は、訴訟を起こすことになります。
まとめ
相続方法はケース毎に選択肢が違ったり、細かい制約があったりと、とても複雑です。そのような細かい規定や法解釈を知らずに、家族や親しい人との間に相続が起こった場合、損をしてしまったり、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
そのため、専門家でなくてもある程度は相続についての知識を持っていることが大切です。そして、家族や親族間で生前から話し合っておくことをおすすめします。
また、一定の財産を所有している人は、将来家族が揉めないよう、遺言書などを残しておくのもいいでしょう。
行政書士事務所経営。専門は知的財産ですが、許認可から相続まであらゆる業務を行っています。また、遺言執行や任意後見関係を専門とする社団法人の理事もしています。アドバイスや業務遂行でお客様の問題が解決するととても嬉しくやりがいを感じます。行政書士ほか、宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級の資格所持。
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