- 兄弟姉妹の立場の違いが親の介護であからさまになる
- 労力・経済・意識の違いが介護の不公平感を生む
- 「親の介護で兄弟姉妹が絶縁」の事態を避けるためにやるべきことがある
親の介護に直面する日が、ある日突然やってくるかもしれません。
多くの場合、親の介護は子供が中心的な介護の担い手となります。しかし要介護者に複数の子供がいると、兄弟姉妹それぞれの立場や価値観の違いにより介護の押し付け合いなどのトラブルに発展する可能性があります。
親の介護が原因で兄弟姉妹間にいさかいが起きたり、兄弟姉妹が絶縁するような事態になってはいけません。
今回は親の介護を発端として兄弟姉妹が揉める原因を説明し、トラブルや絶縁などの事態にならず兄弟姉妹が協力して親の介護をする方法をご紹介します。
目次
親の介護は兄弟姉妹間の諍いに発展しやすい
小さな頃は同じ環境で育っていた兄弟姉妹でも、親の介護が必要になる年齢の頃にはそれぞれの立場が大きく異なっていることが多いものです。
仕事や結婚など、ひとりひとりが選んできた人生の選択肢の結果、 同じ親から生まれた兄弟姉妹であっても、立場的にはほぼ他人と同じだと考えても良いでしょう。
本当に他人であれば当たり障りのない社交的なお付き合いをしていれば済みますが、親の介護には時間・労力・金銭の負担がどうしても生じるため、物事の価値観や経済的な状況がそれぞれ違ってしまった兄弟姉妹が本音でぶつかりあうことも発生します。
親の介護を契機に兄弟姉妹の立場の違いがあからさまになったため、兄弟姉妹間でいさかいが起こりやすいとも言われています。
親の介護で兄弟姉妹が揉める理由
具体的には兄弟姉妹のどのような立場の違いが、 親の介護で揉める原因になるのでしょうか。
介護に対する考え方が違う(意識の問題)
そもそも「介護を必要な親をどう面倒見ていくか」の考え方が兄弟姉妹間で違うときには、 介護に対する意識の違いにより揉める原因になります。
住み慣れた自宅で暮らさせてあげたいか、それとも施設に入居させるべきか、また「放っておいても親自身で何とかするだろう」と楽観視して何もやろうとしない方もいます。
住んでいる地域が違う(距離の問題)
兄弟姉妹の中には、就職や転勤、または結婚などの理由により地元を離れて遠方で生活している方がいるかもしれません。
離れて住んでいるために親の衰えが身近に感じられず、近くに住んで普段の親の様子をよく知っている方からすると的外れな意見をするケースも多々あります。
遠くに住んでいて日頃は介護を手伝わないのに、たまに来て口だけ出す兄弟姉妹などは、主な介護の担い手にとって非常に腹が立つ存在なようです。
世帯構成が違う(労力提供の問題)
距離の違い以外にも、介護に携わるための労力を提供できない原因はたくさんあります。
独身のおひとりさまにくらべて、結婚している方は配偶者の意向も考慮しなければいけません。配偶者の親も介護を必要としている場合には、 配偶者の親の介護だけで手一杯な状況もありえます。
また兄弟姉妹に子供がいて育児の真っ最中だと、親の介護をする時間はなかなか捻出できません。
介護費用の分担が公平でない(経済的な問題)
兄弟姉妹がお金を出し合って介護をプロの手に任せようとしたときには、兄弟姉妹間の「ふところ事情」の違いが揉め事の原因になる可能性もあります。
兄弟姉妹がそれぞれどんな会社で働いているか、正社員か契約社員か、またはパート・アルバイトかの雇用形態の違いにより、それぞれの得ている給与額が異なります。
また子供が何人もいて教育費にお金がかかり、親の介護のお金が出せないと兄弟姉妹の誰かが言い出したときには、言われた他の兄弟姉妹が不公平感を感じるのは当然でしょう。
長男・長女への押し付け
兄弟姉妹の中でも特に長男・長女は、他の兄弟姉妹から介護を押し付けられがちです。
「お兄ちゃんが決めて」「お姉ちゃんにお願い」と他の兄弟姉妹が我関せずの態度でいれば「先に生まれただけで、どうして介護を一手に引き受けなければいけないんだ」と長男・長女は不満に思うでしょう。
親に勘当された兄弟姉妹がいる
兄弟姉妹の誰かが過去に親といさかいを起こし、親から勘当されている方がいるかもしれません。
勘当した親と勘当された子供が双方納得済みで、お互いが介護をする気もされる気もなかったとしても、他の兄弟姉妹にとってはその分だけ介護の担い手が減ることにつながり、納得できない気分が残ります。
親に勘当されるとはどういうことか、絶縁との違いなどについては以下の記事で詳しく解説しています。
勘当の意味とは?法律上の手続きや遺産相続との関係性を解説子供の頃からの確執
同じ親に育てられたとしても、兄弟姉妹の全員が同じ分だけ親の愛情を受けられたとは限りません。
兄弟姉妹間で差別されて育った場合、差別された側は成長した後もずっとその恨みを忘れていない可能性が大きいです。
親に対して恨みを持ちつつ、優遇された側の兄弟姉妹に対する確執も根深いものがあります。
「自分は親の介護をする気がないから、親に可愛がってもらったあなた達が恩返ししてください」と 差別されて育った兄弟姉妹に言われ、初めて差別があったこと自体に気付く可能性だってあります。
親の相続で兄弟姉妹が揉める可能性も
上記までは親の介護に直面して兄弟姉妹間にいさかいが起きる理由を説明してきましたが、 その理由は介護でなく親の遺産相続の時に噴出する可能性もあります。
遺産相続での兄弟姉妹間のトラブルは、親を介護するときよりもさらに深刻なトラブルに発展してしまうかもしれません。
以下の記事では親の遺産相続をめぐる兄弟姉妹間のトラブルについて解説しています。今回の記事とあわせてぜひ参考にしてください。
遺産相続は兄弟間で揉めやすい!分割方法の決め方&トラブル事例と解決方法介護が原因で兄弟姉妹が絶縁する事態にも
親の介護をめぐって兄弟姉妹の意見が対立したとしても、話し合いをきちんとすれば解決できるかもしれません。
しかし話し合いがうまくいかないと、親の介護で表面化したこれまでの不満が爆発し、兄弟姉妹が絶縁するような事態にもなりかねません。
「絶縁」には法的な効力はありませんが、絶縁状を送った・受け取った兄弟姉妹とは、 その後に親の介護を協力していくことは残念ながら難しいでしょう。
親や兄弟姉妹との絶縁については、以下の記事でも詳しく解説しています。本記事では兄弟姉妹間の絶縁を決しておすすめしておりませんが、 ありえるかもしれない可能性について あらかじめよく知っておいてください。
絶縁状の書き方|親子間・友人間・男女間に分けて解説 絶縁状には法的な効力がない!家族・親族との縁を切るための方法介護が原因で兄弟姉妹が絶縁しないためには
それでは、親に介護が必要になっても兄弟姉妹が絶縁するようなことなく、みんなで協力して 親の介護をするためにはどうしたら良いのでしょうか。
ここからは、兄弟姉妹が協力して親の介護をするための方法をご紹介します。
日頃からコミュニケーションする
いざというときの揉め事を避けるためには、やはり常日頃からコミュニケーションを活発にし、仲の良い関係性を保っておくことが大切です。
お互いがお互いの状況をよく理解していれば、少しぐらい立場の違いや介護の不公平感があったとしても乗り越えられる可能性が高くなります。
兄弟姉妹に配偶者がいる場合には、その配偶者とも良好な関係を保つようにしましょう。 いざ親の介護のときにも配偶者の理解が得やすくなります。
親の介護をどうするか本音で話し合う
介護は長丁場になることが多いため、少しばかりの不満は我慢すれば良いと遠慮して口に出さないでいると、いつかは不満が膨れ上がって爆発してしまうかもしれません。
できれば親の介護が必要になる前に、将来的な親の介護をどうするかについて本音で話し合う機会を設けることをおすすめします。すでに親の介護について必要性を感じ始めている方は、できるだけ早く話し合いの機会を設けてください。
兄弟姉妹の誰かに介護の負担が多くのしかからないよう、あらかじめ役割分担をざっくりと決めておくことがおすすめです。とはいえ介護の状況は刻々と変わりますから、一度決めた役割分担はそのままにせず、定期的に兄弟姉妹全員で見直ししましょう。
「親の介護は親のお金で」を徹底する
介護費用は、かけようと思えばいくらでもかけられます。
高級な老人ホームに入居できれば親は快適に生活することができますが、その費用を子供達が負担したら、子供世帯の家計にも影響をきたしかねません。
兄弟姉妹の経済状況に差があるときには、それが揉め事の火種にもなります。
基本的に親の介護は親自身のお金でまかなうものとし、親の年金や貯金を使って支払える範囲の介護サービスを選定するべきです。
親の年金額が低い、また貯蓄がないなどの理由により親自身が介護費用を捻出できない場合には生活保護の利用も検討してください。
高齢者が受けられる生活保護については以下の記事で詳しく解説しています。
高齢者が受けられる生活保護は6種類|受給要件・申請方法・扶助内容を解説介護保険サービスを積極的に活用する
介護保険が適用できる介護サービスを受けたときには、利用者の支払いは原則1割負担で済みます。 親の介護費用をめぐって兄弟姉妹が金銭的な揉め事を起こさないためには、 介護保険の利用は必須です。
介護保険の仕組みについては以下の記事を参考にしてください。
今さら聞けない介護保険の仕組みとは|加入者・保険料・介護サービスを解説親に遺言書を作成してもらう
いくら公平にしようと思っても、兄弟姉妹の誰かに介護の比重がかかってしまうことはあり得ます。
介護の負荷が他の兄弟姉妹に比べて高い方は、それが例え話し合いで決まったことであっても不満を抱いてしまいます。不満が高まったままにしておくと、いつか介護放棄などの 大きなトラブルに発展してしまうかもしれません。
そのような事態にならないよう、あらかじめ親の介護に寄与した方は遺産相続の取り分を多くするよう取り決めておくことも一案です。その際は口約束ではなく、法的に効力のあるきちんとした遺言書を残しておくことをおすすめします。
遺言書の書き方と文例|特定の人だけに財産を渡す方法も解説まとめ
親の介護は、これまでの親との関係性や兄弟姉妹との関係性、子供たちそれぞれの立場の違いによって、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
しかし親の介護が原因で兄弟姉妹が絶縁するような事態になってしまったら、誰よりも悲しむのは介護される親自身です。絶縁した・された兄弟姉妹の全員にも、やりきれない思いが長く残るでしょう。
お互いがお互いを思いやり、全員ができる範囲で協力すれば、親の介護における兄弟姉妹間のトラブルのほとんどは避けられます。親に対してだけでなく、兄弟姉妹に対しても思いやりの気持ちを持ちながら介護について話し合いましょう。
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