- 親が認知症になったら「冷静に」「情報を集め」「将来に備える」
- 認知症の親に対して子供はいろいろなサポートができる
- 親が認知症になってもこれまでどおりの生活をできるだけ続けていくことが肝心
認知症はいつ発症するかわかりません。
ある日突然、自分の親が認知症と診断される可能性は誰にでもあります。
そうは分かっていても、実際に自分の親が認知症になったら多くの方はとまどうものです。
今回は親が認知症になったらどうしたら良いのかを説明し、認知症の親に対して子供たちができるサポートや注意点について解説します。
目次
親が認知症になったらまずは冷静に
この記事を読んでいる方の中には、まさに親が認知症だと診断されたばかりの方もいるかもしれません。
これからの親の生活に不安を感じる方も多いと思いますが、認知症になった親本人が一番、自分の衰えの自覚と将来の不安におびえているのです。
親が認知症だと診断されたら、何よりもまず子供が冷静になることが大切です。自分の不安感を前面に出してオロオロしたり、認知症になった親を責め立ててはいけません。
診断結果にショックを受けている親の心を思いやりながら、冷静にこれからのことをきちんと話し合いましょう。
親が認知症かもしれないと思ったらどうするか
この記事を読んでいる方の中には、親にもの忘れなどが増え「もし認知症だったらどうしよう」と不安になっている方もいるかもしれません。
実は、子供は親の認知症に気付きづらいと言われています。親がまだ若く元気だった頃の印象から、親の認知機能の衰えにも目をそらしてしまいがちだからです。
しかし、少しでも違和感を感じたらできるだけ早く専門医の診察を受けることをおすすめします。認知症の進行を遅らせるためには一日も早い診断確定と治療の開始が必要だからです。
以下の記事では、親が認知症かもしれないと思ったときの受診のしかたや認知症検査の方法について解説しています。親の行動に違和感を少しでも感じた方は、この記事を参考にしながら認知症診断を親にすすめてください。
親が認知症かもしれないと思ったら|認知症診断の流れと何科を受診するか親が認知症と診断されたらまずやるべきこと
専門医の認知症診断を受けて親が認知症だと診断されたら、子供はまず何をすればよいでしょうか。
ここからは、親が認知症と診断されたらまずやるべきことを3つご紹介します。
認知症の正しい理解を深める
親が認知症だと診断されたときには、医師から現在の認知症の状態や、これから予想される変化などが詳しく説明されます。
その説明をよく聞き、案内の冊子などをもらったらよく読みましょう。わからないことは積極的に医師や看護師へ質問してください。
認知症の不安を排除するためには、まずは認知症について正しい理解を深めることが大切です。
当サイト「そなサポ」でも認知症の症状などをわかりやすく説明しています。当サイトなどの情報をうまく取り入れ、知識を味方につけましょう。
認知症は早く気づけば治療が可能|認知症の症状を初期・進行後に分けて解説相談できる場所を見つける
認知症が進行していくと、いつかは介護が必要になる生活がやってきます。
これからの親の生活を考え、今から介護について相談できる場所を見つけておきましょう。
各自治体が設置している地域包括支援センターは、65歳以上の高齢者とその家族が利用できる相談場所です。認知症の有無や介護の必要性に関係なく、高齢者の生活全般に関する相談ができます。
全国の地域包括支援センターは以下の厚生労働省検索システムから検索できます。
参考 介護サービス情報公表システム厚生労働省また公益社団法人「認知症の人と家族の会」では、親が認知症になった子供の電話相談を受け付けています。認知症に関する質問や不安や悩みが匿名で相談できます。
参考 ひとりで悩まないで 認知症のこと認知症の人と家族の会家族が一致団結する
将来的には始まる親の介護生活に備え、今から関係者が一致団結して親の介護チームを作っておきましょう。
兄弟姉妹がいる方はSNSグループなどで兄弟姉妹間の情報を共有しておくようにすれば、いざというときに役立ちます。また、もう一方の親が元気な場合には、配偶者の意見も尊重しなければいけません。
あらかじめ介護のキーパーソンを決めておくことも一案です。ただしキーパーソンにすべて任せきりではなく、それ以外の方もチームの一員であることを忘れないようにしてください。
認知症の親に対して子供ができるサポート
ここからは、認知症になった親に対して子供ができるサポートの内容を説明していきます。
日常生活のサポート
認知症になると、火を使う調理や金銭を扱う買い物がだんだん難しくなります。
子供が親と同居している場合には子供が調理や買い物を担当できますが、子供が地元を離れている認知症の親の単身世帯では、代わりにやってあげることができません。
認知症と診断された方でも、ほぼ自力で日常生活をこなせる軽度な方は要介護ではなく要支援1~2に認定される可能性があります。要支援ですとホームヘルパーの訪問回数にも制限がありますので、ホームヘルパーの訪問日以外の食事は宅食やネットスーパーの利用なども検討していきましょう。
金銭管理のサポート
認知症が進行すると、ものごとを判断する能力が低下してしまいます。
高齢者を狙った詐欺や押し売りなどがきたときに、良し悪しの判断ができず不当な契約をさせられたり、お金を騙し取られる危険性もあります。
そのような事態を避けるために、認知症の親の財産を子供が代わって適切に管理することも検討しましょう。
認知症や知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方の財産を第三者が代わりに守る制度を「成年後見制度」と呼びます。子供が認知症になった親の任意後見人となり、 財産管理を親の代わりに行うことで、大切な親の財産を守ることができます。
画像引用:法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」|成年後見制度とは、どんな制度ですか?
健康管理のサポート
認知症が進行すると、ものごとに対する興味がなくなり、自分自身の体調の変化についても無頓着になりがちです。
体調の変化を自覚することがあっても、それをうまく人に伝えられない可能性もあります。
そのため認知症の親を持つ子供は親の体調にも目を配り、ささいな変化に早めに気付いて適切な医療機関への受診をうながすことが大切です。
- 顔色が悪い
- ベッドに横になる時間が多い
- 食欲が失せた
- どこかが痛むような顔をしている
- イライラした様子
上記のような状態に気付いたら、ケガや病気による体調悪化の可能性を考えましょう。
かかりつけ医への定期的な受診もおすすめします。日頃の様子をよく知るかかりつけ医であれば、診察中のちょっとした仕草で体調の変化も見逃さず、また認知症の進行についても適切に把握できます。
安全管理のサポート
認知症の有無に関わらず、身体機能の衰えた高齢者は事故を起こしやすくなります。
特に認知症になると判断能力が衰えるため、日常生活における事故のリスクは高まります。認知症になった親の安全を守る対策も、子供が考えておかなければいけません。
《日常でできる安全対策》
・スリッパや玄関マットなどつまずきやすいモノを撤去する
・廊下や階段にスロープ・手すりを設置する
・支えにならない軽い材質の椅子や机を撤去し、重量のある椅子や机に取り替える
・ストーブやアイロンなど火事の原因になる家電の取り扱いに注意する
・ガス台をITクッキングヒーターに交換する
・包丁・ハサミなどを鍵付きの引き出しに保管する
・財布や貴重品を目の届かないところで保管する
・洗剤と飲料水などを混在して置かない
上記の他にも、できる対策はいくつもあります。周りを見回して日常の危険をひとつひとつ排除していきましょう。
精神面のサポート
親が認知症になったら、親への精神面のサポートも重要です。
認知症になった方はもう何もわからず、感情すら消えてしまうと思っている方が多いようですが、それは大きな間違いです。
たとえ認知症になっても、人間の感情はかなり末期の段階まで残ります。自分が認知症になっていろいろなことを忘れていく悲しみや、できなくなることが増えていく悔しさは、誰よりもご本人が感じているのです。
認知症の親を持つ子供はその悲しみや悔しさに寄り添い、親の気持ちが少しでも軽くなるように励まし続けてあげましょう。
認知症の親本人にも相談できる場所が必要
上記では、認知症の親を持つ子供が誰かに相談できる場所を見つけることが必要だと説明しました。
その相談場所は、認知症になった親本人にとっても必要です。
認知症と診断されても症状が軽度の方は、介護保険を使って利用できるデイサービスなどはかえって居心地を悪く感じるかもしれません。ある程度自立した生活が送れる軽度の認知症高齢者が仲間を見つけ、家族以外と安心して交流できる場所が必要なのです。
「認知症カフェ」は自治体、社会福祉法人や民間団体などが運営している、認知症の方と家族、地域の交流の場です。カフェでゆっくりお茶を飲みながら認知症に関する情報交換ができ、カフェにいる専門家にもいろいろな相談できます。
認知症カフェの開催場所は、市区町村のホームページなどで探すことができます。先ほどご説明した地域包括支援センターに問い合わせても、近くの認知症カフェを紹介してくれるでしょう。
カフェでゆったりした時間を過ごすような気持ちで、親といっしょに認知症カフェに出かけてみてはいかがでしょうか。
認知症になった親を持つ子供が注意すべきこと
最後に、認知症の親に対して子供がやってはいけない注意点を3つご説明します。
認知症になる前と比較しない
親の衰えは子供にはなかなか受け入れがたいものですので、子供はつい現在の親の状態と認知症になる前の親の状態を比較して「あれもできない」「これもできない」と否定的に考えがちです。
しかし、過去の状態と比較しても問題は何も解決しません。できなくなったことに気を取られ、認知症の親を責め立てれば相手が心を閉ざす原因となります。
できなくなったことではなく「今できること」に目を向け、それができるだけ長く継続できるような治療・対策を講じましょう。
怪しげな情報をうのみにしない
最近ではインターネットや書籍でも認知症に関するさまざまな情報が手に入れられるため、認知症に関する理解は以前よりしやすくなりました。
しかし中には怪しげな情報が含まれていたり、人の不安をあおって効果のない商品を売りつける「不安商法」なども存在するため注意が必要です。
怪しげなサプリや民間療法に手を出す前に、必ず医師に相談してください。
家族だけで頑張ろうとしない
最後の注意点は「家族だけで何もかもやろうとしない」ことです。
親が認知症になったら、子供の生活はこれからいろいろと変わってくることが予想されます。将来的には親の介護が必要になり、仕事と介護の両立に悩むシーンも出てくるでしょう。
ですが、親の介護を何もかも子供が背負うことはありません。国や自治体、地域、民間企業など、親の介護をする子供を手助けできる制度やサービスはたくさんあります。
将来的な親の介護で、子供が社会から孤立せずにすむような方法を模索してください。
まとめ
今回は、親が認知症になったら子供はどうするかについて解説しました。
親が認知症と診断されたら、子供は心配になり、また不安になることでしょう。しかし周囲のサポートを受けながら適切な治療を続けていけば、認知症の進行をゆるやかにしてこれまでどおりの生活を一定期間続けていくことは可能です。
親が認知症になってもこれまでどおり親と子が幸せに暮らしていくために、できることをひとつひとつしていきましょう。
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