- 婚姻関係終了届の正式名称は「姻族関係終了届」
- 婚姻関係終了届のメリットは「スッキリ」「姻族との絶縁」「扶養・介護回避」
- 婚姻関係終了届のデメリットは「撤回不可」「法事等でトラブル」「援助の打ち切り」「お墓」
- 婚姻関係終了届を出しても変わらない点は「名字」「年金」「相続」
縁あって夫婦となった配偶者との死別は、とても悲しいことではありますが、新たな旅立ちのきっかけでもあります。
すべてのしがらみを振り捨てて次の一歩を踏み出すために、婚姻関係終了届を出して過去の人生と決別したいと思う方もいるでしょう。
そこで今回は、婚姻関係終了届について説明し、そのメリットとデメリットを解説します。
目次
婚姻関係終了届とは
婚姻関係終了届は、正しくは「姻族関係終了届」が正しい名称です。
婚姻関係の終了とは、亡くなった夫もしくは妻(死亡配偶者)との関係を終了するという意味ですが、姻族関係の終了は、死亡配偶者を含む死亡配偶者との親・兄弟などの姻族関係をすべて終了させるという意味になります。
また婚姻関係終了届は、通称死後離婚とも呼ばれています。すでに亡くなった方と離婚することはできませんが、婚姻関係終了届の提出により離婚したようなものだと一般的には思われているからです。
ただし婚姻関係終了届は、配偶者と生前に離婚した場合とは相続や年金などの影響が異なります。詳しくは後ほど説明いたします。
婚姻関係終了届の出しかた
婚姻関係終了届(正しくは姻族関係終了届)は、配偶者を亡くした方(生存配偶者)が市区町村役場に所定の書類を提出して手続きを行ないます。
提出先の市区町村役場は生存配偶者の本籍地、あるいは所在地などを管轄する自治体の市区町村役場です。
婚姻関係終了届の出し方や必要書類などは、以下の記事で詳しく解説しています。
死後離婚で相続はどうなる?|姻族関係終了届の出し方と提出後の影響を確認婚姻関係終了届を出すメリット
ここからは婚姻関係終了届を出すメリットを確認していきましょう。
婚姻関係終了届を提出することによるメリットは、精神的なメリットと金銭的なメリットの双方があります。
気持ちの区切りがつけられる
婚姻関係終了届の提出による精神的なメリットとしては、スッキリ・さっぱりする、気持ちの区切りがつけられるというメリットが挙げられます。
生存配偶者と死亡配偶者の関係が良かったにせよ悪かったにせよ、夫婦の片一方が亡くなった後は、残された方は新たな人生に踏み出さなければいけません。
婚姻関係終了届が生存配偶者の気持ちを切り替えるきっかけになり、グリーフ(喪失感・悲嘆)をやわらげる助けになる可能性があります。
仲の悪い死亡配偶者親族と関係が絶てる
舅や姑など配偶者親族と折り合いが悪い方の中には、配偶者が亡くなった後には一切の関係を絶ちたいと思っている方も少なくありません。
配偶者が亡くなった後でも姻族関係は継続していますから、婚姻関係終了届の手続きにより姻族関係が解消できて精神的な負担が軽減できます。
また婚姻関係終了届の提出だけではあき足らず、舅や姑に絶縁状を送りつけて完全に絶縁を宣告するケースもあります。
絶縁状には法的な効力はありませんが、どうしても相手に対して許しがたいという気持ちが残ってしまう場合には、絶縁状の送付も精神の安定を図る策として有効でしょう。
絶縁状の書き方は以下の記事を参考にしてください。
絶縁状の書き方|親子間・友人間・男女間に分けて解説配偶者親族の扶養・介護義務がなくなる
配偶者親族との姻族関係が継続していると、双方の関係性によっては生存配偶者に義両親の扶養や介護を求められるケースがあります。
年金生活者の扶養や介護では労力的にも金銭的にも多大な負担がかかる可能性が否定できませんが、婚姻関係終了届を出していれば義両親に対する扶養の義務はなくなり、介護の協力を求められても突っぱねることが可能です。
配偶者の生死に関わらず、年金生活者の配偶者親族を扶養するメリットとデメリットについては以下の記事を参考にしてください。
年金受給者を扶養に入れるメリット・デメリット|税・保険の必要条件とは婚姻関係終了届を出すデメリット
婚姻関係終了届のメリットについて確認したあとは、反対にデメリットについても確認してみましょう。
メリットと同じようにデメリットでも、精神的なデメリット・金銭的なデメリットが考えられます。
一度出した終了届は撤回できない
姻族関係終了届が市区町村役場でいったん受理されると、その後に気が変わったとしても取り下げを行うことはできません。
配偶者親族との姻族関係を終了させたら、同じ形では姻族関係を復活できないことをよく覚えておき、一時の激情にかられて提出してしまわないよう気をつけましょう。
なお死亡配偶者の親族との関係を再度築きたいときには、相手と養子縁組を行うことにより別の形で関係復活が可能です。
法事・法要でトラブルになる可能性
生前に配偶者自身と仲は良くても、義理家族との折り合いが悪かったために婚姻関係終了届の選択をした方は、死亡配偶者の法事・法要の際に悩むことになるかもしれません。
死亡配偶者の法事・法要をどちらが行うか、誰を呼ぶか・呼ばないかでトラブルが起こる可能性があるからです。
また死亡配偶者の親族側が法事・法要を営むことになった場合や、死亡配偶者の遺骨が配偶者親族の先祖代々の墓に埋葬されたときには、法事・法要への参加やお墓参りが難しくなる可能性も考えておきましょう。
死亡配偶者親族からの援助は望めない
配偶者の生存中に義理家族から子供の教育費用などの援助を受けていた方は、婚姻関係終了届を提出した後は援助を打ち切られる可能性があることも覚悟しておきましょう。
こちらから関係を断ち切っておきながら、都合の良いときだけ配偶者親族を頼ることはできません。
また状況によっては、これまで与えていた援助相当額の返却を求められる可能性もあります。
婚姻関係終了届の提出により金銭的なやりとりは本来発生しないものの、相手が返還請求などをしてきた場合には何らかの対処が必要です。
お墓を自分で用意する必要がある
配偶者が亡くなっていたとしても、生存配偶者がその後死亡したときには死亡配偶者の先祖代々のお墓で一緒に眠ることができます。
しかし婚姻関係終了届を提出するとお墓の管理者との関係も断ち切られるため、配偶者と同じ墓に埋葬してもらえる可能性はほとんどありません。
生存配偶者の実家のお墓に埋葬してもらうか、もしくは自分でお墓を用意する必要があります。
なお「おひとりさま」が自分のお墓を探すときには、同じ境遇にある墓友と一緒に探しても良いかもしれません。
墓友とは何か、墓友と一緒にお墓を探す方法については以下の記事をご覧ください。
墓友とは?おひとりさまが終活で墓友を探す方法、注意点を解説婚姻関係終了届を出しても変わらないこと
婚姻関係終了届、いわゆる死後離婚は、配偶者の生存中に行う通常の離婚とは状況が異なります。
通常の離婚では影響が生じるところが、婚姻関係終了届による死後離婚では変わらないことが多いからです。
以下からは、婚姻関係終了届を出しても変わらない点について確認していきましょう。
名字
通常の離婚では離婚届を提出する際に、離婚後の名字を旧姓に戻すかどうか選択ができます。
しかし婚姻関係終了届では、名字は結婚時のまま変わりません。婚姻関係終了届を出した後に旧姓に戻したい方は、別に復氏届という書類を提出する必要があります。
また自分だけでなく子供の姓も旧姓に戻したいときには、家庭裁判所への申し立ても必要になります。
遺族年金
遺族年金とは、配偶者の収入によって生計を維持されていた方がもらえる年金です。亡くなった方がかけていた年金の種類により遺族基礎年金と遺族厚生年金の2つに分かれます。
遺族基礎年金・遺族厚生年金のいずれも、婚姻関係終了届の手続きの有無は支給要件に影響しません。たとえ婚姻関係終了届を出していたとしても、遺族年金はそのまま受け取れます。
遺族年金に関する詳しい説明や遺族年金の支給額などについては、以下の記事をご覧ください。
遺族年金とは|万が一の際はいくらもらえるかを解説相続
配偶者は亡くなった方の財産を最優先で相続できる権利があります。
この権利は、婚姻関係終了届を出した後でも変わりません。婚姻関係終了届を出しても生存配偶者が死亡配偶者の法定相続人である事実には変わりないため、死亡配偶者の財産がそのまま相続されます。
また死亡配偶者と生存配偶者の子供は、子供から見た祖父母の財産を死亡配偶者に代わって相続できます。これを代襲相続と呼びます。
代襲相続に関しても法定相続の相続順位は変わらないため、親が婚姻関係終了届を出した事実により子供がどのような状況で生活していたとしても、相続に与える影響はありません。
法定相続人について知りたい方は以下の記事をお読みください。
法定相続人とは|法定相続分の割合とケース毎の分割方法の決まり方しかし相続の権利が変わらないとすると、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続しなければいけなくなります。
死亡配偶者にマイナスの財産しかなかったときには、直ちに相続放棄の手続きをすることをおすすめします。
相続放棄の方法は以下の記事で詳しく解説しています。
相続放棄の方法をわかりやすく解説|期間や費用・申述手続きの流れ婚姻関係終了届提出後の新たな旅立ち
婚姻関係終了届によるメリットのひとつが「気持ちの区切りがつけられること」だと、上記で説明しました。
婚姻関係終了届で気持ちに区切りをつけた後は、スッキリした気持ちで新たな人生に向かう準備を始めましょう。
再び人生のパートナーに迎えたいと思える方が見つかったら、熟年再婚をしてもう一度幸せになる道を探しても良いかもしれません。
以下の記事では熟年再婚のメリット・デメリットについて解説しています。本記事と合わせて新しい幸せの参考にしてください。
熟年再婚のメリット・デメリット|幸せになるためのチェック項目まとめ
今回は婚姻関係終了届(姻族関係終了届)のメリットとデメリットについて解説しました。
配偶者を亡くしたとしても、残された夫もしくは妻の人生はそれからも長く続きます。
必要に応じて婚姻関係終了届などの手続きを取り、次の人生に向かって力強い一歩を踏み出しましょう。
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