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遺言書の種類や決まり・書き方を徹底解説|自筆証書遺言サンプルあり

遺言書

この記事のサマリ
  • 遺言書は自分の没後処理について指定できる文書
  • 遺言書の種類は3種類
  • 法律にのっとった正確な記載が必要

「万が一自分が死んでも、大きな財産は持っていないから特に問題ない」そう考えている人は多いようです。

ですが、相続トラブルは何もお金持ちだけの心配事ではありません。平成28年に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事件のうち、遺産額が1,000万円以下の事件が33%あったということからも分かるように、一般的な家庭であっても、相続金額でのもめごとは多いのです。

いざというときのためのお守りとして、遺言書を書いておけば安心です。

しかし遺言書はどうやって書けば良いのでしょうか。書き方に細かい決まりはあるのでしょうか。

遺言書の書き方について、今のうちに学んでおきましょう。

財産承継先を自分で決められる遺言書

家族

遺言書とは、死んだあとの遺産の処分方法などについて書かれた文書です。満15歳から残すことができます。

書いた人が健康か病気にかかっているかは関係ありません。身寄りの有無や承継財産の多い少ないに関わらず、遺言書は残すことができます。

遺言書作成のメリットは、財産の承継先を自分自身が決められる点です。好きな人やお世話になった人への気持ちを伝えられるだけでなく、親族間の遺産争いを未然に防げることもあります。

遺言書に書かれる内容

遺言書によって指定できる内容を法定遺言事項と言います。法定遺言事項は以下の4つです。

相続に関する事項 相続人の指定、遺産分割の割合、相続人廃除など
その他財産の承継・処分に関する事項 遺贈、信託、財団法人の設立など
身分に関する事項 認知、未成年後見人の指定など
その他の事項 祭祀の主宰など

遺言書の法的な効力

故人の最期の意志を尊重するため、遺言は法律により保護されています。遺産の取り扱いについても遺言書があれば法定相続よりも優先されます。

ただし、そのためには遺言書が法律にのっとって正しく書かれている必要があります。正しくない形式や内容の遺言はすべて無効です。

また、認知症患者や知的障害者など意思能力に欠いた人が遺言書を書いても、正式な遺言書だとは基本的に認められません。

遺言書の有効期間

遺言書には有効期間はありません。そのため、何十年も前に書かれた遺言書であっても正規の遺言書だと認められます。

ですが年月が経つと、相続先として指定していた相手の方が先に亡くなる可能性もあります。そのような場合に備えて、状況の変化に対応するための予備的遺言も入れておくことができます。

遺言書の種類

遺言書の種類は、大きく分けて3種類あります。

遺言を残す人の状況に合わせて適切な遺言書を選択しましょう。

自筆証書遺言

遺言者が遺言内容を自分で手書き作成する遺言書です。

一般的な遺言書として広く知られているもので、多くの遺言書はこれにあたります。紙とペンさえあれば作成できるので、費用を抑えることができます。

公正証書遺言

公証役場で公証人が作成する遺言書です。遺言者は公証人に向けて遺言したい内容を話し、その内容を公証人が文章にまとめて作成します。

相続財産が高額で、法的に確実な遺言書を残しておきたい場合には公正証書遺言がベストです。また健康上の理由により自分で字が書けない人でも、公正証書遺言なら公証人が代筆してくれます。ただし最後の署名だけは自著を求められます。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言者が自分で手書きしたものを公証人が封印して公証役場に保管する遺言書です。

遺言の内容を身内だけでなく証人にも、公証人にすら明かしたくないという人が利用します。

「遺書」と「遺言書」の違い

遺言書と似ている言葉に「遺書」がありますが、この2つは意味合いが異なります。

  • 遺書→死を目前にした人が周囲に向けて書き残す手紙(法的な効力はない)
  • 遺言書→死後の財産分与などを定めるための文書(法的な効力がある)

広い意味で考えれば「遺言書」も「遺書」の一種ではありますが、上記のような違いがありますので覚えておきましょう。

遺言書の書き方

契約書

自筆証書遺言に記載する要件は、民法により定められています。

第968条(自筆証書遺言)
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

また、遺言事項は正確に明記しなければなりません。不動産であれば登記簿謄本と同じ書き方にしなければ相続財産として認められず、預貯金や株式証券などは銀行名・支店名まで書く必要があります。

自筆証書遺言

画像引用:法務省|参考資料より

書くべき事項さえきちんと押さえておけば、様式は遺言者の自由です。筆記具や紙のサイズ、縦書き・横書きにも制限はありませんが、鉛筆や消せるボールペンの使用は変造を防止するため控えましょう。

2019年から一部パソコン作成が可能に

2018年の相続法改正により、自筆証書遺言の要件が一部緩和されることとなりました。

2019年1月13日以降に書かれた遺言書からは、添付書類である財産目録をパソコン等で作成できるようになっています。

また、不動産の登記簿謄本や預貯金や有価証券の残高証明書なども、コピーで証明が可能です。ただし、財産目録を遺言者が確実に作成したことを証明するため、財産目録の全てのページに自筆で署名し、捺印する必要があります。

これまでの自筆証書遺言は、遺言書だけでなく添付書類もすべて手書きする必要がありましたが、この法改正により作成の手間が軽減できます。

ただし遺言書本体については、これまでどおり手書きする必要がありますから注意してください。

2020年から自筆証書遺言が法務局で保管できるように

同じく2018年の相続法改正により、自筆証書遺言が法務局で保管できるようになりました。

自宅で保管していると、いざというときに家族が遺言書を見つけられない可能性があります。また誰かが遺言書を改ざんする恐れもありますので、法務局で安全に保管してもらえるのはありがたい制度です。

法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)が施行されるのは2020年7月10日です。

遺言書に好きなことを書いて良い?

海辺の親子

法定遺言事項ではありませんが、遺言書には自分の気持ちや遺言の意図などを書くこともできます。これを付言事項と呼びます。

家族への感謝の言葉や、自分がどうしてこのような遺言を残したのかなど、残された人たちへ伝えることができます。

遺言書を読んだ相手もきちんとした理由が書いてあることで納得でき、その後のトラブルも避けやすくなります。

遺言書の内容に納得がいかない場合

遺産をすべて単独の誰かに相続させるといった内容の遺言書だと、他の法定相続人にとっては面白くないでしょう。

遺留分を侵害されている場合、遺留分は当然の権利なので、相手方に対して請求しましょう。請求したにもかかわらず相手方が支払わない場合は、家庭裁判所へ遺産分割の調停を申立てます。

遺言書作成の際に守るべきポイント

緑の中の本

遺言書は法律文書であり、間違った書き方をすると有効な文書として認められません。

また、内容によっては残された親族間でイザコザが起きる原因にもなります。

自分の死後にトラブルを招かないためにも、遺言書作成時に守るべきポイントを押さえておきましょう。

遺言は正確かつ具体的に

自身が所有している財産の種類と価値を正確に把握し、情報に漏れがないようにすべて記載します。

「誰に」「何を」「どうする」を具体的に書くことが大切です。

また、不動産情報などは文言を省略せずに正確に記載しましょう。

遺留分を考慮した内容に

法定相続人には、相続財産を一定の割合でもらえる遺留分の権利があります。

上記のように相手方に遺留分を請求する、もしくは家庭裁判所に調停を申し立てれば、遺留分は受け取れますが、関係者の間にわだかまりを残さないためにも、あらかじめ遺留分を考慮した遺言書にしておくことをおすすめします。

遺言書の存在を伝えておく

せっかく遺言書を作成しても、その存在を誰も知らなければ意味がありません。

内容まで明かす必要はありませんが、遺言書がある事実だけは信頼できる誰かに伝えておきましょう。

専門家のアドバイスを受ける

遺言は自分が死んでから効力を発揮するので、やり直しができません。

自己判断で「これなら大丈夫だろう」と思っていても、実際には大丈夫ではなかったということもあります。

弁護士などの専門家に相談してアドバイスを受けながら、確実に効力を発揮できるような遺言書を作成しましょう。

まとめ

ラベンダー

今回は遺言書の書き方について解説しました。

自分が死ぬときのことはなかなか想像できませんが、いつ何が起こるかは誰にもわかりません。

しっかりした備えの元に、安心して人生を楽しみましょう。

監修 | 行政書士 橋本玲子
行政書士事務所経営。専門は知的財産ですが、許認可から相続まであらゆる業務を行っています。また、遺言執行や任意後見関係を専門とする社団法人の理事もしています。アドバイスや業務遂行でお客様の問題が解決するととても嬉しくやりがいを感じます。行政書士ほか、宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級の資格所持。

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