- 「勘当」は目上の人(親など)が目下の人(子供など)との縁を切る言葉
- 子供から親との縁を切るときには勘当ではなく「絶縁」
- 勘当あるいは絶縁しても親子関係はなくならない
- できるだけ子供から勘当状態に近づけるための対策を4つ紹介
親が自分の子供との縁を切ることは一般的に「勘当」と呼ばれます。
では子供から自分の親を「勘当」することはできるのでしょうか。
すべての親が子供に対して愛情深い存在とは限りません。親の中には子供に対して肉体的・精神的・経済的な虐待を平気で行う「毒親」も存在します。
今回は不幸にして毒親を持ってしまった人に向けて、子供から親を勘当できるかの可否を説明しながら、子供が毒親から逃れるために取れる対策を解説していきます。
目次
子供から勘当はできるか

親を勘当したいと願っている人にとっては残念な答えとなりますが、子供から親を勘当することはできません。
勘当とはそもそも、目上の立場の人物が目下の人物に対して縁切りを告げる言葉です。親子関係で言えば親が目上の立場になりますので、目下の立場である子供からは勘当ができないことになります。
勘当の意味については以下の記事で詳しく解説していますので、本記事と合わせてご覧ください。
目下の立場である子供から親を縁切りする場合には、勘当ではなく「絶縁」という言葉を用います。
絶縁は親子関係だけでなく、幅広い対人関係の縁切りを指す言葉です。具体的な違いはや由来については以下の記事でご確認ください。
勘当や絶縁しても親子関係はなくならない

勘当と絶縁の意味については上記で理解したところですが、そもそも勘当や絶縁をしても実際には親子関係はなくなりません。
なぜなら勘当や絶縁は法律で認められた制度ではないため、勘当もしくは絶縁をしたいと思っても法律上の手続きが存在しないからです。
満15歳未満の子供であれば特別養子縁組制度を用いて法律上の絶縁をすることは可能ですが、成人した子供が法的に親との縁を切ることは、少なくとも日本では不可能です。
できるだけ子供から勘当に近づける4つの方法

親子関係を法的に解消することは不可能だとしても、人として許せないふるまいをされてきた子供としては、何としてでも親との縁をできる限り薄くしたい、できることなら限りなく勘当や絶縁に近づけたいと強く願っていることでしょう。
そこで以下からは法的に認められた範囲内で、できるだけ子供から勘当状態に近づける方法を4つご紹介します。
1.子供から親に絶縁状を送る
絶縁状とは、絶縁したい相手に対して「私はあなたと絶縁します」と通告する書状です。絶縁状を送っても法的な効力はありませんが、子供から親に対するこれまでの思いをぶつけることができ、気持ちがスッキリできると考えられます。
本来であれば「勘当」は子供からはできませんが、これまでの親のふるまいからして目上の人間だとはどうしても認識できない人は、あえて絶縁状を「勘当状」と書き換えて送りつけても良いかもしれません。
勘当状も絶縁状も、どちらも送られた側には大きな衝撃を与える書状です。勘当と絶縁の違いなど、ささいな違いにしか思えないでしょう。
絶縁状の書き方は以下の記事で詳しく解説しています。
2.遠方に引っ越し住民票の閲覧制限をする
誰かと二度と会いたくないときには、まずは物理的な距離を取るのが一番有効です。
親の住まいと遠く離れた地域に引っ越し、勘当した親と街中でばったり出くわさないようにしましょう。
引っ越しして住民票を新住所に移すときには、同時に住民票の閲覧制限をかけることをおすすめします。
住民票の閲覧制限とは、住民基本台帳事務における支援措置により住民票や戸籍の附票をDV・家庭内虐待の加害者が閲覧できなくする制度のことです。
閲覧制限をするためには警察や公的機関への相談を経て、閲覧を制限する必要性を認めてもらう必要がありますが、支援が開始されれば勘当・絶縁を通告されて怒り狂った親が子供の自宅に乗り込んで来るのを防げます。
参考 配偶者からの暴力(DV)、ストーカー行為等、児童虐待及びこれらに準ずる行為の被害者の方は、申出によって、住民票の写し等の交付等を制限できます。総務省3.分籍届を出す
分籍届とは、戸籍の筆頭者および筆頭者の配偶者以外の家族が新しい戸籍を作るために市区町村役場に提出する届出のことです。
結婚するときには親の戸籍から抜けて夫婦としての新しい戸籍を作りますが、成人している人であれば結婚しなくても新しく戸籍が作れます。
分籍届を出せば戸籍上は親から独立したことになり、本籍地も自由に設定ができます。
ただし分籍しても親子関係は変わりませんし、新しい戸籍には親の氏名が記載されているため完全に親を消し去ることはできません。
あくまでも気持ちの問題とはなりますが、親を勘当して独立したという気分は味わえるでしょう。
4.改名する
親との縁を断ち切って、まったく新しい人生を始めたいという場合、戸籍上の名前を改名するという方法もあります。
出生時にいわゆる「キラキラネーム」を親から名付けられ、それにより親を勘当したくなっている人には効果的な方法です。また改名により親が自分の所在を探しにくくなるという利点もあります。
ただし改名をするには家庭裁判所の許可を得る必要があり、正当な事由がないと認められないので注意してください。
改名が認められる主なケースは以下のとおりです。
《改名が認められる例》
・通称名を長年使用しており、戸籍名を使うことで生活に支障が出ている
・奇妙・珍奇な名前により社会生活上著しい不便がある
・同姓同名が多くて生活に不便がある
・異性に間違えられやすい名前である
・神官・僧侶などになった(やめた)
戸籍上の改名が認められなくても、仕事や日常生活で新しい名前(通称名)を名乗って生活することは可能です。通称名の実績を積んでから再度改名にチャレンジしても良いでしょう。
勘当中の親の世話を放棄すると罪になる?

上記4つの方法を使って親との交流を断てば、毒親に悩まされない快適な生活を手に入れられると期待している人が多いかもしれません。
ですが、親との関係性はそう簡単に切ることはできません。勘当した親が経済的に困窮したり、病気や要介護状態になったときには、親を扶養したり看護・介護する責任が子供にのしかかってきます。
民法では「直系血族(祖父母・親・子・孫など)および兄弟姉妹は互いに扶養する義務がある」と定められています。扶養の義務は以下の2種類です。
| 生活保持義務 | 自分と同程度の生活レベルに達するまで経済的に援助する義務 |
| 生活扶助義務 | 自分の生活に支障のない範囲で援助し、相手の最低限度の生活を保障する義務 |
経済的その他の事情で親が困っている事実を知っていながら、何の対処もせずに放置していると、状況によっては保護責任者遺棄罪などの罪に問われる可能性があるので注意してください、
毒親を扶養したくないときに取れる手段
直系血族には互いの扶養義務がありますが、扶養はあくまでも「できる範囲で」尽くすものです。自分自身が経済的にギリギリの生活を送っていたり、明らかに関係が破綻している間柄の人物まで扶養しろと言うわけではありません。
親が扶養料の支払いを求めて家庭裁判所に調停・審判を申し立てた場合には、裁判官や調停員にこれまでの事情を主張することで扶養義務を免除される可能性があります。
また親が生活保護を申請すると子供に自治体から扶養照会(扶養できるか確認)が届きますが、経済的な理由や親との関係破綻などの理由があれば扶養を拒否できます。
いずれにしても、親の困窮を知ってしまったら何の対処もしないで放置しておくのは愚策です。早急に行政等に相談して解決策を見つけることをおすすめします。
子供から勘当した後の相続対策

親との関係性は、親あるいは自分自身が亡くなった後も相続という形で続きます。
生きている間のことだけでなく、親や自分の死後についてもきちんと考えておきましょう。
以下からは子供から勘当した後に親が亡くなったときの相続、また親よりも先に自分自身が亡くなったときの相続をどうしたら良いかについて説明します。
親の遺産を相続したくないとき
勘当したくなるほど親と不仲だった場合、たとえ親が亡くなったとしても借りは作りたくない、遺産はビタ一文とも貰いたくないと考えても無理はありません。
また親の生前における経済状況によっては、遺産がプラスではなくマイナス遺産の可能性もあります。
親の遺産を相続したくない人には相続放棄という選択肢があります。
相続放棄するときには親が亡くなったとき、あるいは自分が相続人になった事実を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ相続放棄の申述書を提出する必要があります。相続放棄の意思を口頭で伝えるだけでは認められません。
以下の記事を参考に、速やかに手続きしてください。
また、相続放棄しようとする人は親の死後にやってはいけない事柄があります。以下の記事もあわせて確認しておきましょう。
自分の遺産を親に渡したくないとき
被相続人(亡くなった人)に子供がいないときには、親は法定相続人の1人に指定されます。
自分の遺産によって親が得をするのが耐えられないという人は、あらかじめ遺言状を書き、特定の人や団体に相続させると指示しておく方法により親への相続財産を減らすことができます。
ただし親には遺留分請求権があるため、遺言状を書いてもまったく相続させないというわけにはいきません。
どうしても親に自分の財産を渡したくないという人は、以下の記事で遺言以外の対策もチェックしてみてください。
まとめ

子供から親を勘当する方法を知りたくてこの記事を読んだ人も、本当なら勘当まで考えたくはなかったことでしょう。
しかし親と呼ばれる人の中には、残念ながら勘当もやむなしという親、子供からの愛情を受けるに値しない親がいるのも事実です。
毒親のために自分がこれ以上苦しい思いをしないよう、必要とあらば子供から勘当をして、自分の身と心を最大限に守る決断をしましょう。
ライター紹介 | 杉田 Sugita終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!
