- 高齢者の入院・施設入所では身元保証人が必要になるケースがある
- 家族がいない人や家族が高齢な場合には身元保証人を探すのが難しい
- 身元保証サービスとは親族以外がいざというときの身元保証をしてくれるサービス
- 身元保証サービスは高額なので契約前に十分な確認が必要(チェックリスト有)
病気やケガで入院するときや、介護施設に入居するときに病院や介護施設から身元保証人を求められるケースがあります。
配偶者や子どもなどの家族が身元保証人になってくれれば解決ですが、身寄りのない高齢者は身元保証人になってもらえる相手探しに難儀するかもしれません。
今回は家族に身元保証人を頼めない人のために、家族や親族以外でも身元を保証してくれる身元保証サービスについて解説します。
目次
高齢者に身元保証人が必要になるケースとは
高齢者が身元保証人を求められる状況は、主に入院や介護施設への入所申し込みをするときです。
入院や介護施設への入所は、本人が身体ひとつで行けば良いわけではなく、さまざまな準備が必要です。また入院中や退院・退所時、そして本人の死後にもいくつかの残処理があります。
病院や介護施設が身元保証人を求める理由とは、身元保証人に以下のような対応をしてもらうためです。
- 入院・入所に必要な物品の準備
- 入院・入所の手続きの代理
- 保証金の支払い
- 入院・入所中に足りなくなった物品の手配
- 治療方針・ケアプランの同意(本人の判断能力が不十分な場合)
- 緊急連絡先の設定および緊急時の対応
- 退院・退所時の費用支払
- 退院・退所時の身元引き受け
- 死亡時の遺体引き取り
上記のうち入院保証金については以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
高齢夫婦のみの世帯や独身は身元保証が困難
身元保証人になれる人とは、経済的に自立していて一定以上の安定収入があり、心身ともに健康な成人です。
入院・施設入所をする本人の身元をきちんと保証できることが条件になりますので、身元保証する当人が不安定な収入や状況であっては身元保証が成り立ちません。
入院・施設入所する本人に子どもがいないと、本人の家族は高齢の配偶者や親・兄弟姉妹だけになりますので、身元保証人として認められない可能性があります。
また、生涯未婚率の増加でおひとりさま世帯が増えています。親兄弟がおらず未婚もしくは配偶者に先立たれた人は、認められるか否かにかかわらず身元保証人の候補となるべき家族が存在しません。
生涯独身の人や配偶者に先立たれた高齢者の老後には、入院・施設入所時の身元保証以外にもいくつかの問題があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
高齢者の身元保証をしてくれるサービスとは
独身や高齢夫婦のみの世帯だと、身元保証をしてくれる家族がいないために入院・施設入所できないと心配になった人がいるかもしれません。
安心してください。家族や親族でなくても高齢者の身元保証をしてくれるサービスがあります。
多くの民間企業・NPO法人・社会福祉協議会などが、高齢者の身元保証サービスを提供しています。病院や介護施設に対する金銭的な保証だけでなく、相手方が必要とする手続きや諸手配までトータルに請け負ってくれるサービスですので、家族に身元保証人を頼めない高齢者は検討に値します。
身元保証サービス事業者が提供するサービス
高齢者の身元保証サービスは、入院・施設入所時の身元保証だけではありません。
サービス提供事業者や加入プランによって異なりますが、多くの身元保証サービス提供事業者では以下3つのサービスをまとめて提供しています。
1.身元保証サービス
入院や介護施設への入所をする際に、病院や介護施設に対しての身元保証を行うサービスです。入所・入所でかかる費用の連帯保証に加え、上記で説明したさまざまな手続きの支援を行います。
2.生活支援サービス
日々の生活に対する支援を行うサービスです。具体的には以下のような支援が可能となります。
- 通院の送迎や付添い
- 買物への同行または代行
- 生活費の管理(公共料金等の支払代行含む)
- 年金や介護サービスの受給手続き代行
- 家具や日用品の処分
- 印鑑・印鑑登録カード等の重要書類保管
- 成年後見人の就任
3.死後事務サービス
契約者が亡くなった後の諸手続きを行うサービスです。具体的には以下のような手続きが行えます。
- 死亡の確認および遺体引き取り
- 病院や介護施設に対する費用清算、残置物の引き上げ
- 関係者への連絡
- 葬儀・埋葬の手配
- 行政機関への手続き
- ライフライン等の解約手続き
- 相続支援(遺品目録の作成など)
身元保証サービスの流れ
身元保証サービスの利用を検討し始めてから、実際にサービスが終了するまでのトータルな流れは以下のとおりです。
身元保証サービス開始前
身元保証サービス開始前の流れは以下のとおりです。
身元保証サービス開始後
契約者に困ったことが生じたときや、契約者の希望に応じて「生活支援サービス」や「入院・入所時の身元保証サービス」を実施します。
事業者やプランによっては24時間365日の電話相談を受けられるところもあります。
また契約者の判断能力が不十分になった場合には、サービス提供事業者が成年後見人に任命されます。
契約者の死後
契約者が亡くなったときには、契約者とサービス提供事業者があらかじめ取り決めておいた方法にのっとり「死後事務サービス」を実施します。
葬儀・埋葬にかかる費用や病院・介護施設に対する費用の清算、自宅や家財の処分費用には預託金が用いられます。
すべての死後処理が完了し、相続人や監督団体への業務完了報告がなされた時点で身元保証サービスは終了となります。
身元保証サービスにかかる費用
身元保証サービスにかかる費用はサービス提供事業者や契約プランによって異なりますが、総務省の報告書では以下の費用が例として挙げられています。
基本料 | 22万~66万円 |
契約手数料 | 10万~13万円 |
身元保証料 | 1万~33万円 |
生活支援費用 | 月会費・都度請求など事業者により異なる |
死後事務費用(預託金) | 50万~120万円 |
上記のうち生活支援費用を除く費用は契約時の支払いが一般的ですので、身元保証サービスを利用するときには100万円以上の現金を用意しておかなければいけなくなります。
参考 身元保証等高齢者サポート事業における消費者保護の推進に関する調査 結果報告書総務省身元保証サービス事業者の探しかた
身元保証サービスを利用したいと思ったときには、どうやってサービス提供事業者を探せば良いでしょうか。
身元保証サービス提供事業者はインターネットで検索しても見つけることができますが、おすすめの探しかたは地域包括支援センターへの相談です。
地域包括支援センターは管轄地域に住む高齢者のよろず相談窓口として、高齢者が必要とする介護サービスやその他サービスの提供事業者との橋渡しの役目を担ってくれる存在です。
身元保証サービスについても豊富な知識を元に、信頼のおける提供事業者を紹介してくれる確率が高まります。
お住いの自治体にある地域包括支援センターは、自治体の公式サイトや市区町村役場の担当窓口で調べられます。
身元保証サービスを選ぶポイント
身元保証サービスの運営に関する制度や法律は、まだきちんと定められていません。
そのため各事業者の事業形態やサービス内容はまちまちで、中には契約者の財産を不当に取り上げるような悪徳事業者がいることも考えられます。
以下からは信頼できる身元保証サービス提供事業者を選ぶためにチェックしておきたい3つのポイントを説明します。
1.消費者庁ガイドラインを遵守しているか
身元保証サービスに関する法律はまだありませんが、消費者庁では高齢者等終身サポート事業(身元保証サービス)を提供する事業者向けにガイドラインを策定しています。
ガイドラインではサービス内容や預託金の扱い、解約時の返金規定など身元保証サービスの提供に際して関連する法律上の規定や留意事項が網羅されていますので、このガイドラインに沿った運営がなされている事業者であれば一定の安心ができます。
身元保証サービスを検討している人がガイドラインを簡単に確認できるチェックリストも用意されています。各事業者に問い合わせや相談をする際には以下リンクのチェックリストを印刷しておくと便利です。
参考 チェックリスト消費者庁2.安さばかりを売りにしていないか
上記でも説明したとおり、身元保証サービスの費用は決して安価ではありません。
しかし考えてみれば、ひと1人の人生を保証するのですから費用が高額になるのはある意味当然です。
逆にあまりにも安すぎる身元保証サービスは、契約者にとって必要なサービスが含まれていないか、契約がスタートしてから高額な費用を別途請求されるなど、何か裏がある可能性があります。
目先の安さにつられず、契約書の文言をしっかり確認しましょう。
3.第三者機関の監視があるか
身元保証サービス提供事業者に支払う費用の中でも、預託金は自分の財産を死後のために託しておく重要なお金です。
一般的に預託金は信託口座を開設し、第三者機関の監視の下で管理されます。もし預託金が適切な監視下におかれていなかったら、大切な財産をサービス提供事業者に使い込まれてしまうかもしれません。
預託金の取り扱いについては、特に納得のいくまで確認しましょう。
身元保証サポートの契約トラブルに注意
どんなに注意して契約したとしても、契約後に思いがけないトラブルに見舞われることはあります。
国民生活センターへは、毎年100件近くの身元保証サービスにまつわる契約トラブルの相談が寄せられています。
《身元保証サービス契約トラブルの主な事例》
・サービス内容をよく理解しないままに契約してしまった
・預託金に関して詳細な説明がない
・契約するつもりがなかったサービスが含まれている
・解約時の返金に納得できない
身元保証サービスの契約後、または契約前でも納得がいかない事態が発生した際には、すぐに消費生活センター等に相談しましょう。
消費生活ホットラインの電話番号は「188」です。「契約トラブルは嫌や(188)!」と覚えておいてください。
まとめ
今回は高齢者の身元保証サービスとは何かについて解説しました。
普段は健康な人でも、高齢になれば突然に入院する事態になる可能性も考えられます。いざというときに安心して治療に専念できるよう、いまから身元保証サービスの利用を検討しておきましょう。

終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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