- 没イチ=配偶者に先立たれた方のこと
- 残りの人生を前向きに生きるために作られた言葉
- 仕事や趣味を通じて生きがいを見つけることが大切
「没イチ」という言葉をご存じでしょうか。「没」の字があることで後ろ向きに捉えてしまいがちですが、何を意味しているのでしょうか?
今回は没イチとは何か、没イチの方が豊かな老後を過ごすための方法とは何かをご紹介します。
目次
没イチとは|配偶者と死別して1人になったこと
没イチとは、配偶者と死別した経験を持つ方々を指す言葉です。
以前から同様の境遇の方は「遺族」という言葉の中に含まれてきましたが、「人生100年時代」というワードの広まりと共に、没イチという呼称が広まりを見せています。
残された配偶者が前向きに生きていくための言葉
「没イチ」という言葉は、第一生命経済研究所の主席研究員である、小谷みどり氏が結成した「没イチ会」のメンバーによって2012年に提案されました。(参考:小谷みどり 2018年「没イチ」新潮社)
「認知度が低いこと」「『没』という字を使っていること」などから後ろ向きなイメージを持たれることも珍しくありません。
しかし、この言葉が生まれた意図は、決して悲観的な意味ではありません。
「配偶者の分まで前向きに生きてほしい」という願いを込めており、離婚したことを前向きにとらえる「バツイチ」を参考に作られたものです。
没イチの人数は増加傾向にある
2021年現在、没イチに該当する方は増加傾向にあります。なぜ、増加しているのでしょうか。その背景を解説します。
平均寿命が延びている
日本人の平均寿命は年々伸びており、2021年現在は男性の平均寿命が81.41歳、女性に至っては87.45歳とそれぞれ過去最高を更新しています。
仮に60歳前後で没イチになってしまった場合には、男性は約20年、女性は約27年にもわたって没イチの期間が続くことが考えられます。
平均寿命が長い女性が没イチになる
2015年の国勢調査で、没イチは全国に約958万人いることが分かっています。その大半(約8割)が平均寿命が長い女性が占めているのも特徴的です。
参考 平成27年度人口等基本集計結果(26P)国勢調査また、没イチは2010年の941万人から17万人増加しており、今後も平均寿命の伸びによって没イチの方は増加すると考えられます。
没イチになると起こる事
没イチといっても、何が問題なのかピンとこない方もいるかもしれません。実際、何が問題なのでしょうか。
没イチになる時には相当な高齢になっている
前述の通り、平均寿命は年々伸び続けています。
厚生労働省が発表している「平均余命の年次推移」によれば、平成元年の平均寿命は男性が75.91歳、女性が81.77歳とでしたが、2021年現在、男性の平均寿命は81.41歳、女性87.45歳となっており、没イチになる年齢が70代から80代へと高齢化しています。
高齢になって身体が弱ってきているタイミングで、没イチを迎えることになります。
夫婦2人暮らしだった場合は急に1人暮らしに
かつては親世代と子世代、孫世代という3世代が同居するのが一般的で、没イチになった後も子供や孫と一緒に生きていくことで、1人にはならずに他の家族と暮らせることができていました。
しかし、今では親世代と子世代が別々の住宅に住む「核家族化」が進んでいるため、配偶者の死をきっかけに、突然一人暮らしが始まってしまうことも考えられます。
友人が少ない人は孤独に
日本の高齢者は、そもそも諸外国に比べて友人が少ない傾向にあります。
2015年に内閣府が実施した国際比較調査によれば、家族以外に相談あるいは世話し合う親しい友人はいるか」の問いに「いない」と答えた日本人は25.9%である一方、米国では11.9%、スウェーデンに至っては8.9%という結果になっています。
また、スウェーデンでは6割近く、アメリカでも4割以上の高齢者が「異性の友人がいる」と回答しています。日本で異性の友人がいる回答者13.8%とは対照的です。
没イチであるかどうかの前に、日本の高齢者は友人関係が希薄であることが分かります。
参考 平成27年度高齢者の生活と意識に関する国際比較調査内閣府没イチになっても人生を楽しむ
没イチになった方が人生を楽しむには、没頭できる何かを見つけることが近道です。子供世代と離れて暮らす1人暮らしを寂しいと感じるのではなく、1人でアグレッシブに行動することで新しい出会いが見つかります。
没イチの方が人生を楽しむためのヒントを紹介します。
趣味がある仲間と会う
老後を豊かにしてくれる潤滑剤は、やはり「趣味」でしょう。子供や孫世代と同居していない没イチの方は、自由な時間が多いと思われるので、今までチャレンジしてこなかったジャンルの趣味をはじめてはいかがでしょうか。
趣味を持つことで得られるメリットととして、認知症の防止の効果も期待できます。
国立研究開発法人国立長寿医療研究センターによれば、休日に「家でごろ寝」「買い物や外食」をしている方に比べ「趣味」をしている方の方が認知機能の低下リスクが低いと発表されています。
また、共通の趣味を通じて交流することで新しい友人も見つけやすいでしょう。
「初めてで恥をかくかも・・・」と考えてしまうこともあるかもしれませんが、心配無用です。高齢者のサークルではその道のプロのような熟練者から、昨日始めたばかりの初心者まで多くのレベルの方が在籍しているからです。
自分のレベルは気にせずに、気軽に参加してみると新しい出会いがあるでしょう。
老後の趣味の見つけ方。これから優先したいことは「趣味」が5割バリバリ仕事をする
なかなか自分の趣味が見つけられない方は、現役時代のようにバリバリと働くというのも選択肢のひとつです。
現在は労働力不足が叫ばれて久しく、資格やスキルをもった高齢者をシニア枠で採用する企業もあります。現役時代にお世話になった会社に声をかけてみることも良いでしょう。
正社員でなくても、「シルバー人材センター」など働き口の見つけ方も多様化しているので、働いて収入を得れば、老後の金銭的不安が解消することも期待できます。
老後に働くための資格7選|取得しやすく働きやすいシニア向け資格の取り方一人でゆっくりと旅行を楽しむ
高齢者の旅行と聞くと「添乗員を伴った団体旅行」というイメージが強いですが、集団行動が億劫に感じる方もいるのではないでしょうか。
そのような方は、一人でぶらりと出かける旅行がおすすめです。最近では「おひとり様限定ツアー」がテレビでも話題になっています。足腰に自信がない方でも「完全バリアフリー」の温泉宿を利用すれば、問題なく楽しめます。
温泉のどのシーンで「どのような動作をするのか」についてあらかじめ考えておくことで、自分の身体に合った温泉宿に巡り合えるでしょう。
車椅子でも温泉へ行きたい!バリアフリーの温泉宿ガイドとおすすめ21選おひとり様は自分の最後を決める「終活」を忘れずに
没イチの方は、子供世代と同居していれば最後は子供や孫に看取ってもらうことが可能です。
しかし現在では「おひとり様で、没イチ」という事例が増加しています。
「一人だから終活なんて必要ない」と思う方も少なくなりませんが、おひとり様だからこそ終活は絶対に必要です。それは「孤独死の危険がある」ことが大きい理由です。家族に最後を看取ってもらえなかった場合、自分の意思を残すことができなくなってしまいます。
家族との話し合いの場を持てなかったことで、自分が思い描いていたような財産分与にならないことも考えられます。
- 遺言書を作成して死後の財産分与を指定する
- エンディングノートを遺して財産の所在と処分方法を書き出す
このような対策を通じて、自分が理想とする財産分与について書面でまとめておくことをおすすめします。
詳しい終活の方法については、以下の記事も参考にしてください。
おひとりさまこそ終活が必要|終活すべき3つの理由とおすすめの方法を解説まとめ
今回は没イチの定義と、没イチの方が豊かな老後を過ごすためのヒントについて解説しました。
没イチは決して後ろ向きの言葉ではなく、人生を前向きに生きるために生まれた言葉です。同じ没イチの方が作るサークルへの参加を通じて、辛い境遇を乗り越えた仲間に出会うこともできるでしょう。
仕事でも趣味でも、没頭できることを持つことが豊かな老後を過ごすための近道です。
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