- 高齢者に運動が必要な理由は「フレイル予防」「免疫力向上」「認知症予防」等
- 高齢者には有酸素運動がおすすめ(筋トレとあわせるとさらに効果的)
- 高齢者におすすめの有酸素運動を6つ紹介
高齢者になると身体が思うように動かせなくなり、運動する機会がだんだんと減ってきてしまいます。
若い頃にはスポーツの趣味を楽しんでいた方でも、年齢を理由にして辞めてしまったという方も多いでしょう。
しかし高齢になってからこそ、運動は健康のために必要です。
今回は高齢者に運動習慣が必要な理由と、高齢者に特におすすめしたい運動を紹介します。
目次
高齢者にこそ運動習慣が必要な理由とは
高齢者にこそ運動習慣が必要な理由は以下のとおりです。
フレイルが予防できる
フレイル(虚弱)とは、加齢により「筋力の低下や活動量の低下」「歩行速度の低下」「易疲労性・体重減少」のうち3つ以上がみられる状態を指します。
フレイルになると高い確率で要介護状態に移行すると言われており、いわばフレイルは介護の一歩手前の状態です。
フレイルになる原因は運動不足と栄養不足です。適切な運動習慣の継続と栄養バランスの良い食事でフレイルが予防できることがわかっています。
サルコペニア・ロコモを改善する
人間の筋肉は加齢により衰えます。加齢や疾患により筋肉が衰えた状態をサルコペニアと呼びます。
また、筋肉や神経が加齢により障害を起こして移動等が困難になる状態をロコモティブシンドローム(ロコモ)と呼びます。
サルコペニアとロコモは共にフレイルを引き起こしやすくなるため、運動やリハビリテーションで改善を図る必要があります。
免疫力がアップする
運動をすると体温が上がり、身体が温まります。適度な体温上昇は血液中の白血球を活性化させ、免疫力がアップします。
風邪やインフルエンザ、また新型コロナウィルスが体内に侵入してきたときにも身体が菌やウィルスと戦いやすくなり、病気に負けない身体作りができます。
自律神経が整う
適度な運動習慣は、自律神経のバランスを整える役目も果たします。
自律神経とは身体のさまざまな機能を支配する神経であり、人の気分にも大きく影響しています。
自律神経には活動時に働く「交感神経」と、リラックス時に働く「副交感神経」の2種類があります。運動をした後に気持ちよく感じられる理由は、運動によって収縮した血管が交感神経を優位にさせ、運動後に血管が拡張することで副交感神経が優位になるからです。
日ごろ運動しない方は交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかず、いつも交感神経が優位になり続けてリラックスできない状態になってしまいます。
認知症予防になる
運動は認知症予防にも効果があると言われています。
脳内にアミロイドβというタンパク質が蓄積するとアルツハイマー型認知症の発症リスクが高まります。運動をするとアミロイドβを分解する酵素が活性化されてアミロイドβが脳内で過剰に溜まらなくなるため、アルツハイマー型認知症の発症リスクが軽減できます。
アルツハイマー型認知症以外の認知症の原因については以下の記事を参考にしてください。
認知症の原因は70種類以上|代表的な認知症の原因疾患と対策を紹介高齢者には有酸素運動がおすすめ
高齢者がいつまでも健康な身体でいられるためには、どんな運動をしていけば良いのでしょうか。
運動にはいくつも種類がありますが、高齢者に特におすすめしたい運動は有酸素運動です。有酸素運動とはウォーキングやジョギング、水泳など、長い時間をかけてゆっくりと行う運動を指します。
有酸素運動をスタートして20分程度たつと、体内に取り込まれた酸素が体脂肪を分解してエネルギー源を生み出します。瞬発的な運動では20分以上も行えず効果が出ないため、長時間継続できる有酸素運動が最適なのです。
無酸素運動との違い
無酸素運動とは筋トレや短距離走など、短い時間に高い負荷をかけて行う運動です。
無酸素運動には筋肉増強の効果があります。有酸素運動では筋肉をつけることはできないため、有酸素運動に加え筋トレなどの無酸素運動もあわせて行うことで、身体への効果はより一層高まります。
高齢者におすすめの筋トレ方法は以下で紹介しています。
高齢者におすすめの筋トレ|寝たきりを防ぐためのトレーニング高齢者の有酸素運動によって生まれる効果
高齢者が有酸素運動をすると、以下のような効果があると言われています。
新陳代謝の促進
健康的な肉体を維持するために新陳代謝の促進は不可欠です。
新陳代謝とは生物体生きるために必要な物質を体内に取り入れ、古い物質を体外に排出する現象です。新陳代謝は男女ともに10代半ば~後半にピークに達し、その後は年齢とともに少しずつ低下していきます。
有酸素運動によって新陳代謝が促進され、古い細胞が新しい細胞にどんどん生まれ変わります。
心肺機能の強化
心肺機能を強化すると血流が良くなり、体内の老廃物や疲労物質が排出されやすくなります。
疲れにくい身体になり、より積極的に動けるようになります。
生活習慣病の予防
有酸素運動を行うと体内のブドウ糖がエネルギーに変わり、血糖値が下がります。また血糖値を下げるインスリンの分泌も促進されるため、インスリン分泌不足による糖尿病などの生活習慣病予防にも役立ちます。
関節の痛み軽減
有酸素運動は関節の痛み軽減にも効果的です。加齢による関節リウマチや、女性に多い変形性膝関節症の治療にも運動療法が用いられています。
ただし無理な負荷をかけた運動はかえって症状を悪化させる危険性もあるため、現在関節に痛みがある方は必ず医師の指導に基づいて運動を行ってください。
認知機能の向上
有酸素運動をして脳に新鮮な酸素と栄養分が送られると、脳機能が活性化します。
認知機能の向上が期待でき、認知症予防になります。
睡眠の質の向上
運動をすると心地よい疲労感が生まれるため、夜にもぐっすりと眠ることができ質の良い睡眠が確保できます。
また、有酸素運動には深部体温を上げる効果があります。深部体温とは脳や臓器を守るために常に一定に保たれている体温です。運動によって上がった深部体温は3~4時間たつと急激に下がり、高低の落差が大きいほど睡眠が深くなると言われています。
そのため就寝の3~4時間前に有酸素運動を行うことが、睡眠という観点ではもっとも良いタイミングです。
高齢者におすすめの有酸素運動6選
有酸素運動の効果がわかったら、今日からさっそく有酸素運動を開始しましょう。
有酸素運動にはいろいろな種類があるため、環境や体調にあわせて好きな有酸素運動がすぐにでも実施できます。
以下からは高齢者にも取り組みやすい、おすすめの有酸素運動を6種類紹介します。
ウォーキング
ウォーキングは有酸素運動の代表格です。
以下のポイントを押さえて歩けば、日課の散歩が健康促進できるウォーキングにグレードアップします。
- やや大股で歩く
- いつもの速度より若干スピードを上げる
- 背すじを伸ばし肘をしっかり引く
- 20分以上歩く
踏み台昇降運動
自宅の階段や踏み台を使った踏み台昇降運動は、自宅で簡単に行える有酸素運動です。
また踏み台昇降運動は有酸素運動と下半身筋トレを兼ね備えた運動なので、筋力アップにも役立ちます。
以下の記事では踏み台昇降運動や足踏みステップなどの運動器具をご紹介しています。高齢者の安全に配慮された運動器具が多いので、本記事とあわせて参考にしてください。
足を鍛えると高齢者のフレイル防止になる|おすすめの下半身筋トレ器具12選水中ウォーキング
関節に痛みがある方は水中ウォーキングがおすすめです。
浮力によって身体が浮くため関節にも負担が比較的かからず、水の抵抗があるため短時間でも効果が出やすくなります。
ラジオ体操
子供の頃の夏休みにやっていたラジオ体操は、実は有酸素運動とストレッチの要素を兼ね備えた優れた運動法です。
リズミカルな動きでストレス発散にもなり、音楽に合わせた体操をすることで認知機能の向上にも役立ちます。
ラジオ体操はNHKラジオで毎日放送されていますが、公式YouTube動画も公開されています。放送時間外にラジオ体操をしたい方は動画もご利用ください。
ヨガ
ヨガはゆっくりと呼吸しながら、効率的に身体へ酸素を取り入れる有酸素運動です。
またヨガを行うことで、きつい筋トレのように無理な負荷をかけなくても体の深層部の筋肉が鍛えられるため、高齢者の筋トレ手段としても効果的です。
太極拳
中国の伝統武術である太極拳は、しなやかに円を描く運動と深い呼吸が特徴的な、世界中で行われている健康法です。
太極拳も、全身を使った有酸素運動のひとつです。ゆっくりと腹式呼吸を続けることで全身に酸素が取り込まれ、身体が活性化します。
また太極拳は「気」の流れを良くする効果があると言われています。中国で古くから伝わる「気」を意識し、溜まった「気」をスムーズに押し流すことで心身のバランスが整います。
まとめ
今回は高齢者におすすめの有酸素運動について解説しました。
適度な運動を習慣にすることで、健康寿命の延伸、介護予防につながります。
いつまでも健康な身体を維持できるよう、重い腰をあげてさっそく運動を始めましょう。
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