- 一定所得以下の年金受給者に給付金が支給される
- 条件を満たす限りは恒久的に給付金を受け取れる
- 一度対象外になったあとに再び対象になった場合には請求手続きが必要
2019年10月から消費税が増税されていますが、それに伴って一定水準以下の所得の年金受給者に対して給付金が支給されるようになりました。
しかし、まだ始まったばかりの制度のため、「どんな制度が良く分からない……」と悩んでいる方もいるでしょう。
そこで今回は「年金生活者支援給付金」の概要を紹介します。
目次
年金生活者支援給付金制度とは
2019年に消費税が8%から10%に引き上げられた分を活用し、老齢・障害・遺族年金を受給している一定所得以下の方について年金に上乗せして「年金生活者支援給付金」が支給されます。
老齢・障害・遺族の「基礎」年金を受給している方の中で所得が前年より低下したことなどで新しく支給対象になる方に年金生活者支援給付金請求書が送られ、返送することで年金とは別に一定の給付金を受け取ることができます。
給付金の支給は2019年10月1日からスタートしており、支給要件を満たす限り、これまでの年金と一緒に継続して受け取ることができます。
また、この制度は世帯単位で給付される性質のものではありません。年金受給者一人ひとりが条件を満たせば受け取ることができるため、夫婦が2人とも条件を満たせばそれぞれ給付金を受け取れます。
支給要件と給付額
年金生活者支援給付金は、老齢・障害・遺族の3種類に分かれています。
それぞれの給付金の支給額をまとめると以下のとおりです。
令和3年度(月額) | |
---|---|
老齢年金生活者支援給付金 | 5,030円 |
障害年金生活者支援給付金 | (1級)6,288円(2級)5,030円 |
遺族年金生活者支援給付金 | 5,030円 |
以下で制度の詳細についてみてみましょう。
老齢年金生活者支援給付金
支給要件
以下の条件を全て満たす場合、給付金が支給されます。
- 65歳以上で、老齢基礎年金の受給者である
- 同一世帯の全員について、市町村民税非課税である
- 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得を合わせた金額が879,900円以下である
「前年の公的年金等の収入金額」には障害年金・遺族年金をはじめとした「非課税収入」は含みません。
また「3.」の収入が779,000円を超え879,900円以下の場合は「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
給付額
月額5,030円が基準額になり、以下の1と2の合計額が支給額です。
- 保険料納付済期間に基づく額(月額) = 5,030円 × 保険料納付済期間 / 被保険者月数480月
- 保険料免除期間に基づく額(月額) = 10,845円 × 保険料免除期間 / 被保険者月数480月
ただし2.については、「保険料全額免除」「3/4免除」「半額免除期間」については10,845円(老齢年金満額月額の1/6)、「保険料1/4免除」の期間については5,422円(老齢年金満額月額の1/12)で計算されます。
また、前年の年金収入とその他の所得合計が779,900円を超えて879,900円以下である場合、1.に一定割合を乗じて算出した「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
計算方法は以下のとおりです。
障害年金生活者支援給付金
支給要件
- 障害基礎年金の受給者である。
- 前年の所得が4,621,000円以下である。
障害年金などの非課税収入は所得には含まれません。また、「前年の所得」に関しては扶養家族等の人数に応じて増額されるため、正確には「収入が『4,621,000円+扶養親族の数×38万円』以下であること」が条件です。
ただし、「38万円」の部分は、扶養親族によって金額が異なります。
同一生計の配偶者が70歳以上または老人扶養親族の場合には48万円で計算されます。特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族がいる場合、63万円です。
給付額
障害等級の違いによって、支給額は以下のとおりです。
- 障害等級2級の方の場合:5,030円(月額)
- 障害等級1級の方の場合:6,288円(月額)
遺族年金生活者支援給付金
支給要件
- 遺族基礎年金の受給者である。
- 前年の所得が4,621,000円以下である。
遺族年金などの非課税収入は所得には含まれません。「前年の所得」に関しては障害年金生活者支援給付金と同じく、扶養家族等の人数に応じて増額されます。
給付額
- 5,030円(月額)
ただし、2人以上の子がいて、それぞれが遺族基礎年金を受給している場合は、それぞれの子どもに5,030円を子の数で割った金額が支払われます。
給付金の手続き方法
年金生活者支援給付金は、日本年金機構において毎年市区町村から提供される所得情報をもとにして支給要件に該当するかの判定を行います。
判定によって対象者と判断されれば手元に手続き書類が届きますが、それまでは年金を受給している方から申請手続きは必要ありません。
対象者は日本年金機構から受け取る請求書を提出する
給付金を受け取るためには、請求の手続きが必要です。
すでに何らかの年金を受け取っている場合は日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書」が送られてくるため、氏名・生年月日・マイナンバーなど、必要事項を記入してポストに投函することで手続きが可能です。
これから年金を初めて受け取る場合には、年金の裁定請求手続きを行う際にあわせて給付金の手続きが必要です。(裁定請求手続きとは年金の受給権を持つ方が年金に支払いを請求する手続きのことです。)
手続きが完了すると翌月分からの支給になります。年金とは別々に振り込まれるため、通帳には年金と給付金の2つの記帳が行われます。
添付書類は不要
市町村からの所得情報によって給付金の支給要件が満たされているか判定されるため、手続きに関して「課税証明書」などの添付は基本的に不要です。
ただし、所得の確認ができない場合は提出を求められることもあります。
次年度以降は手続きが不要
支給要件を満たす場合、2年目以降の手続きは原則として不要です。自動的に更新され、引き続き給付金を受け取れます。
税金を支払う必要はある?
年金生活者支援給付金は「非課税」の制度です。よって、いくら受け取ったとしても税金を納める義務はありません。
給付金の対象者が亡くなった場合はどうなる?
給付金を受け取った対象者が亡くなった場合、支払期日前の給付金については受け取っていないため、「未払いの給付金」と呼ばれます。
この「未払いの給付金」については、以下の「受給権者が死亡した当時に生計を共にしていた方」でもっとも順位が高い方が請求して受け取る権利があります。
- 配偶者
- 子ども
- 父母
- 孫
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 上記以外の3親等内の親族
出典:e-GOV|年金生活者支援給付金の支給に関する法律 第九条
年金生活者支援給付金制度はいつまでもらえる?
年金生活者支援給付金は恒久的な制度です。支給要件を満たせば、制度が残っている間は給付金を生涯に渡って受け取ることができます。
給付額については物価の変動による「物価スライド改訂」が採用されているため、毎年変動する可能性があります。
改訂が行われた際は「年金生活者支援支給金額改定通知書」が郵送されるため、事前に改訂額を確認できます。
支給要件を満たさない場合は支給停止
支給要件を満たさない場合、給付金は自動的に支給されなくなります。その場合、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が手元に送られるためすぐに確認が可能です。
ただし、受け取れなくなったあと再び基準を満たした場合は、あらためて認定請求の手続きが可能です。この場合は自動で振り込まれることはないため、あらためて認定請求手続きが必要です。
年金生活者支援給付金にまつわる詐欺に注意
2019年9月から支給が始まっている制度ではありますが、これまでも国からの給付金や還付金に関しては「振り込め詐欺」をはじめとした詐欺事件が発生しています。
厚生労働省でも「年金生活者支援給付金」制度に関する詐欺への注意喚起を行っているのが現状です。
日本年金機構や厚生労働省が電話で家族構成を聞くことや、金融機関の口座番号を聞き出すことはなく、手数料の支払いも必要ありません。
万が一不審な電話を受けた場合、日本年金機構または#9110(警察専用電話)に連絡を行いましょう。
まとめ
今回は、2019年10月から始まった「年金生活者支援給付金」の概要を紹介しました。
所得に関する条件を満たす限り、恒久的に受け取ることができる制度であり、受け取りを開始できれば2年目以降の手続きは不要です。
今後、年金を請求する方は同時に手続きが必要になりますから、制度の概要を理解してスムーズな手続きに活かしましょう。
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