- 株の相続をする際はまず証券会社へ連絡を
- 上場会社と非上場会社では株の相続方法が異なる
- スムーズに株の名義変更をして適切な運用を
長い人生の中には、親族など身近な人が亡くなった後に相続人として指定されることもあるでしょう。
相続財産が現金や預貯金だけなら、相続方法にもさほど悩まなくて済むかもしれませんが、遺産には現金や預貯金だけでなく、不動産や動産、株などさまざまな種類があります。
もし相続財産に株が含まれていた場合には、いったいどうやって遺産分割を行えば良いのでしょうか。
今回は株の相続の仕方について、わかりやすく説明していきます。
目次
相続財産に株が含まれていたら
故人の遺産に上場会社の株など有価証券が含まれていることが判明したら、相続するには取引先の証券会社に手続きを依頼します。
株には保有者として故人の名前が明記されていますので、相続した人の名義に変更をしなければいけません。
具体的な手続き方法はこの後に説明しますが、「株の相続をするときには、まず証券会社へ連絡」と覚えておきましょう。
株の相続手続きの方法
では、具体的な株の相続の流れを見ていきましょう。
以下でご説明する相続の流れは、株を公開している上場会社の株が対象となります。
1.残高証明書の発行依頼
株の相続をするためには、故人が持っていた株の保有銘柄や保有残高を確認します。
相続人もしくは正規の手続きを踏んだ代理人より証券会社に口座の有無を問い合わせ、取引口座が存在していた場合には残高証明書の作成を依頼します。
残高証明書には、故人が死亡した時点で保有していた株式情報が記載されています。
2.相続人全員で遺産分割協議を行う
残高証明書に記載された評価額をもとに、株以外の遺産も含めた遺産をどのように分割するか、相続人全員が遺産分割協議を行います。
もし株以外の財産がマイナスの遺産しかなく、株の評価額と相殺しても利益が出ないと思われる場合には、相続人それぞれの判断により相続放棄の選択ができます。
相続放棄ができる期間は、相続開始を知ってから3ヶ月以内です。
3.株の名義変更
相続人全員が分割方法に納得し、遺産分割協議書が完成した後は、実際に株の相続をするための名義変更手続きが必要になります。
故人の名義となっている株を相続人の名義に変更しなくては、正式に株の保有者として認められません。
遺産分割協議書が用意できたら再び証券会社に連絡し、遺産分割協議書を含む指定の届出書等を提出します。
必要となる書類は各証券会社によって異なります。
4.証券会社の取引口座開設
株の名義変更が完了しても、相続人が証券会社の取引口座を持っていないと株の運用・売却を行うことができません。
故人の取引口座を継続使用はできないため、新たに相続人自身の口座を開設する必要があります。
故人が取引していた証券会社であれば、そのまま口座開設もスムーズに行えますが、必ずしも同一の証券会社でないといけない訳ではありません。
相続人が違う証券会社の取引口座をすでに持っているならば、既存の取引口座に株式を振り替えることも可能です。
5.株の振替完了
相続人の証券取引口座へ保有株式の振替が行われたら、株の相続は完了です。
その後の株式は相続人自身の財産として、運用および売却することが可能になります。
株の相続で必要になる書類
先ほどもご説明のとおり、株の相続で必要になる書類は証券会社ごとに異なります。
今回は、ほとんどの証券会社で提出を求められることが多い書類をいくつかご紹介します。
- 申込書
- 遺言書もしくは遺産分割協議書
- 被相続人の戸籍謄本・除籍謄本もしくは法定相続情報一覧図
- 相続人全員の印鑑証明書
上記の中でも、満15歳未満の相続人は印鑑登録ができないなど、必ずしもすべての書類が揃うとは限りません。個々の相続ごとに必要な書類が変わってきます。
どのような書類を用意すれば良いかについては、必ず取引先の証券会社に問い合わせて確認しましょう。
相続する株の評価額はいつの時点のものか
遺産分割協議の焦点となる株の評価額は、相続が開始された日の市場価格が元になります。遺産分割協議の日や、相続した株の引き継ぎ時点ではないので注意しましょう。
ですが株価は1日の間にも変動があるので、相続開始日と言うだけでは金額がはっきりしません。評価額の算定では、以下4つのうちもっとも低い株価で計算します。
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の終値の月間平均
- 相続開始前月の終値の月間平均
- 相続開始前々月の終値の月間平均
株の遺産分割は可能か
株の相続は基本的に、現金や預貯金のように簡単に分けることができません。
株の相続の場合、法定相続分にしたがって各相続人に分割されるのではなく、遺産分割協議がなされるまでは、相続人全員での共有状態となります。
まずは相続する株の評価額を確定し、相続人全員が合意して遺産分割協議書にその旨を記載すれば、協議で決定した割合で株の分割が可能です。
各相続人が管理証券会社に口座を作り、遺産分割協議書にもとづき移管の依頼をすれば分配されます。
上場会社の株であれば評価額も明確で協議もしやすいのですが、非上場会社の株となるとこうはいきません。
次に非上場会社株の相続について説明します。
上場・非上場で異なる株の相続
自社株が株式市場に公開されていない非上場会社の株式は、証券会社を通じて株の相続手続きをすることができません。
また、その非上場会社が被相続人が経営する会社の場合もあります。
相続人の誰が経営を継ぐのかによって、株の相続割合は変わってきますので、相続人同士での協議が必要です。
それ以外の場合で非上場会社の株を相続したいときは、企業に直接連絡して名義変更手続きを行います。
また、上場会社の株式は相続手続き終了後に自由に売却できますが、非上場会社の場合には売却先も見つけにくいのが一般的です。
会社法の規定では少数株主が企業へ株の買い取りを求めることは認められていないため、非上場会社が株の買い取りをしてくれる可能性はまずありません。
そのため非上場会社の株を誰が相続するかについては、上場会社の株の相続よりも慎重な判断が必要となります。
株の相続に伴う税金
株の相続を受けた場合も、他の財産相続と同様に相続税の対象となります。
また、株の運用利益が出た場合には所得税の納付が必要になるので、税負担が重くなりがちです。
そのため株の相続では、独自に「取得費加算の特例」が認められています。
相続により上場株式を取得して相続税を支払った場合、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に株を売却すれば、株の取得価格に相続税額を加算することができるという制度です。
株式の売却により利益が出たとしても、譲渡益にかかる税金を圧縮することができます。
この特例を受けるためには確定申告をする必要があるので、株の相続により相続税の納付をした人は覚えておきましょう。
まとめ
今回は、相続財産に株が含まれている場合の相続方法について解説しました。
現金に比べて多少の手続きが追加されるため、面倒と思われがちな株の相続ですが、やり方を知ってきちんと手続きを行えば、スムーズに名義変更まで完了できます。
故人が遺してくれた大切な財産を無駄にせず、適切な運用を行って故人の遺志を引き継ぎましょう。
行政書士事務所経営。専門は知的財産ですが、許認可から相続まであらゆる業務を行っています。また、遺言執行や任意後見関係を専門とする社団法人の理事もしています。アドバイスや業務遂行でお客様の問題が解決するととても嬉しくやりがいを感じます。行政書士ほか、宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級の資格所持。
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