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認知症と誤解されやすい老人性うつとは|10の違いと対処法を解説

この記事のサマリ
  • 老人性うつには高齢者ならではの特徴がある
  • 老人性うつは認知症と間違われやすい
  • 認知症と老人性うつの違いを10か所説明
  • 認知症と老人性うつのどちらも早い診断と治療が有効

高齢の親の様子が最近おかしい、以前に比べて元気がなくなったようだなど家族が感じたときに、まずほとんどの家族が疑うのが「認知症」です。

後期高齢者のおよそ20~30%は認知症だと推定されていますので、親の元気がなくなった理由は認知症なのではないかと心配する気持ちも当然です。

しかし、もしかすると親の元気を失わせている理由は認知症ではなく「老人性うつ」なのかもしれません。

今回は認知症と老人性うつとの違いについて解説します。2つの違いをしっかり見分けて、一刻も早く適切な治療につなげましょう。

老人性うつとは

窓辺で椅子に座る高齢女性の後ろ姿

人性うつとは、一般的に65歳以上の高齢者がうつ病を発症したときに用いられる呼び方です。医学的には全年齢を対象とする「うつ病」と同じく扱われますが、老人性うつは若い人のうつと比べて、高齢者ならではの特徴があります。

「老人性うつ」と若い人の「うつ病」との違いについては後述します。

老人性うつは認知症と間違われやすい

メンタルヘルスと書かれたハートの前に佇む2つの人形

老人性うつを発症したときの症状は、特に初期症状において認知症とよく似ています。

  • 物忘れが増える
  • 記憶力が低下する
  • 集中力が低下する
  • 周囲に無関心になる
  • イライラする
  • 不眠、眠りの質の低下
  • 希死念慮(死にたい、楽になりたいと思う気持ち)

上記の症状は認知症でも見られる症状です。そのため老人性うつを発症しても、周囲の家族等が「認知症だから」と間違いやすくなります。

老人性うつと認知症の区別は医者でも難しい

カルテと聴診器

親が老人性うつを発症したときに、家族が認知症を疑ってしまうのも無理はありません。なぜなら老人性うつと認知症の区別は医師でも非常に難しいからです。

老年期うつは、別名「仮性認知症」とも呼ばれています。仮性認知症とは「うつ病」が原因で、一見認知症のように見える症状が現れる状態のことです。

また、認知症のひとつであるレビー小体型認知症になった人のおよそ半数はうつ病を合併すると言われています。逆に、老人性うつは認知症リスクを高めるとの疫学研究結果もあります。

このように認知症と老人性うつは密接にからみあっているため、専門家でないと診断が難しいのです。

老人性うつと認知症の違い10か所

チェックリストと虫眼鏡

認知症と老人性うつは見分けるのが非常に困難ですが、注意深く観察すれば2つの違いが確認できます。

素人判断は厳禁ですが、医師に相談する際に「老人性うつのような症状もある」と伝えられるだけでも一歩前進です。

以下からは老人性うつと認知症の違いを10か所ご紹介します。

1.発症の原因

老人性うつ:環境の変化や精神的ストレス
認知症:脳機能の老化

老人性うつは、社会的孤立や環境の変化、身体機能の低下などのストレスを要因として発症します。

それに対し、認知症の原因は脳機能の低下です。脳機能が低下する要因はさまざまですが、ストレスをほとんど感じない幸せな老後を送っている高齢者でも認知症になる可能性があります。

認知症にかかる原因は、なんと70種類以上もあります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。

認知症の原因は70種類以上|代表的な認知症の原因疾患と対策を紹介

2.初期症状

老人性うつ:気分の落ち込み、食欲の低下、睡眠障害
認知症:物忘れ、性格の変化

前述のとおり老人性うつと認知症の初期症状は非常によく似ていますが、老人性うつは身体的な症状が比較的現れやすいのに比べて、認知症は物忘れなど認知能力に関する症状が目立つという違いがあります。

3.自覚の有無

老人性うつ:ある
認知症:ない

老人性うつと認知症のもっとも大きな違いが、この「自覚の有無」かもしれません。

老人性うつの場合は、自分の心身に何か問題が生じていることを強く自覚しています。対する認知症は自分では認知機能の衰えが自覚できないか、たとえ物忘れがあったとしても何とかして取りつくろおうとするケースが多いです。

4.物忘れ

老人性うつ:長期記憶・短期記憶ともに忘れやすくなる
認知症:短期記憶の方が忘れやすい

老人性うつによる物忘れは、最近のことも昔のことも等しく忘れやすくなります。それに対し認知症は、新しい記憶の上書きができなくなるという特徴があります。

また、老人性うつの場合には「昨日の食事が何か思い出せない」という忘れ方をするのに対し、認知症は「食事をした事実自体を忘れる」との違いもあります。

5.質問への回答のしかた

老人性うつ:考え込み「わからない」と答える
認知症:見当違いの回答をする、ごまかす

答えがはっきりしない回答を投げかけたときに、老人性うつの人は深く考え込み「わからない」と答えるか押し黙ってしまう傾向があります。そして、答えられない自分に自責の念を感じてさらに落ち込みがひどくなります。

認知症の人は、自分が「わからない」ことを認めず、見当違いな回答をしてごまかそうとします。

6.妄想

老人性うつ:心気妄想、罪業妄想、貧困妄想
認知症:被害妄想

妄想は老人性うつでも認知症でも見られる症状ですが、老人性うつの場合には「不治の病にかかった(心気妄想)」「警察に逮捕されるかも(罪業妄想)」「お金がない、破産する(貧困妄想)」などの妄想が出現するケースが多いです。

それに対し認知症では「財布を取られた(被害妄想)」などの妄想が出現しやすいという違いがあります。

7.日内変動

老人性うつ:朝~午前中に調子が悪い
認知症:時間帯による変動なし

日内変動の違いも、老人性うつと認知症の違いを見分ける大きなポイントです。

日内変動とは、心身の状態が時間帯により変化する現象のことです。老人性うつに限らず、うつ病患者の多くは朝から午前中にかけて状態が悪くなり、夕方から夜にかけては比較的元気が出てくる傾向にあります。

認知症には日内変動が見受けられず、1日の中で状態が変化することはほぼありません。

8.進行スピード

老人性うつ:突然始まり短期間に進行する
認知症:徐々に進行する

老人性うつは環境の変化やストレス悪化などの原因により突然発症します。そして治療をしないと早いスピードで悪化します。

それに対し認知症は何かをきっかけに発症するのではなく、症状もゆるやかに進行するため、周囲の人もなかなか気づきづらいのが特徴です。

9.脳の萎縮

老人性うつ:あまり見られない
認知症:見られるケースが多い

脳画像検査をしたときに、老人性うつの場合には脳の萎縮や血流低下があまり確認できず、認知症の場合には特徴的な脳萎縮が見られるケースが多いとされています。

しかし一般的な老化現象としても脳の萎縮は見られるため、臨床の現場でも脳画像だけで診断はできないとの認識が一般的です。

10.治療方針

老人性うつ:治す治療
認知症:進行を遅らせる治療

老人性うつの治療はカウンセリングや薬物療法など、一般的なうつ病と同様に行われます。うつ病は「病気」ですので、適切な治療により回復が期待できます。

認知症は厳密にいえば「病気」ではありません。認知症を引き起こす元になる疾患は存在しますが、認知症自体は「脳機能が低下して日常に助けが必要になる状態」を指します。

認知症自体が病気ではないため、認知症の治療方法もまだ確立されてはいません。近年ではアルツハイマー病の治療薬など一定の回復効果が認められる薬も出てきていますが、基本的には進行を遅らせる治療が基本となります。

「老人性うつ」と「うつ病」の違い

頭を抱える女性

老人性うつと認知症の違いを確認すると同時に、老人性うつと若い人がかかる一般的なうつ病との違いについても確認しておきましょう。

老人性うつも若い人のうつも同じ「うつ病」ではありますが、若い人のうつに比べて老人性うつは頭痛や便秘、めまいなどの身体的不調が前面に現れやすいという点が違います。

イライラや無気力、睡眠障害や希死念慮などの症状は老人性うつでも若い人のうつでも同じように現れ、違いはありません。

迷ったらまず「かかりつけ医」へ

ハートを手に浮かべる白衣の男性医師

自分の親や身近な人の様子がこれまでと違い、認知症なのか老人性うつなのかわからないときにはどうしたら良いのでしょうか。

どちらだとしても、まずは日頃から身体の状態を診てくれているかかりつけ医に相談することをおすすめします。かかりつけ医が診察の上で、適切な専門病院等を紹介してくれるでしょう。

何よりも、慣れ親しんでいるかかりつけ医に受診する方が、専門病院に行くよりも格段に心理的なハードルが低くなるのが有利な点です。

診断の結果が認知症だとしても老人性うつだとしても、1日も早い治療はそれだけ功を奏します。かかりつけ医を受診のポータルサイトとして、ありがたく活用させてもらいましょう。

まとめ

屋外で空を見上げる高齢男女

今回は老人性うつと認知症の違いについて解説しました。

老人性うつと認知症は医師でも診断を間違いやすいですが、いずれにしても適切な診断と治療が今後の重要なカギとなります。

できるだけ早く原因を確定し、大切な人の笑顔を取り戻させてあげましょう。

ライター紹介 | 杉田 Sugita
終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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