将来のスムーズな相続をサポートする終活アプリ「そなサポ」▶︎CHECK

増え続ける介護離職を防ぐには|介護離職に至る理由と問題点・防止策を紹介

介護離職のイメージ

この記事のサマリ
  • 介護離職とは介護のために会社や自営を辞めること
  • 介護離職をする人の数は10年で約2倍に増えた
  • 介護離職には収入面・精神面のデメリットが大きい
  • 介護離職しないですむ方法を紹介

働いている方が親などの介護をするために仕事を離職することを「介護離職」と呼びます。

介護離職は離職する当人だけでなく、働いていた会社や社会全体にとって大きな損失です。

日本でも2017年に育児・介護休業法を改正するなどさまざまな支援策を打ち出していますが、残念ながら介護離職の割合は増え続けています。

今回は介護離職について説明しながら、親などの介護に直面している方が介護離職で後悔しないように、介護離職を防ぐためにできる対策をご紹介します。

介護離職とは

介護離職とは、会社やパート・アルバイト先、もしくは自営で働いていた方が、家族の介護に専念するために仕事を辞めることです。

在宅介護の場合、要介護度があがると食事や排泄などささいな日常生活にも支障をきたすようになり、常に介助が必要な状態となります。

仕事をしている方が常に要介護者を見続けていることは難しいため、仕事と介護の両立が困難になり、やむなく仕事を辞めて介護を選択する方が増えています。

介護者の年代・性別

介護をしている方の半数以上が、働き盛りの年代です。

総務省の「平成29年就業構造基本調査」によると、家族の介護をしている正規雇用者の割合は30代が10%、40代が24%、50代が46%でした。50代の介護者だけでほぼ半数を占めています。

介護者の年齢分布

画像引用:内閣府|介護離職の現状と課題

子供が50代の場合、ほとんどの親は80代と推測できます。介護が必要になる確率も高くなるため、子供が親の介護を担っていることが伺えます。

なお主に介護を担っている方の性別は圧倒的に女性の方が多く、介護離職する方の性別も女性が半数以上です。

介護離職者の数は約10年で2倍に増えた

横断歩道を渡る人々

厚生労働省の統計によれば、2017年度の離職者の数は735万人、そのうち家族の介護・看護を理由にして離職した方の割合はたった2%です。

パーセンテージで考えると大した数ではないように感じられますが、人数で考えれば約9万人です。決して少ない数ではありません。

さらに、介護離職者の数は年々増え続けています。

2006年の調査時点では介護離職する方の数は5万人を切っていましたが、およそ10年で介護離職者の人数は2倍近くに増えました。このペースで離職率が上昇すると2025年頃には15万人近くの方が介護離職する可能性もあります。

介護離職した方たちの理由

介護離職した方たちは、どうして仕事を辞めざるを得なくなったのでしょうか。

他に介護する人間がいない

現在、日本の生涯未婚率は急速に高まっています。

《生涯未婚率とは》
50歳の時点で一度も結婚したことがない独身者の割合のこと

2015年の国勢調査では、男性の23.4%、女性の14.1%が生涯未婚率でした。また結婚していても多くの世帯は共働きです。

生涯未婚率の推移

画像引用:内閣府|介護離職の現状と課題

かつては専業主婦である妻が家族の介護の役割も担うことが多かったかもしれませんが、現在では核家族化・非婚化の影響により、働きながら介護をせざるを得ない状況です。

介護施設に入居できない

働きながらの在宅介護に限界を感じた方は、家族を施設に入居させることを考えますが、残念ながら適切な介護施設の数は不足しています。

介護保険を使って比較的安価に入居できる特養・老健・介護療養型医療施設は、入居希望者に対して2019年時点では16%程度の受け皿しかなく、多くの方が入居待ちの待機者となっている状態です。

介護施設数の推移

画像引用:内閣府|介護離職の現状と課題

介護付き有料老人ホームなど費用のかかる民間の介護施設に入居させるお金がない場合には、待機しながら在宅介護せざるを得ません。

親が遠距離にいる

就職や結婚などで生まれ育った地元を離れて生活している方は、実家に残っている親の介護に直面したときに苦しい選択を迫られるかもしれません。

遠距離介護が難しい場合には、親の介護をするために会社を退職せざるを得ないケースがあります。

また遠距離介護が長引くと、繰り返される実家と自宅の往復に疲弊して、最終的に介護離職してしまう方もいます。

会社が仕事を休ませてくれない

2017年に改正された育児・介護休業法により、本来であれば従業員は家族を介護するために一定期間の休みがとれます。

しかし、実際に介護休業をしている方はごくわずかです。従業員300名以上の大企業では比較的取得できていても、従業員99名以下の中小企業では2~3%程度しか介護休業を取得できていません。

介護休業取得者の有無グラフ

画像引用:労働政策研究・研修機構|中小企業における介護支援の現状

1人の欠員が業務に大きな影響を与える中小企業の場合、従業員が介護休業を申請しても断られる、またはそもそも申請できない雰囲気があると考えられます。

介護離職によって起こる問題点

仕事をせずに介護に専念すれば、時間の束縛がなくなり落ち着いて介護ができるような気がします。

しかし介護離職することによって、介護離職する前よりもっと悪い状態に陥ってしまう可能性があります。

介護離職により考えられる問題点は以下のとおりです。

収入の減少

働かなくなれば当然、収入は減少します。

十分な貯蓄があればまだしも、介護離職でもっとも多い40代~50代の世代は、住宅ローンや子どもの教育費などにより支出が多い世代でもあります。

無収入で親の年金と貯金を切り崩す生活は、将来的な自分自身の老後資金にも影響します。

ストレスの増加

介護離職すると介護が存分にできてストレスが減ると思いきや、実際には介護の精神的ストレスは増加します。

厚生労働省が2020年に行った調査によると、介護離職した方が離職後に生じた精神面の変化についてはおよそ30%の方が「非常に負担が増した」と感じています。「負担が増した」を合わせると半数以上です。

また肉体面の負担、経済面の負担もそれぞれ増している方が多く、それらも精神的なストレスを悪化させます。

介護離職後の負担の変化

画像引用:厚生労働省|労働者調査 結果の概要

介護離職後の再就職率は困難

介護のためにいったん離職しても、介護が終わったら再就職すれば良いと楽観視している方もいるかもしれません。

しかし一度介護離職すると、その後の再就職は非常に困難です。

介護離職した方が、介護終了後に再就職した割合は全体の3割程度です。また前職では正規雇用されていた方でも、再就職後には非正規雇用に転じる場合が多く、再就職後の収入はかなり下がる可能性があります。

介護離職後の再就職状況

画像引用:内閣府|介護離職の現状と課題

介護期間中だけでなく、その後の人生にも悪影響をおよぼす可能性がある介護離職は避けたいものです。

介護離職しないためにできること

それでは介護離職しないですむためには、いったいどうすれば良いのでしょうか。

ここからは介護離職を防ぐ対策を7つご紹介します。

介護休業制度の活用

介護休業は国が認めた、家族の介護を担う方が要介護者1人につき3回、合計93日間まで休業できる制度です。

介護休業したときには会社から給料は出ませんが、ハローワークで手続きすることにより給与額の67%にあたる給付金が受給できます。

介護休業制度

画像引用:厚生労働省|介護休業について

一定額の給付金を受け取りながら仕事を休み、その間に介護サービスの手配や施設探しなど、仕事と介護を両立できる体制を整えることができます。

介護休業に関しては以下の記事でも詳しく解説しています。

介護休業制度をご存知ですか?制度の内容や給付制度などを解説

介護休暇の取得

介護休暇は介護休業とは違い、家族の介護をしている方が1日あるいは時間単位で仕事を休める制度です。

在宅介護をしている方だけでなく、親が施設に入居している方でも取得できます。

突然のトラブルや役所手続き、ケアマネージャーとの打ち合わせなどに活用できます。

参考 介護休業制度厚生労働省

時短・リモートワークなど勤務の見直し

従業員を雇用している会社には、仕事と介護の両立を支援するために短時間勤務制度やフレックス制度などの制度を少なくとも1つ以上設ける必要があります。

企業の介護支援制度

画像引用:厚生労働省|短時間勤務等の措置とは

仕事内容がデスクワークの場合には、リモートワークでの勤務も検討できる可能性があります。勤めている会社に相談してみましょう。

ケアマネジャーと相談

在宅介護を支援するケアマネジャーは、介護者の介護離職を防止するために仕事と介護の両立支援を考えたケアプランを作成する必要があります。

2020年からは国の主導で、ケアマネジャーに対する仕事と介護の両立支援カリキュラム研修も始まっています。

参考 令和2年度仕事と介護の両立支援カリキュラム策定展開事業厚生労働省

介護離職をせざるを得ないような状況に陥っても、決断する前にケアマネジャーに相談してみましょう。

ショートステイの利用

介護保険サービスの中には、要介護度1~5の方が短期入居できるショートステイというサービスがあります。

最長30日間まで利用できるため、ショートステイの利用中に在宅介護の体勢を整えることが可能です。

ショートステイについては以下の記事も参考になります。

ショートステイとは?具体的な利用方法やメリットデメリットを徹底解説

介護割引の利用

実家で暮らしている親の遠距離介護を支援するために、各航空会社では旅客運賃の介護割引制度を用意しています。

費用面の節約になりますので、以下の記事を参考に遠距離介護中の方はぜひ活用してください。

遠距離介護の味方!航空会社の介護割引とは?

総合労働相談コーナーに相談

上記でご紹介したような介護休業や介護休暇を会社に申請しても、会社から取得を拒否されてしまうケースがあります。

そのようなときには、労働基準局などの総合労働相談コーナーにご相談ください。介護休業等の拒否だけでなく、休みが続いたために会社から退職を迫られたときにも相談できます。

介護休業制度は働く方の権利です。会社の無理解のために介護離職に陥らないよう、堂々と権利を主張しましょう。

参考 総合労働相談コーナーのご案内厚生労働省

まとめ

今回は介護離職を防ぐ方法などについて解説しました。

介護離職をしても、介護をする方・介護される方のどちらも幸せにはなれません。

そして介護離職は、会社や社会全体にとって大きな損失になる行為です。

誰の得にもならない介護離職を避けるために、いま自分にできることを精いっぱい考えてみましょう。

ライター紹介 | 杉田 Sugita
終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

そなサポ
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。

受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。

▶︎今すぐ無料ダウンロード!