- 高齢者の事故は「転倒・転落」が8割
- 介護リフォームで自宅内の事故が防げる
- 介護リフォームの種類・費用・実施までの流れを解説
高齢者がいつまでも安心して自宅に住み続けられるようにするためには、まずは安心できる住まい作りが大切です。
今回は介護リフォームについて解説します。今は介護が必要ない方も、将来に備えて介護リフォームを検討していきましょう。
目次
高齢者の事故は8割が「転倒・転落」
高齢になると足腰が弱るため、段差のつまずきやフラつきにより転倒のリスクが高まります。
消費者庁が2018年にまとめた分析結果によると、毎年3万人以上の高齢者が「不慮の事故」により死亡しているそうです。事故の原因は「誤嚥等の不慮の窒息」が第1位ですが「転倒・転落」は第2位で、死亡者数としては第1位に迫るいきおいです。
画像引用:消費者庁|高齢者の事故の状況について
死亡事故にまで至らなかったとしても、救急搬送された事故の割合では「転倒・転落」がもっとも多くなっています。
東京消防庁の救急搬送データでは高齢者の救急要請が「転倒・転落」が全体の8割を占めており、高齢者にとっては転倒が身近な危険であることがわかります。
画像引用:消費者庁|高齢者の事故の状況について
高齢者の生命を守る介護リフォームとは
介護リフォームとは、加齢などの原因で身体機能が衰えた方でも自宅で生活できるように住宅設備を改修することです。
「介護」と呼ばれていますが、実際には住宅設備を利用する方が要介護状態である必要はありません。現在、介護を必要としていない方が、将来に備えて介護リフォームをすることもできます。
自宅の見栄えを良くするリフォームと区別するために「介護」の名称がついているとお考えください。
介護リフォームの目的
高齢者が住む住宅を介護リフォームする目的は、主に以下の3つです。
事故を未然に防ぐ
上記でも説明したように、高齢になると転倒・転落の事故が起きる確率は非常に高くなります。
また高齢者は骨がもろくなっているため、転倒・転落の事故により骨折などの大けがをする危険性があります。骨折後に寝たきりになり、要介護状態にならないためにも転倒・転落事故を防ぐ対策が必要です。
要介護者の自立を促す
事故の危険性があるからといって、周囲が何もかもやってあげてしまっては要介護者のためにはなりません。
室内の移動や入浴・トイレなど、難しい部分は周囲が介助しながらも、自分でできる部分はできるだけ自分でやってもらった方が身体の機能維持につながります。
また介護される側自身にとっても、自分がまだできることがあると思えることで自立心が養えます。
要介護者ができることを増やすために、介護リフォームが大いに役立ちます。
家族にゆとりが生まれる
要介護者が自分でできることが増えると、介護する側の負担が軽減されます。
一部で身体的な介助が必要だとしても、ちょっとつかまれる手すりがあるだけで介護者の負担は軽減できます。
自分の時間も確保しやすくなり、肉体的な疲労が減ることで精神的なゆとりが生まれます。
介護リフォームには補助金・助成金が出る
さまざまな利点がある介護リフォームですが、リフォームには費用がかかります。
要介護認定で要支援または要介護の認定を受けている方の住宅をリフォームする場合、支給限度額はありますが、介護保険から補助金が出てリフォーム費用の9割が返還されます。
実質1割負担で介護リフォームができますので、介護保険を積極的に活用しましょう。
介護リフォームの補助金について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
リフォームに介護保険が適用できるってホント?適用条件や注意点を解説!要介護認定で自立(非該当)と認定された方のリフォームには介護保険が適用できませんが、自治体によっては自立(非該当)の方のために独自のリフォーム助成金制度を設定しているところもあります。
参考 住宅改善工事助成事業(エコ&バリアフリー住宅改修)品川区お住まいの自治体で介護リフォームの助成を行っていないか、市区町村役場の窓口等に問い合わせてみましょう。
おすすめの介護リフォーム
ここからは具体的に、介護リフォームで検討したいおすすめのリフォーム内容を紹介していきます。
バリアフリー化
住宅にはいろいろな箇所に段差があります。
階段だけでなく玄関の上がり框(かまち)や部屋の敷居など、思うように足が上げられない要介護者にとっては移動も苦痛になり、転倒の原因にもなります。
敷居を撤去してフラットな床面にするなど、すり足でも室内の移動ができるようバリアフリー化を検討しましょう。
また、家の門から玄関に入るまでの外構に段差がある場合、車椅子でも移動できるようにスロープを設置することをおすすめします。
手すりの設置
手すりの設置は、介護リフォームの基本です。
廊下や階段だけでなく、手すりをつけた方が良い箇所はたくさんあります。以下の表を参考に、自宅内の動線をイメージしてみましょう。
場所 | 内容 |
エクステリア | ・スロープ脇 ・玄関ドアの横 |
玄関 | ・靴脱ぎ場 ・上がり框 |
廊下 | すべて |
階段 | すべて |
リビング | ・壁 ・ソファー横 ・ドア横 |
居室 | ・壁 ・ベッドサイド ・ドア横 |
トイレ | ・便座横 ・ドア横 |
風呂場 | ・ドア横 ・浴槽の周囲 |
洋式トイレへの取り換え
自宅トイレの便器が和式便座だったときには、ぜひとも洋式便座への取り換えをご検討ください。
「座る」に比べて「しゃがむ」動作はバランスを保ちづらい高齢者にとって困難です。トイレをつい我慢したくなり、オムツを利用せざるを得ない日が近まります。
車椅子のまま便座に腰かけられるようなトイレが理想的ですが、狭くて無理なときや、トイレ自体が不便な場所にあるには押し入れや床の間などのスペースを活用して室内にトイレを設置するリフォームもご検討ください。
床材の変更
すべりやすいフローリング材や風呂場のタイルは転倒の原因になります。
足をすべりにくくするコーティングを施した床材への変更も介護リフォームの1つです。
また自宅内でも車椅子で生活するようになったときには、床が畳やカーペットだと移動が大変です。フローリングに介護リフォームすれば車いすが楽に動かせるようになります。
引き戸への変更
玄関ドアや居室を区切る室内ドアは、車椅子や歩行介助が必要な要介護者がいる家庭では面倒な存在になりがちです。
ドアを開けるためには一歩下がらなければならず、車椅子に乗っている方は自分でドアを開けられません。
また開けたドアは要介護者が通る間は手で押さえておく必要があります。
そんなときは、ドアから引き戸にリフォームすることで、車椅子や歩行介助をしながらでもスムーズに通過できます。
介護リフォームで引き戸に変更する場合、開口幅の確保が重要なカギになります。一般的に車椅子の通過には幅75cm以上の有効開口幅が必要とされているので、状況に応じて3枚引き戸や連動引き戸などをリフォーム業者に相談してみてください。
介護リフォームの費用目安
介護リフォームの費用の目安は以下表のとおりです。
実際に介護リフォームにかかる費用は、住宅の広さや使用する部材の材質、介護リフォーム業者などによって異なります。介護リフォームを実施する前には必ず見積を取得してください。
場所 | 内容 | 金額 |
エクステリア | スロープ設置 | 50万円~ |
玄関 | スロープ設置 | 10~20万円 |
玄関 | 手すり設置 | 3~5万円 |
玄関 | 床材変更 | 5万円 |
廊下 | 手すり設置 | 5~20万円 |
廊下 | 段差解消 | 5~10万円 |
階段 | 手すり設置 | 5~20万円 |
階段 | 勾配変更 | 30万円~ |
階段 | 昇降機設置 | 50万円~ |
リビング・居室 | 手すり設置 | 3万円~ |
リビング・居室 | 床材変更 | 10万円~ |
トイレ | 洋式便座への交換 | 20万円~ |
トイレ | 手すり設置 | 3~5万円 |
トイレ | ドア交換(引き戸) | 10万円~ |
トイレ | 段差解消 | 1~10万円 |
トイレ | 補高便座設置 | 2万円~ |
風呂場 | ドア交換(折り戸) | 7万円 |
風呂場 | 手すり設置 | 3~5万円 |
風呂場 | 床材変更 | 5万円 |
風呂場 | バスリフト設置 | 30万円 |
介護リフォームの流れ
介護保険を使って介護リフォームする場合、通常のリフォームのようにただリフォーム業者にお願いするだけではいけません。
介護リフォームを実施するときの流れは以下のとおりです。
介護リフォーム業者の選び方
介護リフォームは通常のリフォームとは目的が異なるため、介護に詳しいリフォーム業者を選ぶ必要があります。
福祉用具専門相談員や福祉住環境コーディネーターなど福祉関連の専門家が在籍しているリフォーム業者であれば安心です。
また、シルバーサービス振興会が認定した「介護保険における住宅改修の工程管理認定マーク」が掲げてあるリフォーム業者も、安心して介護リフォームがお願いできます。
画像引用:シルバーサービス振興会|介護保険における住宅改修の工程管理認定制度
複数業者から見積をとる
リフォーム業者の中には、依頼者の知識のなさにつけこんで不当に高い金額を提示してくるような業者も存在します。
また「介護保険で9割戻ってくるんだから」と、必要のないところまでリフォームをさせようとする業者も少なくありません。
悪質なリフォーム業者に捕まって不利益にならないよう、リフォーム業者を探すときには必ず複数業者から見積を取得してください。それぞれの業者からもらった見積を比較し、細かい項目までしっかり確認し、検討しましょう。
まとめ
今回は介護リフォーについて解説しました。
高齢者にとって住みやすい家は、誰にとっても住みやすい家です。
介護リフォームを実施し、誰もが安心して生活できる住環境を整えましょう。
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