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終活ブームはなぜ起こったか|人気の理由と社会的背景を考察する

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この記事のサマリ
  • 「終活」は2009年に雑誌連載で生まれた言葉
  • なぜ終活がブームになったのかは当時の社会情勢が影響している
  • 日本人の意識の変化も終活が流行った理由
  • 特に人気の終活方法はエンディングノート

終活がブームになってから既に10年近くの歳月が経ち、現在では一過性のブームを超えてすっかり日本中に定着しました。

終活の実践を公表している芸能人や有名人も多く、全国各地で終活イベントが開催されています。

なぜ終活はこんなにも人気が出たのでしょうか。

今回は日本の終活ブームがいつ始まったのか、流行した理由、そして特に人気がある終活方法について解説します。

終活ブームのきっかけ

雑誌

「終活」とは人生の終わり方を考える活動を意味する単語で、初めて登場したのは「週刊朝日(朝日新聞出版)」で2009年に連載されていた記事「現代終活事情」です。

なお上記連載はムック本「わたしの葬式自分のお墓―終活マニュアル2010(朝日新聞出版)」として出版されています。

この雑誌連載をきっかけに「終活」の単語が認知され、他のメディアでも死に備える活動を終活と呼称するようになりました。

名称は一気に広まり、2012年度のユーキャン流行語大賞でトップ10にもランクインしています。

参考 2012年流行語大賞トップ10ユーキャン

終活人気の背景

右上がり

終活がこの10年で急激に普及したのは、終活の言葉が登場した当時の社会情勢が大きく関係しています。

終活ブームが始まった2010年前後の日本の状況から、ブームが生まれた社会的な背景を確認しましょう。

日本の少子化・核家族化

日本の合計特殊出生率(一人の女性の出産平均値)は1940年代が第一次ベビーブームとされています。

その第一次ベビーブームにおける合計特殊出生率は4.3でしたが、2010年時点の統計では1.39と大幅に低下しました。なお最新の2019年統計ではさらにポイントが下がり1.36となっています。

昔は親の介護や死後の処理は複数の兄弟や大勢の親戚で分担できていましたが、少子化や核家族化の影響により労力を分担できないため、家族ひとりひとりへの負担が大きくのしかかることになりました。

頼れる家族がいない、少ない世帯が増えたために、終活の促進になりました。

出生数及び合計特殊出生率の年次推移

画像引用:内閣府|少子化対策の現状と課題

高齢者の長寿化

本来であれば喜ばしい長寿化も、老後への不安感が増す原因となっています。

医学の進歩によりこれまで治療が難しかった病気も治せるようになり、2010年当時の日本人の平均寿命は男性79.55歳・女性86.30歳と、1950年代に比べて20歳以上も伸びました。

平均寿命の推移

画像引用:内閣府|高齢化の状況

しかし高齢者が増えるに従い家族への負担も増加し、精神的にも経済的にも子世帯の生活を圧迫するようになり始めました。

また年齢を重ねると認知症になるリスクもあり、介護についても事前に検討しておく必要性が高まっています。

そのためエンディングノートに医療や介護の希望を記して残す動きも見られるようになりました。

離婚・再婚・事実婚の増加

離婚率の増加も終活の必要性が増した一因です。

厚生労働省の人口動態調査によると、離婚率は1980年で約14.2万件だった離婚件数は2010年には約25万件と大きく増加しました。

更に再婚ではステップファミリー(子連れ再婚家庭)が増えており、婚姻件数のうちおよそ4組に1組は再婚と考えられます。

離婚・再婚をされた方は家族関係も複雑になり、遺産をめぐる相続人間の争いが発生することも想定されるので、あらかじめ相続対策をしておくことが必要です。

参考 2010年人口動態調査厚生労働省

また近年では事実婚やパートナー制度による同性同士のカップルも容認される時代になりましたので、パートナーに遺産を譲るための対策も考えておかなければいけません。

内縁の妻など事実婚の相手に遺産を相続させる方法については以下の記事を参考にしてください。

内縁の妻でも相続できる|事実婚の相手とその子どもが遺産を受け取る方法

終活ブームをもたらした意識の変化

意識の変化

終活が多くの人に受け入れられたのは、上記の社会的な事情だけでなく、人々の意識の変化も影響しています。

今度は日本人の意識が昔と比べてどのように変わり、なぜそれが終活に結びついたのか見ていきましょう。

宗教観や死生観の変化

かつては「死」は忌むべきものとして捉えられてきましたが、近年では日本の宗教観が変化したことにより、死生観にも変化が見受けられます。

自分の死について語っても、相手から縁起でもないと忌避される可能性が薄れ、自分の死や終末期を前向きに捉える人が多くなってきました。

それに伴い終活についてもポジティブに受け止められることが多くなり、朝日新聞の終活関連記事でも年を追ってポジティブな表現が目立つようになっているとの研究結果があります。

参考 新聞報道における終活のとらえ方とその変遷株式会社NTTデータ数理システム 2017年度 学生奨励賞応募研究

家族に迷惑をかけたくない

リサーチ会社のマクロミルが行ったアンケートでは、終活経験者とこれから終活を始めようとしている人が「なぜ終活をしようと思ったのか」の設問におよそ9割が「家族に迷惑をかけたくない」と回答したとの結果が出ました。

終活の理由

画像引用:市場調査メディアHONOTE|終活の意識と実態調査

上記説明にあったように少子化・核家族化が進み、介護や死後の後始末を複数人で分担することが難しくなっている状況を踏まえ、家族にかかる負担をできるだけ軽減するようあらかじめ考えておくことが求められています。

参考 平成29年版高齢社会白書内閣府

東日本大震災の影響

百合の花

2011年に起こった東日本大震災によっても、日本人の意識は大きく変化しました。

2012年に電通総研が行った調査「震災後二年目に向けての生活者の意識・行動変化」によると、震災後1年を経て「想定外の事態の対策を立てたい」と考えたという人がアンケート回答者の7割を占めています。

万が一の事態が突然やってくることを目の当たりにし、震災だけでなく自分の終末期や死についても見直す必要があると考えた人が多いようです。

2020年現在では、まさに今世界中を席巻しているコロナ禍で、再び想定外の事態に備える必要性が高まっています。

新型コロナウィルス感染症への備えと、それをきっかけにする終活スタートについては以下の記事も参考にしてください。

もし親が新型コロナウィルス感染症になったら|今こそ親と「生と死」について対話をしよう

増えている終活イベント

上記のような要因により、現在では終活人気はますます高まっています。

多くの企業や自治体が各地で終活イベントや終活セミナーを開催するようになり、これから終活しようという方にとっては欲しい情報や相談相手が見つけやすくなっています。

ひとくちに終活イベントと言っても、寺院や霊園が開催する葬儀関連の終活イベントや、不動産業者や保険会社が開催する相続対策の終活イベントなど、さまざまな種類のイベントがあります。

終活イベントの詳細については以下の記事で詳しく解説していますので、興味のあるイベントを探してみてください。

終活イベントで学べる内容・種類・探し方・参加時の注意点をまとめました

具体的な終活方法

具体的な終活方法としては、まずはエンディングノートの作成が一番人気です。

エンディングノートはすぐにでも始められるので取りかかりやすく、金融情報や知人の連絡先など、大切な情報をまとめておく場所としての利点もあります。

また、状況に合わせて見直しや改定がしやすいのもメリットです。

以下サイトではエクセル版のエンディングノートを無料配布していますので、パソコンでエンディングノートを作成する場合は利用すると良いでしょう。

【Excel版】無料エンディングノート(終活ノート)

その他にも葬儀や墓の生前予約、生前整理などいろいろな種類の終活方法があります。

エンディングノート以外の終活方法を詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

終活の種類とおすすめ手順を解説|生前にも役立つ終活の多くのメリットとは

終活の効用は幸福度を高めること

未来を見つめる イメージ

この10年で終活は一過性のブームを超えてすっかり定着しましたが、ここであらためて終活がもたらす効用を紹介しましょう。

終活は自分の「終末」と「死」についてあらかじめ対策をする活動ですが、その目的は終活後の人生をより豊かにする「生」のためにあります。

特定非営利活動法人 老いの工学研究所が行った「現役世代の死生観に関する調査」によると、自分の死を意識している人の方が、意識していない人に比べて約2倍も幸福度が高いという調査結果が出ました。

終活で自分の死を前向きに捉えることが、残りの人生を充実したものにしたいという意識につながるのでしょう。

まとめ

砂浜と海鳥

今回は終活がなぜブームになったのか、そして終活がなぜ必要なのかについてまとめました。

実利的に役に立つだけでなく人生の幸福度をも高めてくれる終活は、これからもますます重要性と人気が増していくことが予想されます。

エンディングノートなどの取りかかりやすい終活方法から、これからの充実した人生をスタートさせましょう。

ライター紹介 | 杉田 Sugita
認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。

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