- 慶弔金とは会社の福利厚生制度のひとつ
- 結婚・出産・本人や家族の死去などのライフイベントにより慶弔金がもらえる
- 社会通念上相当額を超える慶弔金には税金がかかる
長い人生の中には、良いことも悪いことも起こり得ます。
会社勤めをしている人でしたら、そのような人生の節目の折に「お祝い」もしくは「お悔み」の形で、一定の金銭を頂く場合があります。
企業が自社の社員に対して、社員のライフイベントの際に渡す金銭を慶弔金と言います。
今回は慶弔金とは何か、どのような慶弔金の種類があるかについて解説します。
目次
慶弔金(けいちょうきん)とは
「慶弔(けいちょう)」には以下の意味があります。
祝い事ととむらい。結婚・出産などのよろこび事と葬式。 「 -電報」 「 -用の礼服」
引用:三省堂|大辞林 第三版
慶弔金とは、上記のような祝い事・弔事があった際に会社から支払われる金銭のことです。会社の福利厚生として、多くの企業では慶弔金制度を設けています。
独立行政法人労働政策研究・研修機構のアンケート調査結果によれば、2018年時点で東京商工リサーチの企業情報データベースに登録されている企業で慶弔見舞金制度が設けられている割合は86.5%です。
参考:厚生労働省|記者発表「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」|労働政策研究・研修機構(JILPT)
自分の会社に慶弔金制度があるかどうかは、会社の就業規則等により確認できます。
弔慰金(ちょういきん)とは
弔慰金(ちょういきん)とは、慶弔金のなかでも「弔い」に関連するライフイベントの際に支払われる金銭です。
香典と趣旨は似ていますが、香典は仏教に由来してお悔みの意思を伝えるものであるのに対して、弔慰金は特定の宗教に属さない点が異なります。
慶弔金の種類
支給される慶弔金の種類は各企業の就業規則により異なりますが、一般的には以下の6つの慶弔金(弔慰金含む)が規定されています。
1.結婚祝金
結婚祝金は社員が結婚した際に支給されるお祝い金です。
社員本人の婚姻時に支給される結婚祝金に加え、社員の子供が結婚した際にも支給している企業もあります。
一般的には、結婚は婚姻届の提出の有無が基準となります。結婚式・披露宴を開催するかどうかは関係ありません。
2.出産祝金
出産祝金は社員の実子が誕生した際に支給されるお祝い金です。
社員本人ではなく配偶者が出産した場合に支給されるかどうかは、各企業の規定によります。
3.弔慰金(本人)
弔慰金(本人)は社員本人が亡くなった際に支給されるお悔み金です。
支給対象者は社員本人ではなく、本人の配偶者・子供・両親などの遺族のいずれかになります。
4.弔慰金(家族)
弔慰金(家族)は社員の家族が亡くなった際に支給されるお悔み金です。
対象となる家族の範囲は、社員本人の配偶者・子供・実両親です。兄弟や養父母、義両親も支給対象に含めている企業も少数ながら存在します。
5.傷病見舞金
傷病見舞金は社員本人が病気やケガをしたときに支給されるお見舞金です。
対象となる病気やケガの範囲は各企業の規定により異なります。業務上の傷病に限り支給したり、一定期間以上の休業が必要となった場合にのみ支給するなど、企業による差が大きいのが特徴です。
6.災害見舞金
災害見舞金は社員本人が地震・台風などの天災、または火災などの人為的災害により被災した際に支給されるお見舞い金です。
被災したと見なす基準は、社員が居住する自宅の損壊の有無と規定している企業が多いです。また社員本人が世帯主か非世帯主か、自宅が持ち家か賃貸かなどによっても異なります。
慶弔金の相場
支給される慶弔金の額は各企業によって異なります。
以下では一般的な慶弔金の相場をご紹介しますが、ご自身の会社では実際にいくら支給されるのかは、必ず就業規則等で確認してください。
結婚祝金 | ・社員本人が結婚する場合:1万円~5万円 ・社員の子どもが結婚する場合:1万円~3万円 |
出産祝金 | 1万円~3万円 |
弔慰金(本人) | ※相場なし |
弔慰金(家族) | ・社員本人が喪主の場合:3万円~5万円 ・社員本人が喪主以外の場合:1万円~2万円 |
傷病見舞金 | ・業務上の傷病の場合:2万円~10万円 ・業務外の傷病の場合:1万円~5万円 |
災害見舞金 | 被害の程度により1万円~50万円 |
弔慰金(本人)の相場
社員本人が死亡した場合の弔慰金は、各企業の規定だけでなく死亡理由が業務上・業務外かの別や、社員の勤続年数などによっても大きく異なります。
また企業が団体保険に加入しているか否かによっても差異があるため、相場の算出は非常に困難です。
慶弔金にかかる税金
会社から慶弔金を受け取ったときには、その収入に対して基本的には税金を支払う必要はありません。
そのため給与の支払時に発生する源泉徴収による控除もされず、全額支給となります。
ただし、非課税となるのは社会通念上で相当とされる金額の範囲内の慶弔金に限ります。あまりにも高額な慶弔金を受け取った場合には給与支給と同じ扱いとなり、所得税および住民税を課税される可能性があります。
弔慰金(本人)の非課税限度額
慶弔金の中でも社員本人が亡くなったときの弔慰金は支給額の幅が大きいため「社会通念上相当とされる額」がはっきりしません。
そのため国税庁では、弔慰金(本人)の非課税限度額を定めています。
(1)被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額
(2)被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき
被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額
(注)普通給与とは、俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計額をいいます。
例えば年収300万円の社員が亡くなったときには、(1)の業務上の死亡で900万円、(2)の業務外の死亡で150万円までの支給であれば課税されません。
限度額を超えた支給がされた場合には弔慰金相当額が相続財産の一部と見なされ、相続税の対象になります。
弔慰金ではなく死亡退職金が支給されたときの非課税限度額
社員本人が亡くなったとき、企業から死亡退職金が支払われるケースがあります。この死亡退職金は弔慰金と区別され、社員本人の相続財産の一部として相続税の課税対象となります。
ただし、死亡退職金や功労金に対しても非課税限度額が設けられています。
非課税となる死亡退職金等の額は以下の計算式で決定されます。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
なお、死亡退職金を法定相続人以外の人がもらったときには上記の計算式は適用されず、死亡退職金の全額が相続税対象になります。
慶弔金をもらうためには
慶弔金や弔慰金をもらえるようなライフイベントが発生した際には、就業している会社の総務部・労務部などに支給申請を行います。
結婚祝金や出産祝金の場合には社会保険等の扶養を追加するため会社に報告する場合が多いので、慶弔金に関しても担当部署が連携して支給手続きをしてくれるケースもあります。
ですが会社側が社員のライフイベントの発生自体を認知できないと、慶弔金を支給できません。そのような場合には社員自らが会社に慶弔金の申請をする必要があります。
会社の就業規則に慶弔金の規定がある場合には、慶弔金申請は社員の当然の権利ですので、支給申請しましょう。
申請の際に必要な書類などは、企業により異なります。傷病見舞金には診断書の提出、災害見舞金には罹災証明書の提出が必要としている企業も存在します。
慶弔金を受け取ったら
慶弔金を受け取ったときには、基本的にはお返しをする必要はありません。
会社の福利厚生として支給している金銭なので、内祝いや香典返しなどの返礼の品は不要です。
ただし同僚有志などから香典やお祝い金、お見舞金などを頂いた際には、慶弔金とは区別してきちんと返礼をしましょう。
まとめ
今回は各企業が設けている慶弔金制度について解説しました。
人生の節目の際にはいろいろと出費が重なりますので、慶弔金は社員にとってありがたい制度です。
慶弔金がどのようなときにもらえるものなのかを理解しておき、自分の会社の福利厚生制度を存分に活用しましょう。
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