- 家族信託とは資産の管理を家族に任せる仕組みのこと
- 判断能力を失う前に早めに検討しよう
- 手続きが多く難しいため専門家に相談した方がよい
- 4つの相談先をピックアップ!
目次
家族信託とは?
「家族信託」とは資産管理する手法のひとつです。
認知症等で判断能力を失い、資産の管理が困難になってしまうことに備え、事前にお持ちの資産を信頼できる家族に託して管理を任せる仕組みです。
それでは具体的に家族信託についてご紹介していきます。
こんなときに家族信託を検討しよう
先程もお話したように家族信託を利用するのは、判断能力を失い、資産の管理が困難になってしまうことに備えるためです。
「備える」という部分が重要で、判断能力を失ってしまってからでは遅いということです。
認知症等に備え、元気なうちからできるだけ早く検討するべきでしょう。検討するタイミングとしては以下のような例が考えられます。
- 仕事を定年退職し、老後の計画をたてるとき
- 認知症の初期段階であると診断されたとき
また、認知症になってしまったときの対策のひとつに「成年後見制度」というものもありますが、「後見開始後は、行った職務の内容(後見事務)を定期的にまたは随時に家庭裁判所や後見監督人に報告しなければならない」、「本人の利益に反して本人の財産を処分(売却や贈与など)してはいけない」等、制度に制約が多く、気軽に利用できないというデメリットがあります。
また、実際に後見が開始されるのは、本人の判断能力が衰えてからになってしまいます。
任意後見の場合は本人が後見をしてもらいたい人を選ぶことができますが、法定後見の場合は家庭裁判所の審判によるので、必ずしも家族が後見人になれるとは限りません。
そういう状態になる前に家族信託の利用を検討するのがおすすめです。
家族信託の具体的な仕組み
家族信託の仕組みは具体的にどうなっているのでしょうか。
信託とは、財産を持つ人(委託者)が、その所有権を他の人(受託者)に渡して管理や処分を任せることを言います。
信託銀行など営利目的のものは「商事信託」、営利を目的としないものは「民事信託」と呼ばれています。
2007年に信託法が改訂されるまでは商事信託だけだったので、民事信託は非常に新しい制度といえます。「民事信託」の中でも財産を家族に託すものについては、特に「家族信託」と呼ばれています。
代表的な例として、障害を持った長男のいる家庭があったとします。
父親が自分の財産の中から1,000万円を長女に託し、「私に万一のことがあったら、この財産を管理してお兄ちゃんの生活を支えてあげてほしい。」と依頼した場合、これは家族信託になります。このとき、父親が委託者、長女が受託者、長男が受益者となります。
また、委託者と受益者を兼ねることもできます。
例えば、父親が長女に財産を託し、「私が認知症になり判断能力を失ったら、この財産を管理して私の世話をしてほしい。」と依頼した場合、父親が委託者と受益者、長女が受託者となります。
家族信託では、信託業務が終了した後に残った財産についても予め委託者が決定しておくことができます。受託者が受け取る、どこかの団体に寄付する、委託者が存命ならば自分の口座に残金を戻してもらうなど、自由に決められるのです。
家族信託の進め方
家族信託は、委託者と受託者が契約を結ぶことで成立します。
契約内容として、どの財産を・家族の誰に・どのように管理してもらうか、報酬の有無、業務終了後の残余財産の処理などを検討しなければなりません。
家族信託の契約をしてから判断能力を失う、または亡くなるまでの長いスパンの財産管理の計画を立てる必要があり、また契約書作成等の準備も必要なため個人で手続きをすべて行うことは簡単ではありません。
自身が制度に詳しい専門家ではない場合は、プロに相談することをおすすめします。
特に家族信託は、商事信託と比べ新しい制度であるため、専門家ですら実績が少ないケースもあります。信頼できる専門家を慎重に検討する必要があります。
そこで、家族信託を相談する際の相談先の例を以下にご紹介していきます。
家族信託の相談先
1.みずほ信託銀行 家族信託「安心の贈り物」
・通常、相続が発生すると、遺言書や遺産分割協議による相続手続きが完了しなければ、預金を引き出すことはできません。
・本商品は、相続発生時に所定の確認書類を提出していただく簡単なお手続きで、すみやかにお受取人さまに金銭をお渡しできます。
みずほ信託銀行の提供する家族信託サービスです。
みずほ信託銀行が受託者として手続きを行ってくれます。
ご本人に万一のことがあった場合、みずほ信託銀行から受取人である家族に対して資金が送られます。
みずほ信託銀行が一括して手続きを行ってくれるので、委託者の作業がほとんどなく簡単です。
参考 家族信託「安心の贈り物」みずほ信託銀行2.オリックス銀行 家族信託サポートサービス
その際、「成年後見制度」や「遺言」など、他の法制度と「家族信託」を比較検討しながら、あるいは組み合わせながら、お客さまのニーズに沿った財産管理や資産承継等の方法をご提案します。
オリックス銀行が提供する家族信託に関するサポートサービスです。
信託口座の開設や、実際に手続きをおこなう際の専門家の紹介など手厚いサポートを受けられます。
しかし、サポートサービスにかかわる手数料は最低550,000円(消費税込)となっており、紹介された専門家への依頼にかかる費用は自己負担など、費用面で注意が必要です。
参考 家族信託サポートサービスオリックス銀行3.武蔵野銀行 「むさしのファミリー信託サポート」
武蔵野銀行が提供するサポートサービスです。
オリックス銀行と同じく手続きに関するサポートがメインのサービスです。
そのため、受託者は銀行ではなく家族になります。
最低手数料は税込み825,000(消費税込)となっており、オリックス銀行よりは少し高いです。
参考 むさしのファミリー信託サポート武蔵野銀行4.ひかり相続手続きサポーター ひかり家族信託サポートサービス
家族信託に精通する司法書士「ひかり相続手続きサポーター」が手続きのサポートをしてくれます。
信託契約の提案、契約書の作成から口座開設のサポートなど手続きのほぼすべてを助けてくれます。
費用の参考例としては550,000円+実費と紹介されています。
信託財産に不動産が含まれる場合は、直接こういった専門家に依頼するのも選択肢のひとつですね。
参考 ひかり家族信託サポートサービスひかり相続手続きサポーター家族信託 相談先 比較表
相談先 | 特徴 |
みずほ信託銀行 家族信託「安心の贈り物」 | ・契約からその後のサポートまで一括して対応してくれる ・みずほ信託銀行が受託者となる |
オリックス銀行 家族信託サポートサービス | ・信託手続きに関するサポートがメインのサービス ・実際の手続きの際には専門家を紹介してくれる ・最低手数料は550,000円 |
武蔵野銀行 「むさしのファミリー信託サポート」 | ・信託手続きに関するサポートがメインのサービス ・最低手数料は825,000円 |
ひかり相続手続きサポーター ひかり家族信託サポートサービス | ・司法書士によるサポートサービス ・契約書の作成を含めほぼすべての手続きをサポート ・費用の参考例は550,000円+実費 |
※本記事は2019年10月に執筆された記事のため、最新情報については各社にお問い合わせください。
行政書士事務所経営。専門は知的財産ですが、許認可から相続まであらゆる業務を行っています。また、遺言執行や任意後見関係を専門とする社団法人の理事もしています。アドバイスや業務遂行でお客様の問題が解決するととても嬉しくやりがいを感じます。行政書士ほか、宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級の資格所持。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!