- 失業保険(基本手当)は雇用保険加入者が離職後にもらえる再就職支援の給付金
- 60~64歳で定年退職した人は失業保険がもらえる
- 65歳以上で定年退職した人は失業保険がもらえない(別の給付金がもらえる)
- 失業保険をもらうと年金が支給停止する(年金を繰り上げ受給している人は注意)
勤めている会社で雇用保険に加入していた人は、会社を辞めると失業保険がもらえます。
では定年まで働き、会社が規定する定年年齢で退職した人でも失業保険はもらえるのでしょうか。
定年退職と失業保険の関係は、会社が定める定年年齢により変わります。
今回は定年退職と失業保険との関連性や、定年退職した人が失業保険をもらう方法などについて解説します。
目次
失業保険とは
一般的に「失業保険」と呼ばれている給付金とは、雇用保険の加入者(被保険者)が受けられる失業等給付の一種です。正式名称は「求職者給付(基本手当)」と言います。
会社を退職すると収入がなくなるため、次の仕事を早く見つけないと生活できません。失業保険は会社を退職した人が安定した生活を送り、新たな仕事を見つけて再就職できるように生活費の一部を補償するための制度です。
参考 基本手当についてハローワークインターネットサービス今回の記事では正式名称の「基本手当」ではなく、一般的な通称の「失業保険」として説明していきます。
なお雇用保険の失業等給付には、求職者給付以外にもいくつかの給付金が存在します。そのうちのひとつ「教育訓練給付」を利用した職業訓練(ハロートレーニング)については以下の記事で詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。
職業訓練とは|ハローワーク申込方法・受講内容・期間・費用・手当など解説定年退職年齢と失業保険との関係
定年退職した後で失業保険がもらえるかどうかは、定年退職した人がどのような形で雇用保険に加入していたかで決まります。
そもそも会社で雇用保険に加入していなかった人は失業保険の対象にはなりません。自営業の人やパート・アルバイトの勤務時間が週20時間未満だった人は、雇用保険に加入していないので失業保険はもらえません。
さらに、雇用保険に加入していた人も年齢により属性が異なります。
定年退職する年齢と、失業保険受給の有無について確認しましょう。
60~64歳で定年退職する人
会社の規定で定年年齢が60~64歳と定められている場合は、定年退職した時点でその人は雇用保険の一般被保険者だったために失業保険の対象になります。
具体的には、65歳に到達する誕生日の前々日までに定年退職する必要があります。
雇用保険では被保険者の年齢を「年齢計算ニ関スル法律」に従って、誕生日の前日午前0時に繰り上げます。
そのため、例えば10月12日が誕生日の人は、64歳の10月10日までに定年退職しなければ失業保険が受給できなくなります。
65歳以上で定年退職する人
雇用保険に加入している人が65歳(誕生日の前日)に到達すると、雇用保険被保険者の属性は「一般被保険者」ではなく「高年齢被保険者」に変わります。
高年齢被保険者は失業保険(基本手当)の対象外です。そのため定年退職しても失業保険はもらえません。
しかし65歳以上の高年齢被保険者は、基本手当の代わりに高年齢求職者給付金が受給できるようになります。高年齢求職者給付金は失業保険と目的は同じですが、受給回数や受給額に違いがあります。
「高年齢求職者給付金」については後ほど詳しく説明します。
失業保険の給付条件とは
64歳までに定年退職した人の全員が失業保険をもらえるわけではありません。
失業保険を受給するためには、年齢を含め以下3つの給付条件を満たす必要があります。
- 65歳未満であること
- 雇用保険の被保険者期間が離職前の2年間に通算して12ヶ月以上あること
- 再就職しようとする意思や能力があること。
失業保険はあくまでも、離職者の再就職を支援するための保険制度です。そのため「失業保険をもらってしばらくのんびりしよう」と考えている人は失業保険を受給できません。
定年退職後に失業保険をもらう方法
以下からは、実際に定年退職してから失業保険をもらうまでの流れと、申請の方法を説明します。
失業保険の給付期間中に必要なこと
初回の失業保険が振り込まれた後も、給付期間中は、原則として4週間に1回ハローワークへ出向いて求職状況等の報告を行わなければいけません。
指定日にハローワークへ行かないと失業認定が取り消され、失業保険がもらえなくなります。
失業保険Q&A
以下からは、失業保険でよくある質問に回答します。
失業保険の申請で必要な書類は?
失業保険の申請時にハローワークへ提出する書類は以下の書類です。
- 離職票-1
- 離職票-2
- 本人確認書類(免許証・マイナンバーカードなど)
- 写真(2枚)
- 認印
- 本人名義の預金通帳(キャッシュカードでも可)
失業保険の給付日数は?
失業保険の給付日数は、退職までに何年間雇用保険の被保険者だったかにより異なります。
被保険者だった期間 | 失業保険の給付日数 |
1年以上10年未満 | 90日 |
10年以上20年未満 | 120日 |
20年以上 | 150日 |
失業保険の給付額は?
失業保険の給付額(基本手当日額)は以下の方法で算出します。
《賃金日額の算出方法》
定年退職直前6ヶ月で支給された賃金(ボーナスは除外)÷180=賃金日額
《給付額の算出方法》
賃金日額×給付率(45~80%)=1日あたりの給付額
給付率は賃金日額に応じて変動します。賃金が低いほど給付率はアップします。
なお給付額には上限金額が設けられており、60歳以上65歳未満の上限額は7,294円(2023年8月時点)です。
参考 基本手当についてハローワークインターネットサービス失業保険の受給期限は?
失業保険の受給期限は離職した日の翌日から1年間です。
定年退職してから1年間が経過すると失業保険の申請が認められなくなるだけでなく、それまでもらえていた失業保険の給付も終了します。
失業保険を受給中に再就職したら?
失業保険を受給中に再就職が決まったときには失業保険の給付も終了します。
なお給付期間を3分の1以上残して早期に再就職した人は「再就職手当」が別途支給されます。
再就職手当は別名「ハローワーク就職祝い金」とも呼ばれています。
参考 再就職手当のご案内ハローワークインターネットサービス老齢年金受給者は失業保険申請に注意が必要
老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給開始は原則として65歳からですが、中には繰り上げ受給制度を利用して60歳から年金をもらっている人もいます。
しかし年金を繰り上げ受給している人は、定年退職してから失業保険をもらうとかえって損をしてしまう可能性があります。
失業保険は収入と見なされるため、失業保険の受給中には老齢年金の一部または全額が停止されます。
老齢年金を繰り上げ受給すると年金額は減額され、いったん繰り上げの手続きをすると元には戻せません。失業保険の受給により年金が支給停止しても減額分は戻らないので注意してください。
なお、老齢年金は失業保険の受給だけでなく定年退職後の再就職・再雇用でも停止します。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
年金受給者は要注意|アルバイト・正社員で働く際に気をつけたい年金減額・停止条件と対策65歳以上の定年退職者がもらえる給付金
上記で説明したとおり、定年退職年齢が65歳以上の人は失業保険がもらえません。
ですが、65歳以上で定年退職した人は失業保険の代わりに「高年齢求職者給付金」がもらえます。
高年齢求職者給付金は失業保険に比べて給付日数が少なくなりますが、高年齢求職者給付金が支給されても年金受給には影響しません。
年金が停止されないため、65歳以上で定年退職した後に再就職を希望している人は申請した方がお得と言えます。
高年齢求職者給付金の具体的な受給条件や受給額については、以下の記事で詳しく解説しています。
失業保険は65歳以上でももらえる?条件と受給額の計算・注意点を解説定年退職後に再就職する方法
失業保険はあくまでも、再就職して働く意思がある人に対する給付金です。
定年退職した人でも再就職の活動が前提となります。
ハローワークでも再就職先の紹介や就職活動の支援を行ってはいますが、ハローワーク以外でも再就職先を見つける方法はたくさんあります。
失業保険の給付が終わっても継続した収入を確保するために、以下の記事なども参考にして失業保険の受給中から積極的に再就職先を探しましょう。
60歳からの仕事探し|シニア歓迎の職種と仕事の探し方まとめ
今回は定年退職と失業保険について解説しました。
失業保険(基本手当)は、これまで頑張って働いていた人の離職後の生活を補償し、その人の再出発を応援する制度です。
定年退職しても、いつまでも現役の気持ちでもう一度求職活動を開始しましょう。
終活カウンセラー2級・認知症サポーター。父母の介護と看取りの経験を元にした、ナマの知識とノウハウを共有してまいります。
「そなサポ」は、大切な資産や継承者を事前に登録することで、将来のスムーズな相続をサポートするもしもの備えの終活アプリです。
受け継ぐ相手への想いを込めた「動画メッセージ」を残すことができるほか、離れて暮らす子どもたち(資産の継承者)に利用者の元気を自動で通知する「見守りサービス」もご利用できます。
▶︎今すぐ無料ダウンロード!