- 終活しないと残された家族にはさまざまな困りごとが起きる
- 家族のための終活は「誰が」家族なのかによって変わる
- 「おひとりさま」でも終活は必要
終活の目的として「自分が亡き後に残された家族が困らないようにする」ことを挙げる方がいますが、終活をしない場合どんな点が困るのでしょうか。
そして家族が安心できて、自分自身も満足できる終活を行うためには、どのような点に注意して進めれば良いのでしょうか。
今回は「家族のための終活」について解説します。
目次
終活しないと家族が困る問題点
まずは、終活をしないと家族が困る問題点について挙げてみます。
一口に家族と言っても、親・配偶者・子供などの関係性は個々の家庭状況により異なります。親が亡くなった場合にはどうなるか、万が一自分が死んだときにはどうなるかなど、それぞれ自分の状況と照らしあわせて考えてみましょう。
葬儀・墓の手配
人が亡くなると家族は悲しみにくれる間もなく、葬儀の手配を始める必要があります。
葬儀のスタイルをどうするか、誰を呼ぶか、遺影写真には何を使うかなど、決定すべきことは多岐に渡ります。
大切な家族を亡くしたショックに加え、葬儀手配の苦労も抱えるので精神的にも肉体的にも大変です。
また先祖代々の墓が無い世帯では、どこに埋葬するかも決めなければいけません。四十九日に納骨を希望している場合には、墓地や墓石の選定から契約、名入れまでを急ピッチで進める必要があります。
生活資金の不足
亡くなった方が一家の大黒柱だった場合には、残された遺族が経済的に困窮する可能性があります。
生命保険文化センターが行ったアンケート調査でも、自分自身に万一の事態が起こった際、残される家族に対して67.6%もの人が不安感を持っており、そのうち43.5%は遺族の日常生活資金の不足を心配しています。
画像引用:公益財団法人 生命保険文化センター|万一の場合に、どんな不安がある?
相続トラブル
家族の生活資金を心配しなくても良いぐらい資産がある方には、相続トラブルの心配があります。
近年では離婚や再婚の増加に伴い、相続関係が複雑になる方が多くなっています。また被相続人の介護を担っていた相続人の配偶者に遺産を与えるかどうかなど、法律で定められている割合(法定相続分)では解決できない場合もあります。
相続の際にはこれまで見過ごされてきた家族関係の軋轢が表沙汰になるようなケースも見られるため、慎重な対応が求められます。
遺産分割ついて詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
遺品の処分
服や日用品、趣味の品など、ひとりの人間が所有していた品物は膨大な量となります。
遺品の処分を全て家族に任せるとなると、その量に応じて費用もかかります。中には価値のある品物や、捨ててはいけない重要物の可能性もあり、故人以外には適切な処分方法がわからないようなものも多くあります。
ただ「捨てれば良い」で済まないのが遺品処分の大変なところです。
残された家族に負担をかけないためにも、生前から不要なものは処分したり、価値あるものは贈与したり整理をすることで家族の負担を減らすことができます。
遺品の種類やそれぞれの片付け方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
役所の手続き・各種名義変更
人が亡くなったときには、非常に多くの手続きが必要になります。
死亡届や火葬許可申請書の提出から始まり、年金・健康保険等の届出、さらに公共料金の解約や名義変更、携帯電話の解約など、その内容は多岐にわたります。
やるべき事柄があらかじめわかっていればまだしも「何を手続きすれば良いのか」の洗い出しからのスタートになると、多くの手間と時間がかかってしまいます。
一般的に必要となる手続きを知りたい方は、以下記事も参考にしてください。
次に、これらの問題点を終活でどのように解決していくかを説明していきます。
家族のために終活でできること
上記の説明でわかるように、人が亡くなると残された家族にはさまざまな苦労や困難を強いることになります。
少しでも苦労やリスクを低減できるよう、今から「家族のための終活」を始めましょう。
ここからは具体的に、家族のための終活では何をしていけば良いかについて説明します。
具体的には以下のとおりです。
家族会議の開催
何よりもまず一番にやっておきたいのは、家族との話し合いです。自分自身と家族が満足できる終活になるよう、家族会議を開きましょう。
終活とはあくまでも事前準備ですので、葬儀や死後事務を実行するのは家族です。家族の協力や同意が得られていると何かあったときにも安心できます。
また終活の一環として生前相続を行う場合には、贈与者と受贈者の間で契約が必要になる場合があります。生前相続による死後の相続トラブルを避けるためにも、契約書の取り交わしや他の相続人の了承を得ておくことが大切です。
生前相続について詳しく知りたい方は、以下記事も参考にしてください。
葬儀社・墓の予約
葬儀社は通夜・告別式のときだけでなく、病院から遺体を搬送する時点から利用します。
そのため人が亡くなったときにはすぐに葬儀社に連絡する必要がありますので、お願いする葬儀社をあらかじめ決めておく方が良いでしょう。
また葬儀の形式を一般葬にするか家族葬にするかを決めておき、概算の見積を取得しておけば思わぬ出費に慌てることもありません。
さらに入るべき先祖代々の墓が無い方は、墓の生前予約をしておくと安心です。お墓がある方でも跡継ぎがいない家庭や個人的に散骨を希望する方は、今あるお墓を「墓じまい」することも含めて検討しましょう。
エンディングノートの作成
エンディングノートは誰かが亡くなった後の家族のバイブルとなるべき存在です。
できるだけの情報を書きこんで、家族が「これを見ればわかる」状態にしておくのがベストです。
以下GordenYerasのサイトから、簡単なアンケートに答えるだけでエクセル版エンディングノートが無料でもらえます。日頃パソコンに慣れ親しんでいる方におすすめです。
▶【Excel版】無料エンディングノート(終活ノート)はこちら
エンディングノートには一般的に、以下のような情報を記載します。
葬儀に関する希望 | ・形式(一般葬・家族葬・直葬など) ・葬儀に呼びたい人の連絡先 ・遺影写真の指定 |
墓に関する希望 | ・永代供養墓・手元供養・散骨など |
資産情報 | ・預貯金・証券の金融機関名・口座番号 ・保険会社名・保険の種類 ・不動産情報 ・年金・社会保険情報 ・負債 |
デジタル情報 | ・携帯・スマホの契約情報 ・インターネットプロバイダの契約情報 ・SNS等のアカウント |
上記だけでなく、その他家族への感謝の言葉など、自分が家族に伝えておきたいことは何でも書いて構いません。
なおデジタル情報などを記載するときには、パスワードの管理に十分注意してください。
遺言書の作成
上記のエンディングノートでは法的な効力が認められませんので、遺産の相続先に希望がある方には遺言書を作成しておくことをおすすめします。
これまで自筆証書遺言はすべて自ら記述する必要がありましたが、2019年の相続法改正により一部パソコン等で作成することが可能になるなど、以前より多少は作成しやすくなってきています。
書き方には細かい決まりがあるため、正しい書き方や詳しい内容を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
家族の生活資金確保
一家の収入を担う人が亡くなった後でも家族が生活に困らないようにするためには、生前から生活資金の確保手段をよく考えておくことが重要です。
小さい子供がいるなど残された家族がすぐに就業できないような状況にある方は、生命保険への加入を検討するなど、特にしっかり備えておきましょう。
ライフプランを作成し、生活費の把握や貯蓄の計画、保険の見直しなどを行うことで、いつ、どのくらいの生活資金が必要かがわかります。
遺族年金の確認
遺族年金とは、国民年金もしくは厚生年金保険に加入していた人が亡くなったときに、加入者の収入によって生計を維持していた家族が受け取れる公的年金です。
遺族年金は年金保険の種類によって以下の2つに分けられます。
遺族基礎年金 | 国民年金加入者の家族が受け取れる年金 |
遺族厚生年金 | 厚生年金加入者の家族が受け取れる年金 |
受け取れる遺族年金の額は、加入者の世帯状況や配偶者の年齢によって異なります。
画像引用:オリックス生命保険|遺族年金(必要保障額シミュレーション)
上記は夫が亡くなったときに妻と子に対して支給される遺族年金の額です。2013年までは妻が亡くなった際には遺族年金の支給はされませんでしたが、2014年以降は父子家庭に対しても支給されるようになりました。
画像引用:オリックス生命保険|遺族年金(必要保障額シミュレーション)
生命保険の加入
上記の遺族年金だけでは必要な生活資金には足りない場合、検討できる手段が民間の生命保険への加入です。
公益財団法人生命保険文化センターの「令和元年度生活保障に関する調査」によれば、遺族年金などの公的な死亡保障で生活資金をまかなえるとは思っていない方が回答者の67.8%です。
画像引用:公益財団法人生命保険文化センター|万一の場合の不安に対してどう備えている?
補填手段としては生命保険の加入が63.1%を占め、多くの方が家族のために経済的な準備をしています。
画像引用:公益財団法人生命保険文化センター|万一の場合の不安に対してどう備えている?
生前整理
不用品を断捨離してシンプルな暮らしをするのも生前整理として役立ちますが、家族のために行う生前整理では、処分して良い物と処分して欲しくない物の区別をはっきりさせておくことが重要です。
資産価値のある品物や思い出として残してほしい品物は、あらかじめ家族に死後の引き渡し先を伝えておけば、誤って廃棄される可能性が少なくなります。
また手紙や思い出の写真などは、故人にとっては大切ではありますが、遺族にとっては処分に困るものの代表です。少しずつ処分するか、1ヶ所にまとめておいて、いざというときは処分して構わないと伝えておきましょう。
家族がいない場合でも終活は必要
ここまでは「家族のための終活」について説明してきましたが、それでは親や配偶者、子のいない「おひとりさま」の場合には終活は必要ないのでしょうか。
結論としては、たとえ「おひとりさま」であっても終活は必要です。
家族の生活資金の準備は必要ありませんが、墓の予約や生前整理など、できることはたくさんあります。
また、遺産を特定の個人や団体に遺贈する場合には遺言書が必須ですので、家族がいる方ばかりでなく「おひとりさま」こそ終活が必要だと認識しましょう。
おひとりさまの終活について方は以下の記事を参考にしてください。
まとめ
今回は「家族のための終活」について解説しました。
自分が生きている間はもちろん、もし自分が死んでも家族には幸せな人生を送り続けて欲しいと、多くの方が考えています。
家族に対する思いやりのひとつとして、終活という家族への大きな贈り物を用意しておきましょう。
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