- パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が急激に減少する病気
- 高齢になるとパーキンソン病の発症率が上昇する
- パーキンソン病患者は運動機能に障害が出る(非運動症状もあり)
- パーキンソン病は薬・リハビリ・手術で進行を遅らすことが可能
- パーキンソン病の予防法を紹介
年齢を重ねると、さまざまな病気にかかるリスクが上昇します。
加齢に伴いリスクが増える病気は心筋梗塞や脳卒中などの生命にかかわる病気や認知症などが代表的ですが、それだけではありません。
神経疾患であるパーキンソン病も高齢になるほど発症リスクが増える病気です。パーキンソン病にかかると日常生活に大きく支障をきたすため、高齢者はできる限り予防につとめなければいけません。
今回はパーキンソン病について、症状や治療法、予防法などをわかりやすく解説します。
目次
パーキンソン病とは
パーキンソン病とは脳内のドパミン神経細胞が少しずつ減少して、身体のスムーズな動きに支障をきたす病気です。
元俳優のマイケル・J・フォックスさんや、元ボクサーのモハメド・アリさん、日本ではタレントのみのもんたさんなどがパーキンソン病の罹患を公表しています。
日本国内では国の指定難病に指定され、2021年末時点では約14万人がパーキンソン病の治療による医療費助成を受けています。
参考 パーキンソン病(指定難病6)難病情報センター高齢になるほど発症率が増加する病気
日本では人口10万人あたり100~150人が発症すると推定されているパーキンソン病ですが、患者の大半は50歳以上です。
遺伝性の若年性パーキンソン病を除けば、多くの人は50~65歳にパーキンソン病を発症し、その後も発症率は高齢になるほど増加します。
日本における高齢者の増加に伴い、今後はさらにパーキンソン病の患者が増えていくことが推定されます。その様子を「パーキンソン・パンデミック」と呼ぶ医療関係者もいるほどです。
画像引用:岐阜大学大学院|パーキンソン病・パンデミック -いま行動起こす時-
患者の約4割が認知症に移行する
パーキンソン病は身体の動きが制限される病気ではありますが、人体への影響は身体の動きだけにとどまりません。
パーキンソン病を発症した高齢者の約4割がパーキンソン病認知症も発症すると言われています。ほとんどの場合パーキンソン病認知症に移行するのは70歳以降で、パーキンソン病の診断から10~15年後です。
パーキンソン病認知症を発症した人は、他の認知症のように判断能力や意思決定能力が衰えるだけでなく、認知症のないパーキンソン病患者と比べてもこわばりや動きの鈍化などがより一層悪化すると言われています。
パーキンソン病に似た認知症がある
認知症の中には、パーキンソン病と同じような症状があらわれる認知症があります。
レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体という特殊なたんぱく質が過剰に蓄積して脳内のドパミン神経細胞が減少するために起こる認知症です。
パーキンソン病もレビー小体型認知症と同じくドパミン神経細胞の減少が理由の病気なため、同じ病気が違う表れ方をしたのではないかと考えている研究者もいます。
ただしパーキンソン病認知症はレビー小体型認知症に比べて幻覚や妄想の症状が起こる頻度が少ないため、まったく同じ病気というわけでもないようです。
ひとくちに認知症と言っても、その種類により発生する症状や発症の原因はそれぞれ異なります。認知症の種類について詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
認知症の原因は70種類以上|代表的な認知症の原因疾患と対策を紹介パーキンソン病の原因
パーキンソン病は脳内のドパミン神経細胞が少しずつ減少するために起きる病気だと上記で説明しましたが、それではなぜ脳内のドパミン神経細胞が減ってしまうのでしょうか。
ドパミン神経細胞は年齢とともに自然に減っていきますが、パーキンソン病にかかった人は通常よりも速いスピードでドパミン神経細胞が減っていきます。
なぜパーキンソン病患者はドパミン神経細胞が急激に減ってしまうのか、その理由はまだ解明されていません。複数のリスク遺伝子に環境要因が加わって発症に至ると考えられています。
パーキンソン病の症状
パーキンソン病の症状は、身体の動きにかかわる運動症状と、動き以外の非運動症状に分けられます。
それぞれの症状を説明します。
運動症状
運動症状は、パーキンソン病の発症初期から発生する特徴的な症状です。
下記の運動症状のうち「安静時振戦」「筋固縮」「無動」はパーキンソン病の三大症状と呼ばれ、パーキンソン病の診断の大きな手がかりとなります。
安静時振戦(ふるえ) | ・じっとしているときでも手や足の震えが止まらなくなる |
筋固縮(こわばり) | ・手や足などの筋肉がこわばりスムーズに動かせなくなる ・筋肉に痛みやしびれを感じる ・顔の表情がなくなる |
無動 | ・動きが非常にゆっくりになる ・歩く際に足が出なくなる(すくみ足) ・書く文字が小さくなる |
姿勢反射障害 | ・バランスがとれず転びやすくなる ・歩いているときに止まれない、方向転換ができない |
非運動症状
運動症状以外のパーキンソン病の症状には以下が挙げられます。
非運動症状はすべての人に同じ症状があらわれるのではなく、人により出現する症状が変わります。
- 便秘
- 頻尿
- 嗅覚低下
- 発汗
- 冷え
- 不眠
- 立ちくらみ
- 体重減少
- 幻覚
- 妄想
- 意欲低下(アパシー)
- うつ
パーキンソン病の重症度分類
パーキンソン病は進行性の病気なので、徐々に病状が悪化します。
進行度を示す指標として、一般的には「ホール・ヤーンの重症度分類」が用いられています。重症度Iがもっとも低く、重症度Vがもっとも重症な状態です。
I | 軽い運動症状が身体の片側のみに発生する。日常生活への影響はほとんどない |
II | 軽い運動症状が身体の両側に発生し、非運動症状も見られる。日常生活に不便を感じることがある |
III | 明らかな歩行障害や姿勢反射障害が出現する。日常生活に支障をきたし始めるが、まだ介助を要する場面は少ない |
IV | 立ち歩きが難しくなる。生活する上で介助が必要な場面が多くなる |
V | 車椅子またはベッドに寝たきり生活となる。全面的な介助が必要 |
指定難病の医療費助成を受けられるのは重症度IIIからです。なおパーキンソン病の医療費助成認定の際にはホーン・ヤールの重症度分類とともに厚生労働省の生活機能障害度も参考になります。
参考 指定難病の要件について厚生労働省パーキンソン病の治療方法
パーキンソン病を根本から治す治療法はありませんが、症状を抑えて進行を遅らせる方法は存在します。
以下からはパーキンソン病の治療法を3つ紹介します。
薬物療法
パーキンソン病の基本的な治療方法は薬物療法です。
主にL-ドパやドパミンアゴニストといった薬を使い、脳内で不足しているドパミンを補充します。
その他、ドパミンを分解する酵素の働きを抑える薬や、ドパミンの分泌をうながす作用がある薬も治療に使われます。
薬物療法はほぼすべてのパーキンソン病患者に効果が期待できますが、長期間の服用により以下のような現象が発生する点がネックとなります。
ウェアリング・オフ | 薬が効いた状態と切れた状態と1日に何度も繰り返す現象 |
ジスキネジア | 自分の意志とは関係なく体の一部が不規則でおかしな動きをする現象 |
リハビリテーション
リハビリテーションはパーキンソン病の進行を遅らせる役にはたちませんが、残っている機能をきちんと維持して自力での日常生活をできるだけ長く続ける役にたちます。
またリハビリテーションの実施により薬物療法の効果も上がると言われています。薬物療法とリハビリをセットで行うことで、双方の効果が高まると期待されます。
リハビリテーションはデイケアなどで実施できます。デイケアについては以下の記事をご覧ください。
デイサービスとデイケアの違いを確認!相違点と共通点からおすすめ施設選び手術
脳内に電極(リード)を差し込み、電気刺激によって症状を緩和させる手術(脳深部刺激療法/DBS)が、薬物療法と併用して行われるケースがあります。
特にパーキンソン病を発症してからの期間が長く、薬が効かなくなってきたり、副作用がひどく薬物療法が難しくなってきた患者に有効です。
ただしDBSでは姿勢反射障害やパーキンソン病の非運動症状への効果は期待できないため、薬物療法とリハビリも引き続き併用する必要があります。
パーキンソン病の予防方法
パーキンソン病になる理由はまだ完全に解明されていないため、これをすればパーキンソン病にならないという予防方法は存在しません。
しかし、生活習慣に気をつけることである程度のリスクは下げられます。
以下からはパーキンソン病になりにくい身体になる予防方法を4つご紹介します。
有酸素運動をする
運動をするとドパミンの分泌が促されることがわかっています。そのため運動はパーキンソン病の予防にもっとも効果的です。
特におすすめの運動は有酸素運動です。有酸素運動はパーキンソン病の予防以外にもフレイルやロコモの予防、認知機能の向上などさまざまな良い効果が期待できるため、高齢者は有酸素運動の継続が推奨されます。
高齢者におすすめの有酸素運動は以下の記事でご紹介しています。
高齢者には有酸素運動がおすすめ|安全で楽しい有酸素運動6種類を紹介栄養バランスの良い食事をする
栄養バランスの良い食事もパーキンソン病の予防に役立ちます。
特に乳製品や大豆製品にはドパミンの原料となるチロシンという栄養素が含まれているため、摂取したい食品です。他にも必須アミノ酸やミネラル、ビタミンB群などドパミンを増やす効果が期待できる食べものはいろいろあります。
毎日の食事で、いろいろな栄養をバランス良く摂取しましょう。
コーヒーを飲む
コーヒーに含まれる成分にはドパミン神経細胞の障害を減らす作用があることが研究の結果わかっています。そのためコーヒーを飲むとパーキンソン病の予防に一定の効果が期待できます。
ただしカフェインの過剰摂取は不眠などの原因になるため、摂りすぎには注意です。
タバコを吸う
タバコを吸うと、タバコに含まれているニコチンの作用によりドパミンが分泌されます。喫煙者がタバコを吸って気分が落ち着くのは、ニコチンが脳内のドパミンを増やしているためです。
ドパミンの分泌が増えることにより、喫煙者は非喫煙者よりもパーキンソン病の発症率が少ないと言われています。
しかしタバコが身体に与える害は、パーキンソン病の予防効果よりもはるかに大きなものです。パーキンソン病を予防するために他の病気にかかってしまっては本末転倒です。
パーキンソン病の予防は、喫煙以外の手段でされることをおすすめします。
まとめ
今回はパーキンソン病について解説しました。
パーキンソン病は、かつては「かかったら10年後には寝たきり」と言われてきました。しかし近年では研究が進み、症状を抑える効果的な治療も確立しつつあります。
いたずらに不安になることなく、今できる予防や治療をしっかりしていきましょう。
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