- 介護ベッドは被介護者の動きを支援する福祉用具
- 介護ベッドを導入すると介護者と被介護者にそれぞれメリットが生まれる
- 介護ベッドの機能は背上げ機能・高さ調節機能・足上げ機能
- 介護ベッドのレンタルは介護保険が適用できる(購入は適用できない)
高齢の家族を自宅で在宅介護するときに、是非とも導入しておきたい介護用品のひとつが介護ベッドです。
しかし介護ベッドとは、そもそも何でしょうか。普通のベッドや電動式リクライニングベッドとは何が違うのでしょうか。
また在宅介護が決まり介護ベッドを選ぶときには、どのようにして適切な介護ベッドを選べば良いのでしょうか。
今回は介護ベッドについて解説します。
目次
介護ベッドとは
介護ベッドとは、要介護状態の方がベッドから起き上がったり、立ち上がったりする際の動作を補助してくれる福祉用具です。特殊寝台とも呼ばれています。
ほとんどの介護ベッドは電動式のリクライニングベッドです。病院や介護施設だけでなく、昨今は在宅介護をしている個人宅でも多く使われています。
介護ベッドと電動ベッドの違い
電動モーターで背もたれ等を動かせる電動式リクライニングベッド(電動ベッド)は、介護ベッドでなくても存在しています。
しかし介護ベッドと電動ベッドでは、以下の点が異なります。介護のためのリクライニングベッドを検討するときには、用途に合わせた製品の選択が必要です。
違い | 介護ベッド | 電動ベッド |
目的 | 介護者と被介護者の負担軽減が目的 | 就寝者の快適・リラックスが目的 |
サイズ | 83~100センチ | サイズ展開は自由 |
モーター数 | 1モーター・2モーターが主流 | 3モーターが主流 |
デザイン | 利便性を重視したデザイン | 好みのデザインを選べる |
介護ベッドに搭載されている機能
一般的な介護ベッドに搭載されている機能は以下の3つです。
- 背上げ機能
- 高さ調節機能
- 足上げ機能
以下からはそれぞれの機能について説明します。
なお、以下の機能はすべての介護ベッドに搭載されているとは限りませんので、実際に介護ベッドをレンタルまたは購入する際には必ず搭載機能を確認してください。
背上げ機能
背上げ機能とは、利用者がベッド上で体を起こすときにベッドの背もたれを好きな角度まで持ち上げる機能です。
自分で起き上がれなかったり、起こしても座る姿勢が維持できない方でも、上半身を起こした姿勢で食事などができます。
高さ調節機能
高さ調節機能とはベッドの床高を上下できる機能です。
高齢者が介護ベッドから降りる際には、ベッドに腰かけた状態でもかかとがしっかりと床につける低い床高(おおむね35センチ程度)の方が安全です。
逆に介護者が身体介助をするときには、あまり腰をかがめなくてもすむように高い床高(おおむね60センチ程度)が望ましいとされています。
高さ調節機能により、被介護者と介護者のそれぞれの目的にあわせた床の高さに調節できます。
足上げ機能
足上げ機能とはベッドの膝あたりのマットレスを持ち上げる機能です。別名「ひざ上げ機能」とも呼ばれています。
背上げ機能を使って上半身を起こしても、そのままの状態では被介護者が身体をキープできずに足側にズリ落ちてきてしまいます。
足上げ機能を併用すれば、上半身を起こした状態の被介護者の身体を足元から支えられます。
またベッドに寝たきりだと血流が悪くなり、足がむくむ原因になります。足上げ機能で定期的に足を動かすことで、血流を促進しむくみが解消する効果が期待できます。
介護ベッドを利用したときのメリット
介護ベッドの導入により、介護する側(介護者)と介護される側(被介護者)には、それぞれ以下のようなメリットが期待できます。
介護する側のメリット
介護ベッドの角度や高さが自在に変えられることで、介護者は被介護者をベッドから起こしやすくなり、ベッドからの移動支援が楽に行えます。
また食事の介助、おむつ交換などの際にも介護者を楽に身体移動させることができ、腰などへの負担が大幅に軽減できます。
背上げ機能や高さ調節機能を使えば被介護者と同じ目線で会話することができるようになるため、身体的負担だけでなく精神的負担の軽減にも役立ちます。
介護される側のメリット
介護ベッドの機能を使って自分で身体を起こせるようになれば、自力でベッドから車椅子への移動がしやすくなります。
介護者が自ら行動するきっかけにもなり、介護者の自立につながります。
寝たきりでベッドから起き上がれない状態の方であっても、背上げ機能や足上げ機能を使って自分の姿勢を小まめに動かせば、血流が良くなり床ずれ防止も可能です。
また、介護者が辛い姿勢で苦しそうに介護をしている姿を見続けることは、被介護者にとっても辛いものです。介護ベッドの機能を使って介護者が楽に介護できるようになれば、被介護者の精神的な負担が軽減できます。
介護ベッドの選び方
以下からは、介護ベッドをどのように選ぶかについて、順を追ってご説明します。
1.レンタルか購入かのどちらかを選ぶ
介護ベッドはレンタルするか、それとも購入するかを選べます。
レンタルの場合には介護者や被介護者の状況にあわせていつでも交換や返品が可能ですが、新品の介護ベッドを選ぶことはほとんどできません。
一方、購入の場合には好きなタイプの新品のベッドが選べますが、新品の介護ベッドは2~30万円ほどするため、一時的な費用負担が大きくなります。
また介護ベッドを購入したときには介護保険の適用ができません。介護ベッドを導入する際の介護保険については後ほど詳しくご説明します。
2.機能とモーター数を選ぶ
上記で紹介した介護ベッドのどの機能を採用するかにより、介護ベッドに搭載されるモーター数が変わります。
一般的な介護ベッドでは、モーター数を変えると搭載される機能は以下のように変わります。
【モーター数による機能の違い】
・1モーター:背上げ機能のみ、または高さ調節機能のみ
・2モーター:背上げ機能+高さ調節機能
・3モーター:背上げ機能+高さ調節機能+足上げ機能
・1+1モーター:背上げ機能と足上げ機能が連動
被介護者の身体の状態により、必要な機能とモーター数を選択してください。
レンタルの場合には状況にあわせて介護ベッドの変更が可能ですが、購入の場合は買い直しする必要があるため、最初から3モーター以上の介護ベッドを選んでおいた方が良いでしょう。
3.サイズを選ぶ
被介護者の身体の大きさにあわせてサイズを選びます。
例えば幅83センチの介護ベッドは、介護者が被介護者の身体に近づきやすく身体介助がしやすいサイズですが、被介護者は大柄な体格だと窮屈になります。
幅100センチの介護ベッドであれば大柄な方でも余裕をもって寝返りできるだけのスペースが確保できますが、サイズが大きいだけに室内を圧迫してしまいます。
また被介護者の身長によりベッド長も検討する必要があります。
4.マットレスを選ぶ
介護ベッドに用いられるマットレスは、被介護者の状態にあわせて適切なマットレスが変わります。
比較的自分で身体を動かせる方には寝心地の良さを優先した低反発ウレタン製マットレス、やや自立困難になってきた方には高反発マットレス、寝たきりでまったく身体を動かせない方にはエアーマットレスが向いています。
被介護者の身体の状態にあわせて、マットレスの素材や硬さを選びましょう。
また食事や飲料をこぼしたり、おむつ交換の際に失敗する可能性なども考えると、できれば丸洗いできるマットレスを選ぶことをおすすめします。またその際には持ち運びができる軽さかどうかの確認も重要なポイントです。
5.付属品を選ぶ
被介護者の自立をうながし、快適な生活を支援するための付属品の導入もあわせて検討してください。
具体的には側面に取り付ける手すりやサイドテーブルなどです。また被介護者ベッドからの転落を防ぐためには、サイドレールの設置も必要です。
介護ベッドのレンタルで介護保険が適用できる
福祉用具の一種である介護ベッドは、要介護度2以上の被介護者がレンタルしたときには介護保険が適用できます。
一般的な介護ベッドのレンタル費用は月額7,000円~12,000円程度ですが、介護保険適用により自己負担額は原則としてレンタル費用の1割だけですみます。なお介護ベッドのレンタル費用には消費税がかかりません。
被保険者の収入等により介護保険の自己負担額は変わりますので注意が必要です。
介護保険について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
今さら聞けない介護保険の仕組みとは|加入者・保険料・介護サービスを解説購入は全額自己負担なので注意が必要
介護ベッドをレンタルした場合には介護保険が適用できますが、介護ベッドを購入した場合には介護保険が適用できないため全額自己負担になります。
購入したときに介護保険が適用できる福祉用具は、人の肌に直接触れる「特定福祉用具」に認定されているもののみです。
《特定福祉用具の例》
・ポータブルトイレ
・浴槽内椅子
・入浴用介助ベルト
・特殊尿器の交換可能部分
介護ベッドは特定福祉用具に含まれないため、介護ベッド導入に際して介護保険の適用を考えている方はご注意ください。
まとめ
今回は介護ベッドについて解説しました。
介護ベッドは、被介護者が日々の大部分を過ごすことになる生活の拠点です。適切な介護ベッドを導入し、被介護者も介護者も楽に在宅介護生活が送れるようにしましょう。
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