- 弔慰金は会社などから遺族への慰めの意味で支給されるお金
- 非課税枠が設定されているが、超えた分は死亡退職金として扱う
- 業務上の死亡か否かで非課税枠に大きく差が出る
会社員が亡くなった場合、所属していた会社や組織から「弔慰金」を受け取れる場合があります。
そもそも「弔慰金」とはどんな制度なのでしょうか?もし受け取った場合は、税金の計算には影響するのでしょうか?
今回は「弔慰金」に関する基礎知識と、税金への影響などを解説します。
目次
弔慰金とは
弔慰金は「ちょういきん」と読みます。
多くの企業で福利厚生の一環として設けられている「慶弔金(けいちょうきん)」制度のなかの1つです。
慶弔金は従業員本人や家族に祝い事・不幸があった場合にお金が支給されます。
そのなかでも弔慰金は、企業や組織で働いていた方が亡くなった場合にそれまでの功労を認めて支給するお金です。
「故人を弔う」「遺族を慰める」ことが目的とされています。
支給される金額や条件は所属する企業・組織によって異なります。
なお、従業員の家族が亡くなった場合でも家族弔慰金という名目で支給されることがあります。
弔慰とは何か|弔意との違いとそれぞれの使われ方・弔慰が付く用語の解説弔慰金の金額相場
公的な弔慰金の場合は支給額が決められていますが、民間企業の場合は明確な相場は存在しません。
定額支給のほか、在籍年数に応じて支払う金額が変わる等、企業によってさまざまです。
勤務中の死亡と勤務時間外の死亡でも、金額に大きく差が出ることは珍しくありません。
弔慰金の非課税の取り扱い
国税庁には、弔慰金の非課税の取り扱いが記載されています。
- (1) 被相続人の死亡が業務上の死亡であるとき
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額- (2) 被相続人の死亡が業務上の死亡でないとき
被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額
業務上の死亡では賞与を除いた給与の3年分、業務外では半年分の金額までは非課税です。
非課税枠に収まる金額であれば、受け取ったとしても税金を納める必要はありません。
死亡退職金との違い
弔慰金と死亡退職金は似て非なるものです。
どちらも勤め先や会社から支給されるものであることは共通しています。
ただし、相続税の対象になるかどうか、非課税限度額は異なります。
死亡退職金の非課税限度額は生命保険と同じ考え方で、具体的な計算式は以下のとおりです。
死亡退職金の非課税枠=500万円×法定相続人の数
法定相続人が妻・子ども2人の計3人であった場合は、合計で1,500万円までの死亡退職金が非課税になります。
ちなみに、3年を超えて贈られた死亡退職金は遺族の一時所得として扱われるため、相続税ではなく所得税の対象です。
香典との違い
弔慰金と香典はお金としての意味合いが異なります。
弔慰金は福利厚生の1つであり、遺族に対する慰めとして支給されます。葬儀などが一通り終わった後に申請して受け取る流れが一般的です。
一方、香典は個人の霊前に供えるお金です。現在では葬儀にかかる金銭的な負担を減らす意味合いがあり、葬儀の当日に受け取ります。
また香典の場合、受け取るのは喪主です。常識的な金額である限り、相続税や贈与税はかかりません。
弔慰金はお返しが不要
香典と弔慰金の明確な違いとして、「お返しの必要性」も挙げられます。
香典の場合は「香典返し」といって、香典で受け取った金額の3分の1から半額程度のお返しをするのが一般的です。
弔慰金の場合、福利厚生の一環であるため、お返しは不要です。そのため、もし葬儀の当日に手渡しされた場合はお返しが必要な香典とは別で管理する必要があります。
公的な弔慰金もある
弔慰金は民間企業に勤めている方が亡くなった場合に企業から支給される場合が一般的です。
一方で、公的な機関から支払われる弔慰金も存在します。
戦没者遺族への弔慰金 特別弔慰金
公的な弔慰金はいくつか種類があります。例えば「戦没者遺族への弔慰金 特別弔慰金」です。
昭和27年に戦没者遺族への支給について定め、昭和40年に受給資格を有する方に特別弔慰金が追加で支給されています。
現在でも支給が行われており、直近では「第十一回特別弔慰金」として、戦没者などの妻・父母がいない場合は順位の高い遺族1人に支給が行われます。
支給内容:額面25万円、5年償還の記名国債(無利子)
災害弔慰金
「災害弔慰金」が国から支給されるケースもあります。
一定基準を超す自然災害や死者、遺族に対して国が1/2、都道府県が1/4、市町村が1/4を負担して災害弔慰金を支給します。
金額は生計を維持している大黒柱の死亡の場合は500万円、その他のケースでは250万円です。
直近では、2011年に発生した東日本大震災で死亡した方の遺族に災害弔慰金が支払われています。
参考 東日本大震災関連情報厚生労働省弔慰金の受け取り方の流れ
弔慰金の申請
葬儀が終わったあと、落ち着いたタイミングで弔慰金を申請します。
会社に弔慰金の場合は、遺族の申請は不要で故人の元上司などが代行して申請する場合もあります。家族の不幸に関しては、従業員本人が申請することが原則です。
公的な弔慰金の場合は、原則として遺族からの申請が必要です。
たとえば第十一回「戦没者等の遺族に対する特別弔慰金」では市役所などでの申請の場合、市区町村の援護担当課窓口に以下の書類の作成と提出を行います。
- 戦没者等の遺族に対する特別弔慰金請求書
- 第十一回特別弔慰金国庫債券印鑑等届出書
- 戦没者等の遺族の現況等についての申立書
引用元:福岡県庁|戦没者等の遺族に対する特別弔慰金(第十一回特別弔慰金)について
そのほか、本人である証明として以下のような持ち物も必要です。
◆請求者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど公官署発行の顔写真付のもの。顔写真付のものがない場合は、健康保険証と年金証書など2点)
◆請求者の印鑑(記名国債の償還手続に使用するもの。スタンプ印は不可)
◆請求者の現在戸籍(令和2年4月1日以降の状況がわかるもの)
自治体によって内容が変わることがあるため、自治推進課や総務課などに問い合わせて詳細な情報を調べましょう。
給付方法を選択する
給付方法は企業によって異なりますが、基本的に振込みです。現金での手渡しを選べる場合もあります。
振込みを選んだ場合、故人が給与を受け取っていた口座に振り込まれます。
弔慰金の非課税枠
弔慰金の非課税枠は国税局によって明確に定められており、具体的には以下の2パターンに分かれます。
業務上の原因による死亡の場合
故人の死亡当時の給与×3年分
故人の1ヶ月の給与が40万円だった場合、1,440万円までは非課税です。
業務外の原因による死亡の場合
故人の死亡当時の給与×半年分
故人の1ヶ月の給与が40万円だった場合、非課税枠は240万円です。
業務上の原因による死亡と比較すると非課税枠に1,000万円以上の差があります。
弔慰金と死亡退職金は別々に計算する
弔慰金と死亡退職金の両方を受け取る場合は一緒には計算せず、別々に計算します。
モデルケースとして、賞与を除く1カ月の給与が40万円の方が業務外の原因によって死亡したケースで考えてみます。
被相続人(故人)と妻と子どもが2人いる4人家族です。
弔慰金として300万円、死亡退職金1,800万円が支給されたとします。
最初に弔慰金の課税対象額を計算し、超過した金額を死亡退職金の金額に算入します。
業務外の死亡のため弔慰金の非課税枠は半年分の240万円です。60万円が残るため、後ほど死亡退職金の計算に含みます。
続いて死亡退職金の計算に入ります。残った家族は3人ですから、非課税枠は500万円×3=1,500万円です。
弔慰金の超過分と死亡退職金を足して非課税枠を引くと、今回のケースでは360万円が相続税の課税対象額になります。
最初から弔慰金と死亡退職金を合算すると計算が狂うことがあるため、順序を守って計算します。
弔慰金に関する税制
弔慰金を複数から受け取る場合は計算が複雑
弔慰金は原則として非課税です。
しかし、何円でも無制限に非課税というわけではありません。限度範囲を超えると相続税が発生します。
特に2ヶ所以上から受け取る場合、計算が複雑になるので注意が必要です。
すでにA社を退職してB社へ転職後に死亡した場合、両方から弔慰金が出る場合もあります。
そのケースではA社からの弔慰金は退職手当金には該当せず、B社の弔慰金の金額が非課税の範囲内であれば相続税が非課税になります。
そもそも弔慰金は金額も大きくなりやすく、死亡退職金扱いになると一定以上の金額は課税の対象です。
計算を間違えると正しい納税ができないリスクがあるため、判断が難しいと思う場合は相続に関する専門家(税理士)に相談しましょう。
会社以外からの弔慰金は相続税がかからないことがある
一般的に弔慰金は故人が所属していた企業から支払われますが、国や自治体が支給するものもあります。
公的な弔慰金に関しては、条件を満たすと非課税になります。
まとめ
今回は「弔慰金」に関する基礎知識と、税金への影響などを解説しました。
香典と違って、あくまで弔慰金は遺族への慰めの気持ちを表す福利厚生の制度です。業務内・業務外の違いはありますが、一定額までは非課税で受け取れます。
ただし「弔慰金と死亡退職金を一緒に受け取る」「2社以上から弔意金を受け取る」といった場合は計算が複雑になるため、税理士など相続の専門家に相談することも検討しましょう。
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