- 老老介護とは介護者と要介護者の双方が60歳以上の状態のこと
- 認認介護とは介護者と要介護者の双方が認知症を発症している状態のこと
- 老老介護は夫婦間だけでなく兄弟・親子などさまざまなパターンがある
- 老老介護による痛ましい事件・事故が増えている
- 周囲のサポートや介護者のケアなどで老老介護の共倒れは防げる
高齢者の介護は、若く健康な方でも一手に担うのは大変です。
ましてや介護する側も同じ高齢者だとしたら、十分な介護は可能なのでしょうか。
近年では老老介護問題が社会で取りざたされていますが、老老介護とはいったい何でしょうか。老老介護にはどのような不安や心配があるのでしょうか。
今回は老老介護をめぐる日本の現状を調査し、起こり得る問題点とその回避策について解説します。
目次
老老介護とは
まず基本的なことがらとして、老老介護(ろうろうかいご)とは何かを確認しましょう。
老老介護とは介護する側(介護者)と介護される側(要介護者)が双方とも60歳以上の高齢者である状態を指します。
介護者と要介護者がいずれも75歳以上の後期高齢者である場合には、超老老介護と呼ばれることもあります。
認認介護とは
老老介護とよく似た言葉に認認介護(にんにんかいご)という言葉があります。
認認介護とは老老介護の中でも、介護者と要介護者が両方とも認知症を発症している状態のことです。
東京都福祉保健局の推計によると、2016年現在で東京都内に在住する65歳以上の高齢者のうち認知症の発症者は13.8%で、今後ますます割合の増加が見込まれています。
画像引用:東京都福祉保健局|東京都における認知症高齢者の状況(データ)
老老介護が増えている現状
老老介護が近年問題視されている背景には、以前に比べて介護者と要介護者の組み合わせが高年齢化している現状があります。
厚生労働省の2019年国民生活基礎調査によれば、要介護者等と同居の介護者がともに60歳以上の組み合わせは2001年に比べて20%以上も増加しています。
また後期高齢者の75歳以上の組み合わせも2001年時点の18.7%から2019年では33.1%と、10%以上増加しています。
老老介護の割合
前項の2019年国民生活基礎調査からさらに老老介護の構成を詳しく見てみると、介護を担っている方の割合が一番多いのは同居の配偶者23.8%です。
男女比では男性の介護者35%に対して女性の介護者が65%と、老老介護では同居の妻が介護する側に立っている割合が多いことが伺えます。
なお、認知症の方は自分自身で「認知症の症状がある」と自覚がしづらいため、認認介護の割合はほぼ把握されていないのが実情です。
さまざまな老老介護のパターン
老老介護の介護者の割合は同居の配偶者がもっとも多いものの、介護を担う側が必ずしも配偶者になるとは限りません。
互いの関係性が夫婦でなく兄弟、また親子のパターンも多く存在します。
例えば親が25歳のときに生まれた子供は親が65歳になった時点ではまだ40歳ですが、その後介護の必要性が生じ、親が85歳になったときには子供の年齢も60歳になるのです。
現在の超高齢化社会において親子間での老老介護は決して人ごとではなく、誰にでもあり得る身近な問題だと言えます。
老老介護が増えた理由
昔は想像もできなかった老老介護がこんなにも身近な問題となってしまった理由は2つあります。
1つ目は日本人の平均寿命と健康寿命(自立した生活が送れる期間)に大幅なズレが生じていることです。
医学の発達により日本人の平均寿命自体は伸びましたが、反面、老化による身体的な衰えや脳機能の衰えは防ぎきれていません。そのため高齢者の生活が要介護状態となる期間も長くなります。
さらに2つ目の理由が核家族化です。
2世代・3世代同居が当たり前だった昔に比べて現代では夫婦だけの世帯や高齢者のみの単独世帯が増加し、介護の担い手が高齢者のみとなるケースが増えています。
日本の超高齢化と核家族化の2つが相まって、老老介護を選択せざるを得ない世帯が昔よりも増え、そしてこれからも増大していくことが予想されています。
老老介護の問題点
若い方が介護することに比べて、老老介護では具体的に何が問題になるのでしょうか。
介護者と要介護者が両方とも高齢者である老老介護では、以下のような危険が生じる可能性があります。
《老老介護による危険の具体例》
・介護者の身体的負担(腰痛・骨折など)
・身体介助で要介護者を支えきれず事故につながる
・介護者の精神的ストレスによる要介護者への虐待行為
・介護を苦にした殺人・嘱託殺人
特に最後の殺人および嘱託殺人に関しては、非常に大きな社会問題となっています。
老老介護が原因となった事件
最近では新聞やテレビで、老老介護を苦にした事件のニュースが多く報じられています。
介護に疲れ切った介護者が要介護者に手をかけた事件や、要介護者側が家族に迷惑をかけたくないと嘱託殺人を依頼するケースなどです。
このような事件では裁判で温情のある判決が出ることが多いものの、介護者・要介護者ともに不幸な事件であることは間違いありません。
参考 下級裁裁判例(平成28(わ)220 平成29年11月20日 佐賀地方裁判所)裁判所認認介護の問題点
老老介護が認認介護の状態になると、さらに問題点や介護の危険性は増します。
《認認介護による危険の具体例》
・食事や排せつなどの世話をしたかどうかわからなくなる
・服薬を忘れて持病が悪化する
・金銭管理ができなくなる(オレオレ詐欺などの被害)
・火の不始末による火災
・徘徊の見守りが行えなくなる
介護がスタートしたばかりの頃は介護者・要介護者ともに認知症でなくても、介護生活が認知症のリスクを高める可能性があります。
要介護者の認知症リスク | 社会との関わりの低下 |
介護者の認知症リスク | 精神的なストレス |
老老介護状態がそのまま認認介護状態に移行する可能性は、決して低くはありません。
老老介護で共倒れにならないためには
冒頭でも申し上げたように、高齢者の介護は若く健康な方であっても大変な仕事です。介護者側も高齢者である老老介護だと、そのままでは共倒れにもなりかねません。
老老介護で共倒れにならないためにはどうしたら良いのでしょうか。
ここからは老老介護の共倒れ回避策を3つご紹介します。
介護サービス等の積極的な利用
肉体的にも精神的にもダメージが大きい老老介護の負担を減らすには、国や自治体の介護サービスを積極的に活用することがおすすめです。
介護保険制度を利用して在宅介護の支援サービスを受けましょう。
画像引用:社会保険研究所|介護保険と市町村の役割
参考 介護保険制度について(40歳になられた方へ)厚生労働省介護保険を利用するためにはあらかじめ地域包括支援センターへの申し込みが必要です。
地域包括支援センターでは地域の高齢者を支えるために、老老介護に陥る前からさまざまな相談にのってくれます。
不安に感じたら「まず包括(ほうかつ)」と覚えておくと良いでしょう。
地域包括センターの概要や詳しい利用方法は以下の記事も参考にしてください。
また介護保険の利用とは別に、自治体独自の老老介護支援を行っている地域もあります。
参考 老老介護生活支援サービスについて【高齢者福祉課】出雲市介護保険や地域包括センター、それ以外の地域支援など手段はいろいろありますが、いずれも自分だけで解決しようとせず、周囲に助けを求めることが肝心です。
介護者自身の心身ケア
老老介護が不幸な事態にならないためには、要介護者だけでなく介護者に対しても十分なケアが必要です。
自分で全てのことをやろうと思わず、デイケアやショートステイなども積極的に利用して、介護者が休息できる時間を設けましょう。
ショートステイの利用方法などについては以下の記事を参考にしてください。
ショートステイとは?具体的な利用方法やメリットデメリットを徹底解説また老老介護ではかかりつけ医院へのこまめな通院・往診も重要なポイントです。
かかりつけ医は要介護者の診察を行いながら、介護者の容体も同時にチェックしていることがあります。介護者が健康を害したり、万が一認知症の疑いが見られたときにも適切な対応が期待できます。
健康寿命を伸ばす
老老介護の回避にもっとも有効な手段は「介護状態にならない」ことです。
加齢により身体機能が低下するのは避けられませんが、それでも生活習慣の改善で健康寿命を大幅に伸ばすことが可能です。
健康な状態から要介護となる途中の状態をフレイルと呼びます。自宅に引きこもりがちになることでフレイルは進行するため、老後になっても積極的に外に出て、社会と関わりを持つ機会を増やすのをおすすめします。
画像引用:国立長寿医療研究センター|在宅活動ガイド2020「一般高齢者向け基本運動・活動編」
もしフレイルから要介護になった方でも、適切なケアとリハビリを行えばある程度の機能改善が見込まれます。
要介護度を低くする努力をして、介護者の負担を少しでも減らせるような努力をしていきましょう。
まとめ
今回は、現在大きな社会問題になっている老老介護について解説しました。
老老介護はもはや今の日本では「どこかにある問題」ではなく「誰にでもあり得る問題」になっています。
いつか自分の身に起こるかもしれない老老介護をあらかじめ知り、老老介護が不幸な事態に陥らないための対策を講じておきましょう。
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